働くための能力は、Bio-Psycho-Social-Vocational の4つの要素で構成されていると考えることができます。この働くためのBio-Psycho-Social-Vocational のどこに、どのような課題があるのかを理解し、それぞれを改善・回復させて、再び働けるようにしていくことが、本当の復職準備なのです。
1. Bio(セルフマネジメント機能):体調・疾病管理、ストレス対処
Bioは、健康管理や生活リズムの維持、働き続けるためのストレス対処などの、セルフマネジメント能力です。
具体的には、睡眠や食事、服薬、家事などの生活リズムを整えること、疲れを感じたら休憩をとること、家事や読書、パソコン作業などを日課として継続することや、集中力や持続力を向上させることもセルフマネジメントに含まれます。
セルフマネジメントが出来ないと、体調の変化に気づかないまま無理をしたり、症状が悪化したりして、日常生活が上手く回らなくなるという悪循環が発生してしまいます。Bioは、「社会人なら出来て当たり前」と考えられがちですが、実は安定的に働くことを考える基礎として非常に重要になってくるのです。
2.Psycho(心理的機能):認知行動パターン、心理的課題
Psychoは、ものの考え方や感じ方、行動として表れる“その人らしさ”です。どんな時に(=出来事)・どんな考え方や感情を持ち(=認知)・どう対処するか(=行動)は、その人の認知行動パターンとして習慣化していきます。
例えば、新しい業務を担当することになった場合、不安を感じてしまい業務に対して消極的になってしまう人もいれば、新しい業務に挑戦することでやる気が湧く人もいます。また、自分と他者を比べて落ち込んだり、自分を犠牲にしても相手のために尽くそうとする人もいるでしょう。これは対人関係における認知パターンです。
また、「子どもの頃から得意なことと不得意なことの差が大きかった」、「空気が読めなくて友達の輪に入れなかった」…等々の特徴は、もしかすると自閉スペクトラム傾向の影響かもしれません。いずれにしても、ご自身の特徴や特性を踏まえた業務や働き方の工夫をされていかれることが肝要なのです。
3.Social(社会的機能):対人関係、コミュニケーション
Socialは、目的に応じたコミュニケーションを行うための能力です。仕事では、役割や立場、利害の異なる相手ともコミュニケーションを取りながら、問題を解決していかねばなりません。
相手の感情にばかり気を取られてしまうと、仕事上必要な情報を聞き逃してしまう可能性があります。さらに、話を聞き逃したことを言い出せずに、相手の顔色をうかがって、焦りや不安の感情が多くなり、ますます仕事が出来なくなる…という悪循環が起こり得ます。このように、意欲はあるのにストレスをためて、休職に至る人も多いのです。
職場の本来の目的は、業務を遂行することです。目的に応じたコミュニケーションを取りながら、仕事においては合理的・理性的に問題を解決していくことが大切になってきます。
4.Vocational(職業的機能):業務遂行スキル、問題解決思考
Vocationalは、組織の中で主体的に業務遂行するための能力です。業務の目的やスケジュールを共有したり、報告・連絡・相談をしながら、効率的に、時にはいくつもの業務を平行して、チームワークよく業務を進める必要があります。
この業務遂行スキルがないと、人間関係がこじれ、自分も周りもストレスがたまります。しかし、これも「社会人なら出来て当たり前」とされてしまっているため、そもそもそのスキルが身についていないことが不調の原因だとは気づきにくく、また、気づいても、具体的に何をどう学習したら良いのかが分からず、休職を繰り返す人も少なくはないのです。
当院では、リワーク(復職支援)プログラム等を通して、患者様の上記のようなお悩みにお応えできるよう試みております。カウンセリングも行っておりますので、どうぞ気軽にお尋ねください。
Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)
監修 佐々木裕人(精神保健指定医・精神科専門医・内科医)