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【医師監修】統合失調症とは?陰性・陽性症状や2つの治療方法について詳しく解説!

「家族の様子がおかしい。これって統合失調症?」「統合失調症がどのような病気なのか分からない。」

 

このような悩みを抱えている方はいませんか。家族の様子がおかしいことに気づいても、統合失調症なのか分からない場合もあるでしょう。

 

というのも、統合失調症は一般の人でも見られる症状と似ており、判断が難しい病気であるためです。

 

この記事では、統合失調症の症状や治療法、他のこころの病気との違いについて紹介します。家族に統合失調症の疑いがあり悩んでいる方は、記事の内容を参考にしてみてください。

統合失調症とは?|脳の神経伝達物質の異常で発症する病気

 

 合失調症とは、脳の神経伝達物質の異常によって気持ちや考えにまとまりがつかなくなる病気です。人口の約1%が発症し、思春期から青年期に多くみられます。

 

ここでは、統合失調症の原因について解説します。

統合失調症の原因はわかっていない

統合失調症の原因は明らかになっていませんが、遺伝要因に環境要因が加わることによって発症するという考えが有力と言われています。

 

環境要因には、以下のものが考えられています。

 

  • 就職や進学などの環境の変化
  • 結婚
  • ネグレクト
  • 人間関係のストレス
  • 出生前の感染症

 

ただし、今回挙げた要因はほんの一例にすぎません。挙げた要因とは関係なく発症する場合もあることを理解しておきましょう。

 

統合失調症の診断

統合失調症は、アメリカ精神医学会が作成したDSM-IVの診断基準を用いて診断されます。

DSM-IVの診断基準は以下のとおりです。

 

  1. 以下のうち2つ以上の症状がそれぞれ1か月の期間でほぼ続いている(治療が成功した場合はより短い)

 

    1. 妄想
    2. 幻覚
    3. まとまりのない会話
    4. ひどくまとまりがない、または緊張病性の行動
    5. 陰性症状

 

  1. 社会的または職業的機能の低下がみられる
  2. 症状が6か月以上持続している
  3. 精神病を発症していない
  4. 薬物や身体疾患によるものではない
  5. 自閉症や発達障害の既往歴がある場合は症状が1か月以上続いている

 

ただし、上記の基準を元にした自己診断は控えましょう。症状が気になる方は、精神科や心療内科で早めに相談することをおすすめします。

統合失調症の特徴的な症状

 

統 合失調症には、以下の3つの特徴的な症状があります。

 

  • 陽性症状
  • 陰性症状
  • 認知機能の障害

 

症状の具体的な内容については後ほど説明しますが、以下の4つの時期によって現れる症状は異なります。

 

  1. 前駆(前兆)期
  2. 急性期
  3. 慢性期
  4. 回復期

 

それぞれの時期の症状についてまとめると、以下のとおりです。

 

時期 特徴
前駆(前兆)期 ・「気分が冴えない」「イライラして集中できない」

・「感情表現が乏しくなる」など人によって症状が異なる

・明らかな症状がないため、病気であることに気づきにくい

急性期 陽性症状が目立つようになり、幻覚・妄想が顕著にみられる。
慢性期 ・陰性症状がみられるようになる

・無気力な状態が続くが、陽性症状に逆戻りする可能性あり

回復期 ・症状が落ち着き、社会復帰に取り組む

・陰性症状や認知機能の低下が続く場合もある。

参照元:1 .統合失調症の診断と病態

 

症状についてもう少しくわしく見ていきましょう。

前駆(前兆)期

前駆(前兆)期は、明らかな症状が出現しにくい時期です。

 

不眠や焦りなど、誰もが日常でよくみられる症状がほとんどであるため、医師でも統合失調症なのか診断がつかない場合もあります。

 

患者さまにとっては「なんとなくうまくいかない」という状況が増えてきます。うまくいかない原因が病気にあると気づかず、ストレスを感じて抑うつ状態になってしまうこともあるため注意が必要です。

急性期

急性期は陽性症状が著しく現れる時期です。

 

1か月〜数か月程度続くとされており、幻覚や妄想に襲われて頭が混乱しさまざまな異常行動をとるようになります。

 

周りとのコミュニケーションもとれなくなり、仕事や日常生活に支障をきたし始めるのも急性期です。

慢性期

回復期は陽性症状が落ち着き、陰性症状が主に見られる時期です。

 

感情の変化が起こりにくくなり、無気力な状態の時間が多くなります。回復期の症状の期間は約3か月〜6か月が一般的ですが、人によっては数年かかる場合もあります。

 

回復期は何かしらの刺激が誘因となり、急性期の症状に逆戻りする可能性もあるため注意しましょう。

回復期

慢性期は症状が落ち着き、治療を続けながら少しずつ安定した生活が送れるようになる時期です。

 

社会復帰に少しずつ戻っていく時期でもありますが、行動するエネルギーが必要になるため、心理的不安が大きくなります。患者さまによっては陰性症状が続いたり認知機能が下がったりする場合もあります。

 

患者さまの半数は改善しますが、5〜10%は十分な治療効果が得られず、自殺行為を行う可能性があるとも考えられています。

 

症状の悪化を防ぐためにも、周りの方のサポートが重要です。

統合失調症の陽性症状|幻覚と妄想

陽 性症状とは、本来ないはずのものがあるように感じる症状です。

 

主な症状は幻覚や妄想です。脳の神経伝達物質であるドパミンの分泌の伝達が過剰になり、神経の働きも過敏になることによって症状が起こります。

 

幻覚には以下のような種類があり、特徴がそれぞれ異なります。

 

種類 特徴
幻視 他の人に見えていないものが見える
幻聴 存在しない音が聴こえる
幻味 口のなかに何も入っていないのにさまざまな味を感じる
幻触 触れていないのに触れられていると感じる
幻嗅 存在しない悪臭を感じる

 

統合失調症では幻聴が見られることが多く、「自分の悪口が聞こえてくる」「命令する声が聞こえる」などの被害的な内容の訴えが特徴的です。周りの方にとっては、本人の訴えが現実かどうかの区別がつきにくく、病気であるかの判断が難しい場合もあります。

 

妄想は現実にはありえないことを事実と思い込む症状です。幻聴と同じように「誰かに監視されている」「いつもつけられている」といった被害的な内容の訴えが多くみられます。

 

客観的な考え方を持てなくなり、他人の訂正を聞き入れることが困難になるため注意しましょう。

 

幻聴や妄想は、本人にとってすべて現実です。ですが、周りから理解されない場合も多いため、悩みを1人で抱えている方が多くみられます。

統合失調症の陰性症状|意欲の低下と感情表現の少なさ

陰 性症状は「本来あるはずのものがないように感じる」症状です。

 

具体的な症状には、意欲の低下と感情表現の少なさがあります。

 

陰性症状は、何もできなくなるということはありません。テレビを見たり、本を読んだりする方もいるでしょう。

 

そのため、周りからは「やる気がない」「だらけている」といった誤解される場面が多くみられます。周りの方は、本人の気力を失った状態も症状の1つであるという認識を持つようにしましょう。

認知機能の障害|理解力や記憶力の低下

認知機能の障害とは、理解力や記憶力といった知的能力に障害がおこる状態です。

 

認知機能は他にも情報処理能力や集中力、計画能力などさまざまな機能があります。

 

これらの機能が低下することで「新しいことが覚えられない」「物事を判断することができない」といった場面がみられるようになり、家事や仕事など日常生活が困難になる場合もあります。

統合失調症とほかのこころの病気との違い

 

統合失調症のほかにもこころの病気は複数あり、どのような違いがあるのか分からない方もいるでしょう。ここでは、うつ病や産後うつ病と統合失調症の違いについて説明します。

統合失調症とうつ病との違い

統合失調症とうつ病では、以下の点で違いがみられます。

 

  • 原因となる物質
  • 症状
  • 治療法

 

統合失調症の原因となる物質はドパミンであるのに対し、うつ病の原因はセロトニンと呼ばれる物質です。症状にも違いがあり、統合失調症は幻聴や妄想、うつ病は落ち込みが多くみられます。治療では同じ薬物療法を用いますが、統合失調症は抗精神薬、うつ病では抗うつ薬をおもに使用します。

 

上記内容を表にまとめたので、参考にしてみてください。

 

  主な原因物質 主にみられる症状 治療薬
統合失調症 ドパミン 幻聴・妄想 抗精神薬
うつ病 セロトニン 落ち込み 抗うつ病薬

統合失調症と産後うつ病との違い

産後うつ病とは、産後に気分が沈んだり物事を楽しいと思えなくなったりする症状をいいます。産後1週〜2週で発症することが多く、周産期女性の10〜30%にみられます。

 

統合失調症と産後うつ病にも、以下の点で違いがみられます。

 

  • 原因となる物質
  • 症状
  • 治療薬

 

統合失調症の主な原因はドパミンと呼ばれる神経伝達物質であるのに対し、産後うつはエストロゲンとよばれる女性ホルモンが主な原因です。

 

産後うつは母親としての立場から自分をネガティブに捉えることが多く、不眠や抑うつ、不安、自己否定感などの症状が起こりやすくなります。産後うつの治療薬はうつ病と同様、抗うつ薬を使用します。

 

統合失調症と産後うつの違いをまとめた表は以下のとおりです。

 

  主な原因物質 主にみられる症状 治療薬
統合失調症 神経伝達物質(ドパミン) 幻聴・妄想 抗精神薬
産後うつ病 女性ホルモン(エストロゲン) 抑うつ・自己否定感 抗うつ薬

統合失調症の治療

統合失調症の治療には、薬物療法と精神療法の2種類があります。

 

統合失調症の治療の目的は、患者さまの症状を抑えて社会復帰できるようにすることです。それぞれの治療法をくわしくみていきましょう。

薬物療法

統合失調症の薬物療法には、主に抗精神病薬を使用します。抗精神病薬には「定型抗精神病薬」と「非定型精神病薬」の2種類があります。ドパミンやセロトニンなどの神経伝達系の機能の調整によって症状の改善が可能です。

 

薬剤 特徴
定型抗精神病薬 ・従来からあるタイプの薬

・陽性症状への効果が期待できる

非定型精神病薬 ・新しいタイプの薬

・陰性症状や認知機能障害への効果も期待できる

・現在の治療で主に使用

 

抗精神病薬には、錐体外路症状や便秘などの副作用がみられます。錐体外路症状の具体的な症状は以下のとおりです。

 

  • 手足が震える
  • 筋肉が硬直する
  • 無表情な顔つきになる

 

錐体外路は反射やバランスなどの不随意運動が関わっており、障害によってスムーズな運動が困難になります。錐体外路症状は定型精神病薬で出現する可能性が高くなります。

 

ですが、非定型精神病薬にも心臓や脳の病気が起こる可能性があることを理解しておきましょう。

 

また、抗精神病薬は副交感神経のはたらきを阻害する作用もあるため、便秘を起こしやすくなります。

 

薬を自己判断でやめたり減らしたりすると、症状が再発や悪化のおそれがあります。薬をやめたいときには必ず医師に相談しましょう。

精神療法

精神療法とは、患者さまが社会に適応していくための改善策を一緒に見出す治療法であり、主に以下の3種類が用いられています。

 

  1. 支持的精神療法
  2. 認知行動療法
  3. 集団精神療法

 

支持的精神療法は、医師が患者さまの悩みや不安を傾聴し、不安解消や精神安定を図ります。患者さまと医師のコミュニケーションが重要になるため相性も必要です。

 

自分に合う医師を見つけ、継続的な治療を受けましょう。

 

認知行動療法は、患者さまなりの病気の理解が持てるように援助する方法です。アメリカの研究でも不眠症や不安障害、うつ病などへの効果が明らかにされています。病期によって治療の目的は以下のように異なります。

 

時期 治療の目的
前駆期 早期介入
急性期 早期回復
部分的寛解期 症状の軽減
寛解期 再発予防

 

集団精神療法は複数の患者さまで問題について話し合い、解決策を見出すことを目的とした方法です。悩みを抱えるもの同士で話し合うため孤独感の緩和も可能です。

 

新しい解決策を見出す場合もあり、治療に前向きになることもあります。

 

いずれの治療も症状に悩む患者さまと一緒に解決策を見出すことが、症状を緩和するための重要なポイントです。

統合失調症に関するQ&A

 

ここまで紹介してきた内容のほかにも、統合失調症について気になることはたくさんあるでしょう。よくみられる以下の3つの質問について回答します。

 

  • 統合失調症の話し方の特徴は?
  • 統合失調症の方が苦手なことは?
  • 統合失調症の前触れはある?

 

気になる方は参考にしてみてください。

統合失調症の話し方の特徴は?

考えにまとまりがつかなくなることから、話し方に以下のような特徴がみられます。

 

  • 話の内容に一貫性がない
  • 早口になり、会話のテンポが悪い

 

伝えたいことが相手に伝わらずストレスが溜まると、妄想がさらに増大するおそれがあります。家族が話をするときは内容を否定するのではなく、寄り添いながら傾聴する姿勢を見せることが重要です。

統合失調症の方が苦手なことは?

統合失調症の方は対人関係が苦手です。陽性症状にある幻覚や妄想、認知機能障害による集中力の低下などが原因です。

 

幻覚や妄想によって「誰かから悪口を言われている」といった感情を抱きながら人を疑うよう可能性があります。認知機能障害により、人の話に集中できず、内容ができなくなることもあるでしょう。

 

こういった症状から、人との関わりを苦手に感じてしまう方が多くみられます。

統合失調症の前触れはある?

統合失調症の前触れは、「前兆期」の症状が当てはまります。前兆期の症状は以下のとおりです。

 

  • 不眠
  • 神経過敏
  • 不安

 

具体的には、「イライラして仕事や勉強に集中できない」「気分が落ち込んでやる気が起きない」などの様子がみられます。

 

前触れの段階では、病気に本人が気づくことは難しいです。家族が見ても気づきにくい場合もあります。医療受診を検討する目安は、日常生活のなかでいつもと違う様子がみられたときです。

 

変化に気づいた際にはしばらく様子を見るのではなく、まずは精神科や心療内科への相談を検討しましょう。

 

統合失調症の方が活用できる制度や福祉サービスってありますか?

統合失調症の方を支える制度や福祉サービスには、次のようなものがあります。

 

制度 特徴
自立支援医療(精神通院)制度 ・精神科や心療内科に通う医療費の自己負担を、原則として1割にできる制度

・世帯の所得や扶養などの状況により異なる

精神障害者保健福祉手帳 ・精神障害をもつ方が自立したり社会に参加できたりすることを促す制度

・公共料金の割引や税金の控除が受けられる

生活保護 ・病気やケガなどにより生活ができなくなった方を対象とした制度

・障害の等級(1級、または2級)により支給額が異なる

 

ほかにも、ハローワークや地域障害者職業センターをはじめ障害者就業・生活支援センター、就労移行支援事業所などの施設では統合失調症の方の就労をサポートしています。

 

あなたに合った制度やサポートを活用しましょう。

まとめ

患者さまの様子のみで、すぐに統合失調症と判断することは困難です。

 

ですが、治療を始める時期が早いほど、症状が早く回復する可能性が高いです。

 

患者さまは自分が病気であることになかなか気づけません。家族や周りの方が気にかけ、患者さまの様子がおかしいと思ったら早い段階で医師の受診を検討しましょう。

 

周りの方による早期発見が、患者さまの早期治療につながります。

 

 

 

https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/know/know_03.html

こころもメンテしよう|厚生労働省

 

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsbpjjpp/28/1/28_4/_pdf/-char/ja

1 .統合失調症の診断と病態|

日本生物学的精神医学会誌 28 巻 1 号

 

統合失調症

統合失調症|厚生労働省

 

 

https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/47/9/47_KJ00009649415/_pdf/-char/ja

統合失調症治療の 最前線

 

https://www.ncnp.go.jp/mental-health/docs/nimh55_79-88.pdf

統合失調症の認知行動療法:エビデンス、認知モデル、実践|

精神保健研究