【心療内科 Q/A】「夏バテに効く漢方を教えてください。」
A.
医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)です。
数回に渡りお伝えしております、「『夏バテに効く漢方薬』を教えて下さい」
今年は趣向を変え、貴方にあった夏バテ対策の漢方をご紹介させていただこうと思います。
まずは、『夏』バテ代表『清暑益気湯(せいしょえっきとう)』
夏バテ(=注夏病)による夏痩せ、食欲不振、下痢、全身倦怠感、口渇、多汗…等といった症状が出ている時に用いられます。
日射病や熱中症でも同様です。体内に溜まった暑さを冷まし、元気を増すことを前提に考えられた処方です。
夏の暑さによって元気が失われ、脱水傾向、微熱傾向を帯びたタイプの方に向いています(=「気虚+津虚タイプ」)。
汗と一緒に体力・気力が奪われていってしまう…そんな状態の方に適した漢方です。
人参(にんじん)、蒼朮(そうじゅつ)、麦門冬(ばくもんどう)陳皮(ちんぴ)、黄耆(おうぎ)、黄柏(おうばく)、当帰(とうき)、五味子(ごみし)、甘草(かんぞう)の生薬が使用されており。
黄柏(おうばく)の清熱作用で身体を冷まし、麦門冬(ばくもんどう)・五味子(ごみし)・人参・甘草(かんぞう)の持つ生津(せいしん)作用により、潤いを保ちます。五味子には補気作用もあり、過剰な汗を抑えてくれます。
そして、そんな清暑益気湯(せいしょえっきとう)の関連方剤が十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)と人参養栄湯(にんじんようえいとう)
十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)は、全身が弱って、漢方でいう「気」も「血(けつ)」も著しく不足している人に向く漢方薬です。
疲労倦怠感、貧血、皮膚の乾燥、食欲不振、寝汗、手足の冷えなどの不調があるときに処方されます。
また、病後・手術後の体力低下をはじめ、産後の衰弱、貧血、冷え症の改善など、さまざまな目的で使われています。
黄耆(おうぎ)、桂皮(けいひ)、 地黄(じおう)、 芍薬(しゃくやく)、蒼朮(そうじゅつ)川芎(せんきゅう)、当帰(とうき)、人参(にんじん)、茯苓(ぶくりょう)、 甘草(かんぞう)の生薬が使用されており。
先ほども登場した人参(にんじん)は強壮剤、桂皮(けいひ)は胃腸を改善する効果があります。
すぐに疲れてしまって横になると寝てしまう…そんな状態の方に適した漢方です。
もう一つが「人参養栄湯(にんじんようえいとう)」
「気」も血液や血液の働きを示す「血(けつ)」も両方が不足している「気血両虚」の人に使う薬で、滋養強壮作用や血行をよくする生薬が配合されています。
食欲不振、倦怠感、体力の低下、不眠、物忘れ、鉄欠乏、貧血傾向、胃腸虚弱な方に向けて用いられます。
人参(にんじん)、黄耆(おうぎ)、当帰(とうき)、地黄(じおう)、白朮(びゃくじゅつ)、茯苓(ぶくりょう)、芍薬(しゃくやく)、桂皮(けいひ)、陳皮(ちんぴ)、遠志(おんじ)、五味子(ごみし)、甘草(かんぞう)の生薬が使用されており。
これまでも大活躍の人参(にんじん)を主薬として作られています。
食欲が無くて怠くやる気が出ない…そんな状態の方に適した漢方です。
更に細かくみてみると、それぞれ似ているようで異なっているのが分かります。
清暑益気湯にのみ
麦門湯…煩わしい熱感を治し、咳嗽を止め、熱性、乾性の症候を改善する。
黄柏…胃腸の炎症性病変、熱感を伴う下痢、有熱性の疾患による目の熱感、充血を伴う痛みを治す。
人参養栄湯にのみ
遠志…物忘れ・肉体疲労・貧血・不眠・去痰
十全大補湯にのみ
川芎…各種の皮膚疾患、化膿性のできもの、疥癬、癰疔などを治す
殆ど同じ生薬をしようしていてもそのバランス、配合、それぞれにしかない強みが現れているのが分かりますね。
心療内科、精神科において、漢方薬による治療をご希望の患者様。
このコラムを読まれまして、ご自分の現在のご状況として、気になる点がありました方や、興味・関心を抱かれた方は、ご受診をお待ちしております。
出典:「NHKきょうの健康 漢方薬事典 改訂版」 (主婦と生活社)
「ツムラ 公式サイト」https://www.tsumura.co.jp/index.html
「Kampo View」https://www.kampo-view.com/