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【医師監修】醜形恐怖症ってなんですか??

醜形恐怖症(身体醜形障害)は、「醜形恐怖」と呼ばれることもあります。実際には、問題にならない程度の外見の問題にとらわれて、または全く問題など存在しないにも関わらず「自分は醜いのではないか」という強迫観念にとらわれるものです。その多くは強迫スペクトラム障害に含まれるものと考えられ、強迫症に準じた治療が試みられることもあります。

 

 

ただし、強迫症とは違い、「自分がおかしなことを考えている」という自覚がない人が殆どです。よって、美容外科を受診され、精神科や心療内科の受診を勧められ、心の病気だと分かるケースがよくあります。

醜形恐怖症って?

自分の顔や身体などの外見が醜いと思い込み、もし実際に小さな身体的欠陥がある場合には、それに対する心配が著しく過剰になる心の病です。そのため、現代では「身体醜形障害」とも呼ばれています。日本では1980年代から増え始め、最近では小学校低学年での罹患者も珍しくありません。

 

 

例えば、本人は「あごがとがりすぎていて自分は醜い。恥ずかしくて大学に行けない」と主張するものの、実際にはごく普通の丸いあごであったりします。しかし、他者がどんなに説得しても信じず、自分が醜いとか汚いという思いが変えられません。その意味では、これも一種の強迫観念だと言えます。

 

 

醜形恐怖症が増えている背景には、日本が豊かになり、衣食が足りて、自分の顔や身体を美しくすることを重視するようになったことがあります。

 

 

また、実は本人の対人関係能力に問題があって人と上手くいかないのですが、それを「自分の性格や人との付き合い方に原因がある」とは考えず、「顔が醜いからだ」というように、問題をすり替えてしまうケースも多く見られます。醜形恐怖症の人は、人に自分の悩みを訴えず、ひそかに外に出なくなることも多く、「引きこもり」になりやすいと言えます。

 

 

しかし、実際のところ、患者様の多くはかなり綺麗で美人で、体型も整っています。彼らはまったく主観的なイメージの世界で、自分の醜さを呪っているのです。

醜形恐怖症の症状

自分の顔や身体が醜いと思い込み、周囲の人が何度否定しても、考えを改めることができません。その意味では、一種の「強迫観念」とも言えます。「自分は醜い」という考えが頭に浮かぶのを自分の意志ではどうしても止められず、本人は苦しみます。中には、妄想的な段階に至っている人もいます。

 

 

また、頻繁に鏡で自分の顔や身体を見ないと気が済まないケースが多く、これは「強迫行動」だと言えます。逆に、自分の顔や身体を見ることを極端に恐れ、全く鏡を見ようとしない人もいますが、これも強迫行動と同じことです。

 

 

主にこだわるのは、顔の美醜です。例えば、眉毛が濃すぎる、唇が厚い、目が鋭い、鼻が曲がっている、顔全体が醜い…等々、こだわりは様々です。最近では、顔だけでなく、身体全体の美醜、例えば、太り過ぎているから、胸が平らだから、脚が太いから恥ずかしい、外に出られない…等々の例も見られます。

 

 

人は誰しも多かれ少なかれ、自分の姿形にコンプレックスを感じているものだと思いますが、それが“病的”かどうかは、客観的に見て納得できるかどうかが一つの分かれ目になります。また、この病気の人は、美容外科手術を受けて一旦満足したとしても、不安が再燃しやすいと言われています。身近な人が過剰に外見を気にして美容外科に行きたがっている場合でも、安易に認めるのは勧められません。

醜形恐怖症の経過

醜形恐怖症は、ある日突然発症するというよりも、異性を意識する思春期になって次第に気にし始めるように思われます。強迫症と同じように治りにくく、慢性的な経過をたどることが多いものです。また、人に自分の悩みを訴えず、ひそかに外出しなくなることが多いのですが、これもまた治療を一層困難なものにしています。引きこもりになってしまう人も少なくありません。そのため、先に母親が相談に訪れるケースも少なくありません。

 

 

専門医にかかるのが早ければ早いほど治療率は高く、1年、半年、3ヵ月で治ることもあります。しかし放置すれば何年も続いてしまい、酷い場合には10年以上続くケースもあります。発症年齢は10代の思春期が多く、これまではやや女性に多かったのですが、最近では男性も顕著に増えてきています。日本の調査ではありませんが、欧米での有病率は、約2%という調査結果もあり、その調査では男女比はほぼ同じであったそうです。

 

 

醜形恐怖症の診断基準(DSM)は、以下のようになっています。

 

★次の項目が当てはまる場合には、醜形恐怖症が疑われます。

 

□① 外見について「自分は醜い」と思い込む。 小さい身体的異常がある場合には、過剰に心配する。

 

□② その思い込みのために、実際に強い苦痛を感じていたり、社会的な面や仕事の面などで、支障がある。

 

□③ そう思い込むのは、何か他に精神障害をわずらっているからではない。

醜形恐怖症に隠されたもの

醜形恐怖症になる原因としては、人にちょっとしたことを言われたのがきっかけで、「自分の顔(身体)は醜い」という強迫観念をもつようになる場合が多いのですが、往々にして裏には対人関係能力の問題が潜んでいます

 

 

対人関係の能力が低いために、人と上手くいかず、その時に「自分の性格や人との付き合い方に原因がある」とは考えず、「自分の顔(身体)が醜いから」というように問題を“すり替えて”しまうのです。また、対人関係能力に限らず、何かしらのある特定の劣等感が醜形恐怖症にすり替わっていることもあります。

このコラムを読まれまして。
気になる点がありました方や、興味・関心を抱かれた方は、
どうぞ当院まで、お気軽にお問い合わせください。

 

 

当院では、強迫症をはじめ、
大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症)、
うつ病、躁うつ病(双極性障害)、不安症、
適応障害、ストレス関連疾病、睡眠障害(不眠症)、
パニック症、自律神経失調症、冷え症、摂食障害、
月経前症候群、過敏性腸症候群、心身症など、
皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、
心身両面からの治療とサポートを行っております。

 

 

また当院では、診察と一緒に、専門の心理士(臨床心理士・公認心理師)資格を持ったカウンセラーによるカウンセリング(心理療法)も行っております。カウンセリングをご希望される患者様は、診察時に医師にご相談下さい。

 

 

Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)

監修 佐々木裕人(精神保健指定医・精神科専門医・内科医)

参考引用文献:町沢静夫著『図解 大切な人の心を守るためのこころの健康事典』・上島国利監修本人も家族もラクになる 強迫症がわかる本