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【医師監修】自己診断は禁物!怖い二次障害!【ADHD】

近年、何かと取り上げられることの多くなったADHD(注意欠如・多動症)ですが、ただ本で読んだり、メディアで見聞きしたりされた話を基に、自己判断をするのは危険です。

 

 

「もしかして自分は発達障害なのでは?」と思われたなら、必ず医師の診断を仰いで下さい。基本的には精神科医、子どもであればまず小児科医に相談するといいでしょう。いきなり病院に行くのはハードルが高いと感じるのなら、まずは地域の発達障害者支援センター等に足を運ぶのが良いと思います。

 

 

今はネットに、発達障害のセルフチェックが出来るものも多数存在します。幾つかの質問に答えていくとADHDやASDである可能性がどの程度あるかという簡易なチェックテストが受けられるものです。さらに精神科医が参照する診断基準『DSM-5』も調べることが可能です。そのためか医師の診断を受けることなく「自分はADHDだ」と自己診断をされてしまわれる方も少なくありません。ただ、この結果を妄信することだけは避けて下さい

 

 

何故ならば、よくよく考えてみると、こういったチェックリストを使われるのは、ご自分が発達障害ではないか、ADHDではないかと疑っている時です。ですから、どうしても「ADHDなのだろう」という前提やバイアスが掛かった状態でチェックしてしまいがちです。

 

 

例えば、「長時間座っていなければならないときに、手足をそわそわと動かしたり、もぞもぞしたりすることが、どのくらいの頻度でありますか?」というチェック項目があったとします。それに対して、「よくある」なのか「ときどきある」なのかで迷った時、いかにもADHDらしい「よくある」にチェックを入れてしいまいます。これでは、ADHDではない人を、ADHDだと決めつけることになりかねません。

 

 

実際に診断を下すためには、問診は勿論のこと、知能検査や心理検査、幼少時の行動記録等、様々な要素を踏まえて、慎重に判断します。

 

 

また、発達障害であるかどうかの判断においては日常生活でも困り事があるか」が、重視されます。例え、ネットにあるチェックリストが全てADHDを示す形で埋まったとしても、本人が生活に困難を感じていなければ、発達障害ではないのです。

 

「うつ病+発達障害」の人は多い

 

発達障害の診断には、誤診が多いという話を聴くことがあります。それには幾つかの理由がありそうです。

 

 

ひとつは、発達障害が、精神科医にとっても比較的新しい分野であるということです。そのため、どこの病院の精神科でも必ずしも発達障害の診断が出来る訳ではありません。受診の際に、発達障害の診断ができる病院かどうかを、予め確認しておきましょう。

 

 

また、二次障害を発症されている場合も、診断が難しくなります。二次障害というのは、元の障害から派生して、別の障害が生じることです。日本で初めてADHD専門外来を立ち上げた岩波明医師によると、ADHDの人の2~3割は、一時的にせよ二次障害を生じることがあると指摘されています。海外では、4割以上というデータもあるそうです。二次障害としては、うつ病が極めて多く、不安症も目出ちます。

 

例えば、ADHDから派生してうつ病を発症している時に、ADHDを見逃し、うつ病だけが診断されてしまうと、本質的な解決に至らないことが起こり得ます。岩波明医師は、次のように指摘しています。

 

 

『「生まれつきの脳機能の偏り」を持つ状態である発達障害がベースにあると知って治療をしなければ、うつ病や不安症を繰り返すことにもなりかねません。二次障害だけを治療するのでは中々改善しないことも珍しくはありません。』

 

 

 

二次障害を防ぐためにも、正しい診断が大事です。また、二次障害が生じている場合、二次障害の治療が優先されることがあります。例えば、うつ病が思い場合は、まずうつ病を治療し、うつ病が改善してから、ADHDの治療をするかどうかを再検討すると、岩波明医師は言っています。その分、致し方ない事ではありますが、ADHDの治療に至るまで時間が掛かってしまうことになるわけです。

 

 

安易な自己診断も危険ですが、発達障害に気づくチャンスを見逃してしまうのも避けたいところです。よって、不安に思った時には、ネットで「診断する」のではなく、ネット以外の方法も駆使して診断できる病院を探す」が正解でしょう。

 

「ADHDの薬」には劇的な作用がある

 

ADHDの人にとって、病院での診断が有効なのは、「治療」が可能だからです。「えっ?発達障害は治らないのではなかったっけ?」…そのような声が聞こえてきそうです。治らない」というのは、確かにその通りなのですが、発達障害から生じる「困った症状」を「抑える」ことはできます。そして、ADHDにはそのための薬があります

 

 

ADHDの人の脳の中で何が起こっているかは、正確には分かっていません。ただ、特定の神経伝達物質(ドーパミンやノルアドレナリン)が脳内で不足したり、調整が上手くいかなかったりしているのではないかと考えられています。そこで、神経伝達物質の量や働きを調節する薬を使います。「中枢神経刺激薬」はそのひとつです。

 

 

これらの薬が、ADHDの人には効くので、集中力も高まる訳ですが、同じ薬を症状のない人が飲むと、寝食も忘れるほどの「超集中状態」になりかねず、とても危険です。

 

 

ADHDと診断されて、薬を服用するかしないかは、人それぞれです飲んだものの、全く薬が合わなかった人、薬の種類によっては効果のあった人、効果が限定的で満足出来なかった人、飲むことを結局やめた人、症状が酷い時だけ飲むことにした人など、人によって本当に様々なケースがあります。そして勿論、薬が合う人もいます。

 

ADHDのお薬の服用は医師としっかり相談し、用量や種類、飲み方を慎重に判断していく必要があるのです

 

 

当院(新宿ペリカンこころクリニック)では、ご希望の患者様に、ウェクスラー成人知能検査(WAIS)を施行することが可能な医療機関となっております。

 

ご自身の能力の凸凹の可能性が気になられる患者様、とりわけ発達障害(ADHDやASDの可能性を危惧されている患者様は、御診察の際に、その旨を当院医師にお申し出頂けましたら幸いです。

 

 

Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)

監修 佐々木裕人(精神保健指定医・精神科専門医・内科医)

 

参考引用文献:黒坂真由子著発達障害大全・岩波明著発達障害・岩波明著医者も親も気づかない女子の発達障害