腸内環境をコントロールしているのは「自律神経」です。自律神経は、心臓や肺、胃腸、肝臓などの臓器を動かしたり、血管の収縮を管理するなど、自分の意識で動かすことのできない、いわゆる「無意識」の生命活動を支配しています。ですから、自律神経が乱れると、便秘や下痢、食欲不振、肌荒れ、冷え性、風邪、さらには血圧や心拍数の上昇など、様々な不調が出てくる場合があります。
しかも、体調が崩れるというだけでなく、気持ちが沈む、やる気が起きない等の心=メンタルにおける不調も、実は「腸内環境」=「自律神経」と深い関わりがあります。場合によっては、便秘や下痢が改善し、腸内環境が良くなると、うつの症状まで改善するというケースもあるのです。
逆に言えば、便秘の人=腸内環境の乱れた人には、うつ病をはじめとしたメンタルに不調を抱えている人が極めて多いのです。しかし、それは何故なのでしょうか? なぜ、便秘等で腸内環境が乱れると、うつ症状など、メンタルの不調まで招いてしまうのでしょうか。
その原因の一つは、やはり腸内環境の悪化による血流の乱れだと言えます。私たち人間は、食事から栄養分を吸収し、その栄養を含んだ血液を全身に行き渡らせることで、肉体を構成している薬37兆個の細胞を生かしています。
その栄養豊かな血液を作っているのが「腸管」です。腸の結果から吸収された栄養分が肝臓に行き、肝臓から心臓へ、さらには血管を経て、全身の細胞へと送られていきます。そして、メカニズムの大本、大切な腸の血管の良し悪しを決めるのが、腸の「ぜんどう運動」です。
何故なら、腸の動き=善導運動が悪くなると、腸の中で「うっ滞(鬱滞)」が生じてしまうからです。うっ滞とはいうのは、簡単に言えば、超の中の流れが悪くなり、滞ってしまった状態です。エコノミークラス症候群などもそうですが、身体を適度に動かさなけば、全身の血流の流れが滞り、悪くなります。それと同じで、腸のぜんどう運動の動きが鈍ると、腸管を流れる血液も悪くなっていってしまうのです。
腸の“鬱滞”が原因で起きること
便秘などで、腸のぜんどう運動がしっかり働かない“うっ滞”の状態になると、腸の中では「悪玉菌」が増加します。腸の悪玉菌(大腸菌、ウェルシュ菌など)が優勢になるだけで、実に様々な症状が起こります。メンタル不調はいうまでもありませんが、他にも、生理痛、肌荒れ、便秘、アレルギーなどもより起こりうやすくなります。
そのような悪玉菌だらけの腸内で作り出される血液は、腐敗物質や毒素を多く含みます。すると、全身の細胞は栄養不足で、かつ毒素だらけの状態になってしまうのです。しかも、この時、血液中の赤血球も変形してしまうので、酸素の運搬が上手く出来ず、全身の細胞は酸素不足の状態にも陥ります。
そうなると、細胞の生命力が失われて、心身共に活力が低下するのは当然ですが、脳も酸素不足になって、マイナス思考になってしまうことがあるのです。これが、便秘や下痢などで腸内細菌が悪化した人に、メンタル不調が起こりやすい一つの原因だと言われています。
メンタル不調を避けるためにも、腸にうっ滞が起こらないようにすることが望ましいでしょう。自律神経のバランスを整え、腸内環境を良好にすることを日頃から意識しましょう。具体的には発酵食品や食物繊維を食事に取り入れ腸内環境を完全することが、ストレス解消の近道にもなるのです。
腸内環境を整えると…?!
繰り返しになりますが、身体の中に取り入れた栄養素を吸収し、毒素を排出してくれる働きを持つ腸は、いまや「第二の脳」とも呼ばれるほど大事ば器官なのです。しかも、「腸」は、自律神経のバランスを整えるためにも、極めて重要な役割を果たしています。
何故なら、腸内環境を改善して、腸がしっかりと動くようになれば、副交感神経の働きが格段に高まるからです。それが、年を重ねても衰えない「底力」をもたらしてくれるのです。
副交感神経の働きは、男性で30歳、女性では40歳をめどにガクンと低下します。しかも現代は、「交感神経優位」のストレス社会です。ただでさえ、加齢によって下がった副交感神経の働きが、ストレスによってさらに低下してしまうのです。
そうなると、心身共に「底力」が失われていってしまいます。血液の流れ(血流)が悪くなり、心身は緊張し、免疫力や体力も低下して、不眠や肩こりなど不具合が出て来ます。血流が悪くなり、血液がドロドロになると、臓器の働きが悪化し、代謝は落ちて太りやすくなり、生活習慣病にもなりやすくなります。
しかし、腸内環境を改善すると、人生は劇的に変わります。副交感神経の働きが高まると、自律神経のバランスが整い、心身共に「底力」がついてくるのです。
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Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)
監修 佐々木裕人(精神保健指定医・精神科専門医・内科医)
参考引用文献:小林弘幸著『自律神経にいいこと超大全』