自閉スペクトラム症(以下:ASD)の特徴の一つに、対人関係が上手く出来ないことが挙げられます。自分の考えていること、感じて相手に伝えることが苦手です。併せて、相手の考えていることを適切に理解できないところもあります。このため相互に意思疎通がはかれないわけです。そのために、日常生活に様々な問題が起こりますし、ストレスが溜まることにもなります。
コミュニケーションの障害のほかに、色々な事に固執したり、ある事柄が頭から離れずに困るようなこともしばしばみられます。こうした行動における特徴は幼少時から見られますが、養育環境によっては、見逃されていることも少なくありません。
また、知能の発達の程度によっては、コミュニケーションの障害、強迫的行動、常同的な行動がある程度かくされてしまうので、子どもの頃は目立たないこともあります。知能が高い場合には、対人関係や環境にも上手に適応していけるので、大人になるまで障害が分からないことも多いです。特にIQが100を超えるような知能であれば、学生生活までは、障害が目立つことはありません。
ところが社会人になると、学生時代と大きく違う点が出てきます。学生生活では決められたことを守り、それを覚えて再現することができれば優秀な学生であり、高い評価を受けます。社会人になると、与えられる課題や宿題はありません。自ら問題点や課題を見つけて、年齢や生活背景の異なる他人と協力しながら、解決していくことが日々求められていくのです。
社会生活をしていくためには、相手とのコミュニケーションが最も重要な成功の鍵になっていくため、社会人になってから障害の問題にぶつかるケースが起きてくるのです。
幼少時からみられるASDの特徴としては、視線を合わせることができない、身振り、顔の表情、身体の向き、会話の抑揚の有無などの異常がある、といったことが挙げられます。このために、一人遊びが多かったり、他の子どもたちとまじわれないこともしばしばです。こうした行動は、思春期から青年期まで持ち越していきます。
また、電車などの乗り物に関心を寄せて、駅名を覚えたり、車両名の詳細まで記憶していたりします。バスや乗用車などの乗り物のほか、相撲の力士名であったり、植物、動物の名前やその生態を記憶しています。
そして、ASDの人々は、自分だけの世界にいるために、所謂「ごっこ遊び」が苦手です。ごっこ遊びには想像力が必要です。そこにないテーブルや椅子があり、その上にお皿が乗っている、砂や小石を食べ物に見立てる、それを食べておいしいと口に出すというのが「ままごと」遊びですが、それが出来ないのです。実際に見えている石ころがジャガイモであると想像することができないのです。このような特徴が子ども時代に見られます。
日常的な行動の特徴としては、常同的な行動があります。これは、単純な動作を繰り返す、手をたたく、指をはじくといったものです。また、コインをまわす、鉛筆をまわすといった反復的な行動も見られます。一つの言葉を場面に関係なく、繰り返すこともあります。そして、同一であることや、数館に対して強く個室する傾向があります。小さな変化に対する“不機嫌さ”が見られるのです。
また、一つの行動を儀式化しており、手順が常に決まっています。それが妨害されたり、中断されたりすると、最初から儀式的行動をはじめるのです。他にも、感覚刺激の感じ方や興味の示し方にも特徴があります。ASDの人は、特定の音や匂いに敏感であったり、食感にこだわるといった側面があります。食べ物の好き嫌いが激しく、好きな食べ物であれば何か月でも同じものを食べる一方で、他の食物や料理には関心が向かいない等といったことが見られます。
アメリカその他の諸国からの報告によると、ASDは人口の約1%に見られるようです、障害の症状は生後2年目くらいに気づかれます。発達が遅れている重症例では12ヵ月より早く気付かれます。この障害の双生児一致度は37~90%であることから、遺伝的要素以外の社会的・文化的な要因も影響していると考えられています。
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Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)
参考引用文献:Newton別冊『精神科医が教える心の病の説明書』