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【医師監修】発達障害の人に見られる感情表出を解説します!

喜怒哀楽が分かりにくいタイプ【ASD】

 

発達障害の特性を持っている人によく見られる傾向のひとつに、喜怒哀楽などの感情の起伏が表情に表れにくいことが挙げられます。その理由は様々な説がありますが、脳の神経細胞のひとつである「ミラーニューロン」の働きが弱いという説が有力なようです。

 

 

この「ミラーニューロン」は別名“モノマネ細胞”とも呼ばれていて、主に他者の行動を観察し、それを自身も追体験しているような反応、共感をする役割を担っています。そのため「ミラーニューロン」の発達が十分でないと、相手の感情を読み取ることができず、自身の感情を表すことも上手く出来ないのです。

 

 

こうした傾向は発達障害の中でも自閉スペクトラム(ASD)の人に多く見られ、他者とのコミュニケーションに苦手意識を持っている人も少なくないそうです。

 

 

こうした傾向のある人と接する際に注意したいのが、感情が態度や表情に出にくいだけで、決して無感情ではないということです。一見、表情の変化は乏しくとも、心の中は定型発達の人と同様に様々なことを感じているので、それを汲みとり、共感を示すことが大切です。相手の感情を読むのが苦手な人でも、ちょっとおおげさに身振り手振りを加えて分かりやすく示せば、気持ちはきちんと伝わります。職場などで周囲の目が気になる時にはメールなどを活用してみましょう。顔の表情だけがコミュニケーションの手段ではないのです。

 

感情の起伏が激しいタイプ【ADHD】

 

上記では、発達障害の特性により喜怒哀楽の感情が表情に表れにくいケースを紹介しましたが、それとは正反対に感情の変化が激しく、衝動的に表情や態度に出てしまうタイプの人もいます。これは、注意欠如・多動症(ADHD)の特性を持つ人に多く見られるケースです。ADHDの特性である衝動性が感情や行動に直結して現れてしまうことも少なくありません。

 

 

ADHDの人が時折見せる衝動的な感情の発露は、脳の中でも感情や理性を司る大脳皮質の働きが弱いことが原因のひとつとされています。そのため、不意に湧き起った感情を現在の状況に合わせて適切に制御することができず、ほんの些細なことでも烈火のごとく怒り出したり、場の空気を読まずに大声で笑い出したりしてしまうことあるのです。こうした衝動的な感情の発露は成長し、様々な経験を重ねる中で、次第に影を潜めることが殆どですが、まれに大人になってもそうした傾向がおさまらない人もいるようです。

 

 

感情の起伏が激しく、それが表情や態度に出てしまっている時は、一度冷静になって自分を見つめ直すクールダウンの時間を設けてあげるとよいでしょう落ち着ける場所に連れて行って気持ちが鎮まるのを待つ、お茶を淹れて一休みするなど、気分を変えて原因を尋ねてみることです。

 

 

とっさの感情を抑えるのは誰でも簡単にできることではありません。それが強い感情であればなおのことです。周囲に迷惑を掛けない程度であれば、多少大目に見てあげることも大切です。

 

せっかちでイライラしやすいタイプ【ADHD】

 

いつも何かに急ぎ立てられているように気ぜわしく、ちょっとしたことでカッとなったり、イライラしてしまったり…。このような怒りっぽい人はいらっしゃいませんか? それはもしかすると、注意欠如・多動症(ADHD)の多動性や衝動性に起因する「せっかちさ」がそうさせているのかもしれません(勿論、必ずしもそればかりが原因だとは限りません。他の要因によっても引き起こされ得ます)。

 

 

せっかちな人が些細なことでイラっとしてしまうのは、「周囲の人と時間の感じ方が違う」からだと考えられています。自分は普通で、周りの人たちがノロノロしていると感じているため、そのせいで自分のペースが乱されることにイライラしてしまうのです。特に仕事が立て込んで忙しい時などは、相手が電話に出るのが遅い、メールの返信がなかなか来ないといった、ほんの些細なことでも腹を立ててしまうことも少なくありません。

 

 

このようなせっかちな人と上手く付き合っていくには、相手のペースを理解し、それに合わせることが一番です例えば、以下のような事柄が挙げられます(「せっかちな人と上手く付き合うコツ」)

 

 

★「早めの行動を心掛ける:約束や待ち合わせは少し早めに到着。急なトラブルなどを想定して「10分前行動」を心がけます。

 

★「結論から話して無駄を省く:長々とした説明を嫌う人も少なくありません。最初に結論を話し、相手に求められたら詳細や経緯を説明しましょう。

 

★「行動を予測して先回り:万が一の場合に備え、仕事の提案や回答は一案だけでなく複数案を用意しておくとよいでしょう。

 

……こういった具合に、いずれもちょっとしたことですが、工夫ひとつで相手を苛立たせることなく、互いに良好な関係性を保つことができるのです。

 

 

また、せっかちな人のペースに自身をフィットさせていくことで、無駄を省いた思考や行動、フットワークの軽さといった良い一面が自然と身につくというメリットもあります。

 

 

当院(新宿ペリカンこころクリニック)では、ご希望の患者様に、ウェクスラー成人知能検査(WAIS)を施行することが可能な医療機関となっております。

 

ご自身の能力の凸凹の可能性が気になられる患者様、とりわけ発達障害(ASDやADHDの可能性を危惧されている患者様は、御診察の際に、その旨を当院医師にお申し出頂けましたら幸いです。

 

 

 

 

Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)

監修 佐々木裕人(精神保健指定医・精神科専門医・内科医)

参考引用文献:湯汲英史監修心と行動がよくわかる 図解 発達障害の話(日本文芸社)