自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)といった発達障害に伴うためこみ行動がみられた時、それぞれどのように行動を改善すればいいのか、また周囲の人はどのように対応すればいいのか、そのヒントを以下にまとめておきます。なお、主に注意欠如・多動症(ADHD)の人向けのヒントになりますが、これらの方法は自閉スペクトラム症の方にも活用できます。
① 取り組むことを小さく設定する
「全てきれいにしないといけない」とか「ためこまないようにしないといけない」など、余りにも多くのことをやろうとすると、脳は取り組むことすら回避しようとしてしまいます。そのため、課題を小さくして取り組みやすく、かつ達成しやすいようにされるといいでしょう。
② 「課題」と「プロジェクト」の違いを理解する
1つの棚や引き出し、居間の右手前のコーナーというように、場所を決めて取り組んでいきます。この時、行うことを小さなステップに分けることが「課題」で、決めた場所ごとに整理していくことが「プロジェクト」です。
③ モノを手放す決断を促す
棚か引き出しの1つ、あるいは部屋のスペースの一部を選びます。選んだ場所にあるモノを1つひとつよく見て「これは私にとって本当に必要なモノ?」と問い掛け、残すモノ、手放すモノを見極めていきましょう。そのモノと別れがたいなら、捨てる前にモノの写真を撮っておくののも1つの方法です。また、モノを他の人が使える可能性があれば、それをもらって喜んでくれる家族や友人に譲ることを考えます。寄付やリサイクルに回すのもいいでしょう。
④ 新しい対応の仕方を工夫する
モノの「行先」を決めるときや実際に片づけていくとき、特定の手順を踏まないと出来なかったり、決断しにくい場合は少なくはありません。そんな時は、タイマーを使って時間を制限したり、習慣化されているやり方に陥らない対応も必要です。
⑤ ポジティブな結果をイメージする
きれいに片づいた部屋に足を踏み入れた瞬間をイメージしてみましょう。そんな部屋に人を招いたら、どんなに楽しいでしょうか。また、家族はどんなに喜ぶでしょうか。それを成し遂げるための手間や苦労に意識を向けるのではなく、快適な生活が送れることに意識を向けましょう。その過程では完璧を目指さず、一歩一歩進んでいくことを大切にします。過度に緊張しているようであれば、力を少し抜いてからスタートしましょう。
⑥ 具体的な片づけ計画を立てる
どの部屋から片づけるかを決めて、具体的な課題をリストにします(整理する棚やモノなど)。優先順位をつけることが難しい場合は、片づくと最も快適になる場所、あるいは現状最も使い勝手がよくない場所を選びましょう。
⑦ 整理整頓をルーティン化する
日々の生活では、やりたいことや、すぐにやらなければならないことが起こるものです。そこで、片づけを行う時間や曜日などをあらかじめスケジュールに組み込んでおきましょう。そして、どこを片付けるかをできるだけ具体的に計画しておきます。
⑧ 片づけたくなる雰囲気を作る
「○○すべき」と考えると途端に気が重く感じられるかもしれません。楽しみながらできる雰囲気を作ることが大切です。照明を明るくし、根を詰めずに、取り組む時間を決めて、それを行ったら必ず休憩を入れるようにしましょう。
⑨ モノの目的にあった居場所を決める
モノのそれぞれの置き場所を決めましょう。寝具類であれば、寝室のタンスやクローゼットにしまうなど、使い勝手がいいように使う場所の近くに置くといいでしょう。使う頻度の低いモノは、物置など離れた場所で保管します。
⑩ 新しいモノを手に入れる前に考える習慣をつける
例えば新しいセーターが欲しいと思ったら、どうして欲しいのか考えてみて下さい。既に持っているセーターでは不十分かを考えて、衝動買いを避けましょう。もう1つ考えることに、収納スペースがあります。既にいっぱいであれば、購入は止めましょう。
⑪ 1人で買い物に行かない
家族や友人がいれば、1つのことにこだわってしまったり、客観的に見られなかったりする時に、助けてもらえます。買い物に行く時は同行してもらい、不要な買い物をしないように助けてもらって下さい。また、片づける時も心強い助っ人になってきれます。ただし、「モノは全部捨てればいい」と考えている人と一緒に片づけるのは避けましょう。
当院(新宿ペリカンこころクリニック)では、ご希望の患者様に、ウェクスラー成人知能検査(WAIS)を施行することが可能な医療機関となっております。
ご自身の能力の凸凹の可能性が気になられる患者様、とりわけ発達障害(ADHDやASD)の可能性を危惧されている患者様は、御診察の際に、その旨を当院医師にお申し出頂けましたら幸いです。
Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)
監修 佐々木裕人(精神保健指定医・精神科専門医・内科医)
引用参考文献:五十嵐透子著『片付けられないのは「ためこみ症」のせいだった!?』