発達障害が広く認知されるようになった背景には、発達障害と診断される人が増えてきたという事実もあります。厚生労働省が平成28年に行った「平成28年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者実態調査)」では、発達障害と診断された人は推計で48万1千人にのぼり、約250人にひとりの割合となっています。
平成23年の同調査では、発達障害と診断された人は推計で31万8千人であったため、5年間で16万3千人も増えました。医学的には、発達障害になる人が急激に増加する要因が見当たらないため、発達障害というものが世間に広く知られてきたことで、「もしかして…?」と受診する人が増えた結果、診断される人も増えたと考えてよいでしょう。
性別でみると、男性が33万1千人(69%)、女性が14万4千人(30%)となっており、男性の方が女性より約2倍多いという結果が出ています。これが、女性の方が発達障害の特性の一部が表面化しにくいことが影響していると考えられます。
また、発達障害と診断された年齢ですが、最も多いのは10歳~19歳で12万2千人(25%)、ついで20歳~29歳の10万3千人(22%)、0歳~9歳の10万3千人(21%)となっています。つまり、20歳までに発達障害と診断される人の割合は46%に過ぎず、発達障害の半数が20歳以降になってから診断されているのです。つまり、子どもの頃からの特性が、ずっと見逃されていたということなのです。
大人になるまで特性が見逃されることも…!
発達障害は、子どもが成長していく過程で発覚することが多く、かつては子どもだけの病気と考えられてきました。大人が発達障害と診断されるようになったのは、実は15年前くらいからで、「自閉スペクトラム症(ASD)」「注意欠如・多動症(ADHD)」の診断基準が変わったことが影響しています。そして、現在では、先述のように、20歳までに発達障害と診断される人と20歳以降に発達障害と診断される人の割合は、ほぼ同じです。
発達障害は生まれつきの特性ですので、「大人になってから発達障害になる」ということは起こりません。つまり、発達障害の特性は子どもの頃から現れていたはずなのですが、それがずっと見逃されてきて、大人になってから発達障害と診断される人がかなりの人数いるわけです。
恐らく、子どもの頃は「ちょっと変わった子」「落ち着きのない子」といった評価で見逃されてきたのだと思われます。それが、進学や就職などで環境が変化し、自身の責任や果たすべき役割が増え、他人との関わりも必要となってくる中で、「何故か自分だけうまくできない」「自分は人とはちょっと違う」「どうしてこんなに生きづらいのだろう…」等と自分で気がついたり、周囲の人から指摘されたりすることで、発達障害である可能性に初めて思い至られるのだと思われます。
特に、女性の発達障害は、特性の現れ方の関係で、男性の発達障害よりも目立ちにくく、気づかれにくいという特性があります。そのため、大人になってから診断を受けるケースが少なくはないのです。
大人の発達障害は、子どもとは異なり、「自分に何か問題がある」ことを強く自覚できるため、精神的な負担にもなりやすく、二次障害として、うつ病や不安症などの精神疾患を発症してしまうこともあるのです。
当院(新宿ペリカンこころクリニック)では、ご希望の患者様に、ウェクスラー成人知能検査(WAIS)を施行することが可能な医療機関となっております。
ご自身の能力の凸凹の可能性が気になられる患者様、とりわけ発達障害(ADHDやASD)の可能性を危惧されている患者様は、御診察の際に、その旨を当院医師にお申し出頂けましたら幸いです。
Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)
監修 佐々木裕人(精神保健指定医・精神科専門医・内科医)
★参考引用文献:湯汲英史監修『心と行動がよくわかる 図解 発達障害の話』(日本文芸社)