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【医師監修】発達障害と睡眠障害の関係性とは?

睡眠障害は、睡眠のメカニズムがストレスや不安、生活リズムの乱れなどの影響で狂ってしまうことを言います。具体的には、眠れない(不眠)、眠くて仕方ない(過眠)、眠気と生活リズムが一致しない(概日リズム睡眠・覚醒障害群)、寝ぼけ・夜尿・歯ぎしり・悪夢などが生じる(睡眠時随伴症候群)といった症状が現れます。

 

 

発達障害と診断された人には、子どもの頃から高い確率で睡眠の問題が起こると言われています。定型発達児において睡眠障害が起こる割合は5~9%と10人に一人いるかいないか程度です。それに対し、ADHD児では2~4人に一人、自閉スペクトラム症児では、2人に一人以上が睡眠障害を抱えているという調査結果はあります親からの「子どもが寝ない」「子どもが夜中に起きてしまう」といった悩み相談をきっかけに、子どもの発達障害が見つかるケースが少なくないと言います。

 

 

以前、同コラムでも記載しましたような感覚過敏などの特性、概日リズム(サーカディアンリズム)と呼ばれる体内時計のシステムづくりの問題、服薬などの影響、うつなどを含む発達障害の二次障害などが主な原因と言われています。

 

 

改善には、まず生活リズムを整えることを基本とし、それと併行して体内時計の同調を促す治療などを行っていきます。

 

 

睡眠は、私たちは健やかに生きるために欠かせないものであり、十分にとれない状況が続けば、生活にも支障が生じます。学業や仕事に支障をきたすほか、睡眠障害によって発達障害の症状が強く出る為、昼間の問題行動が増え、それにより、さらに睡眠障害が悪化するという悪循環に繋がることも考えられます。

 

 

「眠れない」にしても「眠ってしまう」にしても、自分が意図しない睡眠の問題が生じるのは辛いものです。できるだけ早めに医療機関を受診し、適切な改善方法を相談することが重要と言えます。

 

睡眠障害の種類

 

睡眠障害は大きく以下の4つの分類されます。これらは発達障害でない方でも起こり得ます

 

 

(1)不眠障害:いわゆる「眠れない」のが不眠障害(不眠症)の特徴ですが、「寝入るのが難しい(入眠時不眠)」のか、「夜中に何度も目を覚ます(睡眠維持不眠)」のか、「早朝に目覚めて再び眠ることができない(後期不眠)」のかによって、さらにタイプが分かれます。不眠障害は他の睡眠障害に比べて、最も有病率が高く、入眠時不眠は若年者に、睡眠維持不眠は中高年に多い傾向があります。

 

 

(2)過眠障害:睡眠不足でないにも関わらず、長時間眠ってしまったり、昼間の時間帯につい眠ってしまったり、睡眠惰性(睡眠から覚醒した後の寝ぼけ)が生じたりする疾患です。長時間眠ったにも関わらず回復感がないのが特徴です。昼間の眠気のために受診される人の約5~10%が、過眠症だとも考えられています。

 

 

(3)概日リズム睡眠・覚醒障害群:概日リズムとは、いわゆる体内時計のことです。概日リズム睡眠・覚醒障害は、睡眠・覚醒のスケジュールが体内時計とずれてしまっている疾患で、「時差ボケがずっと続いているような状態」と表現すると、辛さが想像しやすいかもしれません。

 

 

(4)睡眠時随伴症群:睡眠にともなって生じる諸症状を指します。睡眠中におきだしてうろうろと歩く、服を着替える…等、様々な行動をとる睡眠時遊行症(夢遊病)、睡眠中に突然起き上がり、絶叫したり、はげしく身体を動かしたりなど、ひどいパニックを起こす睡眠時驚愕症(夜驚症)、強い不安や恐怖を伴う夢を見る悪夢障害などがあります。

 

 

当院(新宿ペリカンこころクリニック)では、ご希望の患者様に、ウェクスラー成人知能検査(WAIS)を施行することが可能な医療機関となっております。

 

ご自身の能力の凸凹の可能性が気になられる患者様、とりわけ発達障害(ASDやADHDの可能性を危惧されている患者様は、御診察の際に、その旨を当院医師にお申し出頂けましたら幸いです。

 

 

Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)

監修 佐々木裕人(精神保健指定医・精神科専門医・内科医)

参考引用文献:Newton別冊『精神科医が語る発達障害のすべて 改訂第2