家に帰ったら即コタツやベッドへダイブ。スマホをいじっている内に気づいたら寝落ち。お風呂にも入らず、歯磨きもせずに寝てしまう…。気がつけばもう朝だ。メイクも落としていない。コンタクトも付けたまま。電気も消していない。「今日もやっちゃった…」と自己嫌悪に陥りつつ、会社に行くためにシャワーを浴びる……。
前回のブログでも取り上げさせて頂きました「本当は入るつもりだったのに、お風呂に入れなかった」という「風呂キャンセル(風呂キャン)」ですが、実は発達障害の特性を持たれている方にも起こりやすい現象だと言えるでしょう。
例えば、自閉スペクトラム症(ASD)の人の場合、過集中により時間も忘れてのめり込むため、休憩もせずに長時間作業をしてしまいます。その結果、過集中が切れた後にどっと疲れが押し寄せ、何もできなくなってしまう経験がある人も少なくはないことでしょう。この場合は、意図せずに過集中に入る人のケースが多いので、疲れのコントロールが後手に回ってしまうのです。
また、多動・衝動性の特徴を持つADHDの人は、普通の人より動き回る分、エネルギー消費が増えて疲れに繋がりやすくなります。ADHDの人は、肉体的な多動の他にも、頭の中(思考)が多動であるケースもあります。色々な思考が同時に何個もグルグルして、日が暮れる頃には脳が疲れ切ってしまい、「今日何もしていないのに疲れたな」となってしまうのです。
疲れのループを断ち切る為の“代替案”を用意する
疲れてしまうと、お風呂や歯磨きといった「やらねばならないルーティン」がこなせず、気を失うように寝てしまい、結果、余り疲れが取れず、翌日のしんどい1日を過ごすことになってしまいます。このような疲れのループを脱出するためには、例え疲れていても最低限のルーティンを最小限の労力と時間でクリアできる体制を整えておくことが重要になります。疲れることが問題なのではなく、疲れを翌日に残し、徐々に疲労負債をためてしまうことの方が問題だからです。
疲労を回復する手段は基本的には「睡眠」となるので、自分にとっての必要十分な睡眠を確保できるよう、いざという時の「最短ルート」を準備しておきましょう。例えば、自分にとっての必要ば睡眠の条件が、「7.5時間睡眠・部屋は暗く・コンタクトは外す・パジャマを着ている・歯磨き済み・身体は清潔」であれば、これらをクリアできる最短ルートを確保しておきます。コツは帰宅してから座ってしまう前に全ての条件をクリアできるようにすることです。
何故なら、一度座ってしまうと立ち上がれなくなり、そのままダラダラとスマホをいじってしまい、寝落ちするというパターンに陥ってしまわないよう、帰宅後すぐに手指消毒、シャワー、歯磨き、ドライヤー、スキンケア、コンタクトを外し、電気を消してベットに入るという一連の流れを、長くても30分以内に済ませられるように作戦を立てましょう。
例えば、しんどい日はお風呂やシャワーではなく拭き取りシートを使う、歯磨きではなくマウスウォッシュを使う……という感じに代替措置を用意しておきます。特に疲れた日こそ睡眠時間を確保できるよう、他のことはできるだけ負担を軽くすることが重要です。
但し、毎日が代替措置とならないように注意して下さい。そうしないと、ご自身にとって充分な睡眠時間を確保できているはずなのに、疲れが取れず、毎日がしんどいと感じられてしまうことも起こり得ます。シャワーやお風呂を上手に使うことが、入眠をスムーズにし、質の良い睡眠をもたらす上でも欠かせないからです。
このコラムを読まれまして、気になる点がありました方や、
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当院(新宿ペリカンこころクリニック)では、ご希望の患者様に、ウェクスラー成人知能検査(WAIS)を施行することが可能な医療機関となっております。
ご自身の能力の凸凹の可能性が気になられる患者様、とりわけ発達障害(ADHDやASD)の可能性を危惧されている患者様は、御診察の際に、その旨を当院医師にお申し出頂けましたら幸いです。
Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)
参考引用文献:沢口千夏著『ちょっとしたことでうまくいく発達障害の女性が上手に生きるための本』