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【医師監修】発達障害だと片づけられない??【パートⅡ】

前回のブログにおいて、発達障害ために片付けられない方がいることをご紹介させて頂きました。そのブログにも記載しました通り、発達障害は能力の凹凸ですので、前回ご紹介した例と必ずしもピッタリ一致しているとは限りません。今回は、能力の偏り方のまた違うタイプによって、片付けられなくなってしまっている例をご紹介します。

視覚認知が弱いタイプの場合

 

発達障害の特性の一つとして「視覚認知が弱い」ケースがあります。例えば、同じ行を何度も読んだり、行を飛ばして読んでしまう、図形の理解や板書を写すのが苦手……等といった視覚情報からの認知・記憶・処理が苦手な人がいます。

 

視覚認知が弱いと、そもそも部屋が散らかっていても気にならないことが多々あります。そうすると、玄関が出しっぱなしの靴であふれていても気にならない、タンスの引き出しが開いていても気にならない、床のゴミも気にならない、といった事態になってしまいます。

 

さらに、この視覚認知は、「空間認知能力」にも繋がっているため、いざ片付けを始めようと一念発起しても、どこに何を収納してよいのか分からず、結局適当に詰めこむだけで、使う時にまた散らかしてしまう、という悪循環に陥ってしまいます。

 

人によっては、いざ片付けを始めても、いつの間にか雑誌に夢中になっていたり、テレビやスマホを見てしまっていて手が止まっていたりするなど、集中力が続かずに片付けが進まないこともあります。ADHDの人は、注意力が散漫になりがちなので、片付けをしていたはずが、いつの間にか全く違うことをしていたといったことも起こり得ます。

 

部屋が散らかっている自覚はあるものの、やる気が起きない人はモチベーション不足かもしれません。「片付けなきゃな」と口には出しても、心の奥底では「でもまあ今じゃなくてもいっか」という自分もいることで、中々実行に移せないのです。

 

繰り返しになりますが、解決法は、発達障害の特性やタイプによって異なります。それでは以下に、タイプごとの解決法を挙げていきたいと思います。

Ⅰ.視覚認知が苦手なタイプは間取り図を書いてみよう

 

視覚認知が弱い人は、「間取り図を書く」と問題の解決法が見えてきます。やり方は次の通りです。

 

➡ステップ1:ノートに部屋の間取り図+家具の位置を書く

 

実際にノートに書くことで、「ここにスペースがあるな」「ここにモノが集中しているな」という家の全体像をイメージしやすくなります。イメージを掴むために行うものなので、下手でもフリーハンドでも構いません。

 

➡ステップ2:散らかっている所を書き込み、分析する

 

次はどこが散らかっているのかを書き込んでみましょう。そして、何故散らかっているのかを分析してみます。

 

この時、自分がどういう導線で生活しているかを考えることが良いでしょう。例えば、「収納が遠いから放置したままにしちゃうのかな」「玄関にラックがあれば、コートがその辺に放置されることはないのかな」といった感じに、書いているうちに気づきがあるはずです。

 

視覚認知が苦手なタイプは、散らかっていることに気づきにくいですが、こうして書き出すことで気づき易くなるのです。

 

➡ステップ3:家具の配置を考え直す

 

ステップ2で出たヒントをもとに、家具はどう動かすか考えてみましょう。つい新しい収納が欲しくなるかもしれませんが、まずは既存の家具で何とかならないか考えることがポイントです。

 

➡ステップ4:新しい家具配置の図を書く

 

自分が生活する上で邪魔にならないか、効率が上がるか、サイズは大丈夫か、最終模様替えをした図を書いてみましょう。そして、移動しても問題がないか実際の部屋や家具をメジャーで測って、問題がなければ模様替えをします。

 

 

模様替えほど大掛かりな変更をしなかったとしても、「ステップ1」と「ステップ2」までを行うことで、自分の散らかし癖がどこから来ているのかが分かり、生活改善にも繋がります。視覚認知の苦手な人にとっては、間取り図を書くのも一苦労かもしれませんが、自分で書くことで空間を把握できるようになりますので、ぜひ挑戦をしてみて下さい。

Ⅱ.集中力が続かない人は時間の使い方を工夫する

 

集中力が続かないタイプの人は、時間で区切ることで集中力を保ちましょう。お勧めは、タイムタイマーを使うことです。タイムタイマーは視覚的にどれくらい時間が経過しているかを示してくれるので、「あと少しだから頑張ろう」という気持ちにさせてくれます。

 

また、時間帯によって片付けの内容を変えてみるのも良いでしょう。朝は脳が覚醒していないので、段ボールをつぶす、靴をしまうなどといった余り考えずに身体を動かすことをします。お昼は脳も絶好調なので、捨てるものの精査など、判断力が必要な片付けをします。夜は脳も身体も疲れているので、昼に精査したものをまとめる(ゴミ出しやしまう作業は翌朝)、テレビを見ながら机の整理整頓など負担の少ない片付けを行います。このように時間をうまく使うことで、集中力のない人も片づけを続けられるようになれるはずです。

 

 

当院(新宿ペリカンこころクリニック)では、ご希望の患者様に、ウェクスラー成人知能検査(WAIS)を施行することが可能な医療機関となっております。

 

ご自身の能力の凸凹の可能性が気になられる患者様、とりわけ発達障害(ADHDやASDの可能性を危惧されている患者様は、御診察の際に、その旨を当院医師にお申し出頂けましたら幸いです。

 

 

Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)

監修 佐々木裕人(精神保健指定医・精神科専門医・内科医)

参考引用文献:沢口千夏著ちょっとしたことでうまくいく発達障害の女性が上手に生きるための本