ある日の新宿ペリカンこころクリニック
何か出来ないかって・・・。
月経トラブルに効く漢方薬もあるから勉強してみる?
月経トラブルで処方されることのある漢方薬とポイント生薬
芎帰調血飲(きゅうきちょうけついん)
牡丹皮、益母草→血の汚濁を解消して、血行を改善する
当帰、地黄、川芎→血を補う、血の流れを改善する
陳皮、烏薬、香附子→気を巡らせ腸の蠕動運動を促す、痛みを止める
乾姜→寒邪を取り除く
白朮、茯苓、大棗、甘草→脾の働きを改善し、気を補う
四物湯(しもつとう)
当帰、芍薬、地黄→血を補う
川芎→血の流れを改善する
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
当帰、芍薬、川芎→血を補う、血の流れを改善する
茯苓、白朮、沢瀉→脾の働きを改善し、水分代謝を正す
加味逍遥散(かみしょうようさん)
柴胡、薄荷→肝の疏泄作用を正し、肝鬱を改善する
生姜、甘草、白朮、茯苓→脾の働きを改善し、気を補う
当帰、芍薬→血を補う
牡丹皮、山梔子→熱を冷ます、出血を止める、鎮静させる
抑肝散(よくかんさん)
釣藤鈎、柴胡→肝の機能亢進を改善する
白朮、茯苓、甘草→脾の働きを改善し、水分代謝を正す
当帰、川芎→血を補う、血の流れを改善する
ポイント生薬
牡丹皮(ぼたんぴ)(芎帰調血飲、加味逍遥散)
牡丹皮の基原はボタン科のボタンの根皮です。
香りが強いものが良品とされ、血を動かす力があります。
吐気を止める、血の巡りを良くする、熱を取り去る効果を持ち。
月経時に血の塊が生じる証を「瘀血」と呼びますが、この瘀血を取り除く活血化瘀作用があります。
月経痛や月経不順、不正性器出血、産後の衰弱にも友好です。
また、熱を取り去る清熱涼血作用もありストレスによって生じた熱にも用いることが出来ます。
更に更年期の発汗、顔面紅潮にも有効であり女性の三大漢方の一つと呼ばれる「加味逍遥散」に配合されています。
当帰(とうき)(芎帰調血飲、四物湯、当帰芍薬散、抑肝散)
当帰の基原はセリ科のトウキまたはホッカイトウキの根を、通例、湯通ししたものです。
当帰は血を補う補血の生薬では必ずと言っていいほど使われている生薬です。
血を補う補血と、血を巡りを改善させる活血の作用をもちあわせている生薬でもあります。
血虚によりおこる月経トラブルに広く対応するため婦人科では主薬として用いられています。
血の巡りをよくすることで痛みを改善させ、頭痛、胸痛、筋痛などにも有効です。
また、全身の症状以外にも血には皮膚修復機能があるので皮膚可能証や打撲傷のような皮膚疾患にも使用されます。
川芎(せんきゅう)(芎帰調血飲、四物湯、当帰芍薬散、抑肝散)
川芎の基原はセリ科のセンキュウの根茎を、通例、湯通ししたものです。
血の流れをよくする活血作用があり、血を補う生薬と組み合わせると瘀血が取り除かれて新しい血を効率よく作り出すことが出来ます。
当帰と並ぶ、婦人科系の重要な生薬で「血中の気薬」とも呼ばれています。
気薬、と言うのは気を動かす薬と言う意味です。
肝の気血の流れをよくすることで感情の処理機能を高め、いらだちを鎮め精神的なリラックスを得る効果があります。
また、身体に侵入した風邪を追い出して頭痛などの痛みを止める作用もあります。
地黄(じおう)(芎帰調血飲、四物湯)
地黄の基原はゴマノハグサ科のアカヤジオウの根(乾ジオウ)またはそれを蒸したもの(熟ジオウ)です。
地黄は、加齢に伴い減少するとされる「腎精」を補います。
また、身体に潤いを与え、血も補ってくれます。
腎虚、特に腎陰虚による倦怠感、めまい、のぼせ、耳鳴り、白髪、腰の怠さ、腰痛、寝汗、ほてり、泌尿器系の症状(夜間尿、頻尿、残尿、尿失禁)、生殖機能の低下(インポテンツ、月経不順、不妊)などに用いられます。
日本では一般的に根をそのまま乾燥させた「乾地黄」を指しますが、蒸してから乾燥させたものを「熟地黄」と言います。
胃もたれや下痢の原因となることがあるので胃腸が弱っている時、元々胃腸が弱い方が使用する際には注意が必要です。
香附子(こうぶし)(芎帰調血飲)
香附子の基原はカヤツリグサ科のハマスゲの根茎です。
基原植物のハマスゲはとても生育力が強く、根茎は附子を小さくしたような形で芳香があることから香附子と呼ばれます。
気滞を解消して、気の流れを調整し、瘀血を解消、さらに痛みを止める働きがあります。
頭痛、筋肉痛、肩こり、ストレスからくる胃腸の不調、イライラなどに用いられ。
特に肋骨の下やみぞおちのはりや痛みにもよく使われています。
また、月経をととのえる働きをもち「婦人科の気滞には香附子」と言われるほど月経不順や月経痛など婦人科の不調でよく使われる生薬です。
山梔子(さんしし)(加味逍遥散)
山梔子の基原はアカネ科のクチナシの成熟果実です。
臓腑以外の隙間を「三焦」(さんしょう)と言いますが山梔子はこの三焦のこもった熱をとるため幅広く熱証に使用されています。
イライラやのぼせ、不安などが出る精神不安定で自制が効かない「煩躁」(はんそう)と言う状態にも効果があります。
また、利尿作用も持っている生薬です。
副作用として腸間膜静脈硬化症という疾患が言われているため内服している場合消化管内視鏡での検査が勧められています。
釣藤鈎(ちょうとうこう)(抑肝散)
釣藤鈎の基原はアカネ科のカキカズラ、時には湯通しまたは蒸したものです。
精神鎮静作用と筋緊張緩和作用をあわせもつ生薬で、イライラを鎮め精神の興奮、筋緊張をおさえてくれます。
抑肝散に配合され小児の夜泣き、熱性けいれんの余殃、高齢者の不安、焦燥感など一見興奮性であるものの背景には繊細な弱さがあると言った場合に用います。
小児から高齢者まで広い範囲、年齢に関わらず使用することのできる生薬です。
てんかんやけいれんに対するさようがあるとされていますが、効果は不十分です。
柴胡(さいこ)(抑肝散)
柴胡の基原はセリ科のミシマサイコの根です。
柴胡は気を巡らせる作用に優れ、熱を発散させたり、炎症を抑える作用もあります。
元々は感染症の中期に用いられていた生薬ですが、肝の気をよく巡らせ感情の鎮静や肋骨の下の膨満感、圧痛に使用されています。
また、升麻と同じく気を持ち上げる働きあわせてうつうつとした気持ちを発散させる作用もあります。
意外とそれだけじゃないんだね。
それにあった漢方薬や生薬を選ぶことが大事だね。
では月経トラブルと気の関係性についてまとめてみよう。
「気」と「肝」、月経トラブルの深い関係
月経トラブル、と言うと気血水の「血」が関係深いような印象を受けるかと思います。
実際月経トラブルの治療には血を補ったり、流れを改善する漢方薬が用いられます。
しかし実は、月経トラブルでも不正出血や生理が長く続いて終わらないと言う場合には「血」では無く「気」が影響していることもあるのです。
まず、気血水の気について詳しくご紹介します。
気は簡単に言うと体の生命エネルギーのこと、このエネルギーがあるからこそ体は臓器を動かし生命活動を維持することが出来ます。
気のはたらきは大きく分けて5つ。
血液循環や新陳代謝を担う推動(すいどう)作用、身体を温める温煦(おんく)作用、外邪の侵入を防ぐはたらきの防御(ぼうぎょ)作用、血や水の生成と、水の代謝および汗や尿に転化させる気化(きか)作用、そして血、汗、尿などが漏れる、内臓が下垂するのを防ぐ固摂(こせつ)作用です。
不正出血はこの固摂作用の低下によって血を留める力が弱まって起きると考えられます。
また、五臓(肝、心、脾、肺、腎)の中では「肝」が月経トラブルとは繋がりの深い部分です。
人が持つ気は生まれもった先天の気と、生命活動で取り込む後天の気があります。
男女関係なく先天の気は「腎」にありますが、女性の先天は「肝」とも表現されます。
これは、肝が女性の月経、妊娠、出産に関わっているからです。
肝には、先ほど紹介した気を全身に巡らせる疏泄(そせつ)作用と、血を貯蔵する蔵血(ぞうけつ)作用があります。
疏泄が滞ると気血も滞り、月経の周期が乱れ、月経痛の発生、情緒不安定さや憂うつ感。
逆に疏泄が過剰過ぎるとイライラの症状が現れます。
蔵血作用が滞ると血が不足し、月経量の減少や不妊などを引き起こします。
肝が弱まると爪がもろくなったり、ツヤがなくなったりします。
もし、月経トラブルが起きた際不正出血があるようなら「気」の不調を、爪に筋が入ったり割れたりしやすくなっているようなら「肝」の不調を疑ってみるのも一つの方法です。
月経トラブル=血の不調と考えすぎてはいけないんだね。
症状を見てみることも重要だよ。
足りすぎてもいけないもんね。
このバランスを保つことで健康を維持していくんだよ。
体質からみる月経トラブル
東洋医学では妊娠のために気血が集まり、妊娠が不成立だった時に排出される血が月経と考えられています。
ここでは、月経トラブルで多く起こる症状を3つに分けます。
一つ目は気滞や瘀血による「月経困難症」です。
月経に伴って起こる月経痛や体の不調はこの月経困難症に含まれます。
月経時に不快な症状を起こす要因はストレスです、肝はストレスにとても弱く。
肝が弱ると気の巡りが悪くなり、そのため血の巡りも悪くなります。
そうするとイライラや頭重感、下腹部痛、腰痛などの症状が現れます。
月経血に塊を伴うのは血の巡りが滞る瘀血によってみられる症状です。
また、ストレスに加えて冷えも気の巡り、血の巡りを悪くさせます。
こう言った月経困難症の症状が出ている場合におすすめなのが「芎帰調血飲」(きゅうきちょうけついん)です。
この漢方は、血を温めて気血の巡りを良くする当帰、川芎。
下半身を温めて気を巡らせ痛みを止める烏薬、香附子などが含まれ冷えをとるだけでなく、痛みを抑えてくれる働きもあります。
月経困難症をお持ちの方はやはり「痛み」に悩まれる方が多いのではないでしょうか。
そうなると根本的解決を目指す気血の巡りを改善する作用と、痛みを止めてくれる作用が一緒に働く芎帰調血飲は強い味方になると思います。
ただし、漢方薬を服用しても改善が見られない場合子宮内膜症など他の病気の可能性もありますので婦人科での診療も検討してください。
2つ目は血虚による「月経不順」です。
簡単に言えば、血が足りないために月経の間隔が開いてしまっている状態と言えます。
心労や睡眠不足など生活に無理があると、血が消耗され不足して血虚の状態になります。
血虚になると経血量の減少、月経が来ない、月経と月経の間隔が開くなどの症状が現れます。
周期の延長が続いていくと、更に無月経につながるとも考えらます。
このような血虚による月経不順の方におすすめなのが「四物湯」(しもつとう)です。
四物湯は、血を補う作用と血の流れを改善する作用を持つ月経トラブル改善によく使われる漢方薬です。
この四物湯から地黄を引き、茯苓、白朮、沢瀉の水滞に強い生薬を加えたのが「当帰芍薬散」(とうきしゃくやくさん)です。
生理中にむくみが酷くなる、と言う方は当帰芍薬散を選んでみてもよいでしょう。
最後に、気滞による「月経前症候群」です。
月経前の黄体期は気滞が起こりやすく、気滞によってさまざまな症状が引き起こされます。
気は体の様々な部分を動かすエネルギーなので、それが行き渡らず頭痛、めまい、痺れが起きたり。
気の巡りが悪くなることで水滞が起きてむくみが出たりなど。
特に肝の気滞が生み出す精神症状で落ち込みや憂うつ感、神経過敏、イライラ、不眠などが出ることもあり気滞がさらに進むと精神症状は酷くなる傾向があります。
どうして落ち込みとイライラと言う正反対にあるような感情が起こるのか?と不思議に思う方もいらっしゃるかも知れませんが。
ここで注意したいのが肝にある気のエネルギーの巡りが悪いことは調節が上手く出来ない状態を指していると言うこと。
必ずしもエネルギーが不足している状態が起きているわけではありません。
水道の蛇口で例えると少しひねっただけで激しく一気に出ることもあれば、いくらひねっても出てこないこともありますし、その両方が代わる代わるに起きることもあります。
そこでおすすめなのが「加味逍遥散」(かみしょうようさん)や「抑肝散」(よくかんさん)などの血を補い、肝のはたらきを助けてくれる漢方薬です。
どちらかと言うと抑肝散は生薬の釣藤鈎の効果からイライラに強い印象があります。
症状もそれだけ沢山あるんだよね。
一言で「月経トラブル」の漢方薬とまとめるのは
とても難しいね。
それは漢方薬よりもっと選択肢が多いからなぁ。
しようと思ったことはとても重要なことだと思うよ。
美味しいご飯作ってあげたい!
よもぎ
よもぎには熱を生み出す温性の性質があります。
とくに冷えが引き起こす痛みの症状を抑えるので、肩こり、腰痛、生理痛に効果があります。
また、血を補う作用と止血作用もあるので貧血、痔にも効果が。
身体に溜まった湿をとり除くこうかもあるので生理前や生理中のむくみ対策にも。
イカ
イカには血を補い、津液を生み出す作用があります。
血や津液の不足から来る情緒不安定、目のかすみ、肌荒れ、抜け毛、めまい、貧血、爪の変形に効果があります。
生理の周期が短い、生理が遅れる、経血量が少ないといった月経トラブルにも強いのでそのような症状がある方は継続して食べると良いでしょう。
また、イカには「肝」を補う作用もあります。
ミョウガ
ミョウガには身体を温める作用があるので冷えの症状や、生理不順、生理痛、肩こりに効果を発揮します。
血行を良くし発汗を促したり、食欲増進して消化を助けるなどの効果があり冷たいものの摂り過ぎによる胃腸不調改善にも役立ちます。
更に痛みも緩和させられたら良いなぁ。
漢方の勉強をする良い所だね。
こうしてペリスケ君の漢方薬入門の日々は続いていくのでした・・・
出典:
現場で使える薬剤師・登録販売者のための漢方相談便利帖 杉山卓也著 SHOEISHA
生薬と漢方薬の事典 田中耕一郎 編著 日本文芸社
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監修者 佐々木裕人(精神保健指定医、精神科専門医)