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日本の春は「パニック症」の好発期…?!!

「不安」とは、漠然とした不快な感情であり、苦痛となりやすい症状です。そして、しばしば患者様の来院理由にもなり得ます。この不安は、統合失調症、双極性障害、アルコール離脱、パーソナリテイ障害など、実に様々な精神障害の症状の一つとしても現れます。

正常な不安と病的な不安?

不安の診る際、まず病的な不安と正常の状態で見られる不安とを区別する必要があります。正常な不安は、脅威となる状況への反応を準備するという前向きな側面がありますが、病的な不安は、その強度や持続の点で、脅威に対する反応を却って妨げるという結果を招きます。

 

例えば幼児が親と別れる時の不安や、初めて登校する時の不安は、いずれも正常の状態でも認められるものです。一方、病的な不安は、その特徴によってパニック発作、「予期不安」、「恐怖(特定の対象のある不安)」などに分類されます。

 

パニック発作(パニック症)とは?

パニック症(パニック障害は、パニック発作と、そのことに関する不安が主な症状です。パニック発作は、身体症状を伴うことが特徴です。それは、発汗、頻脈、呼吸促迫、動悸、下痢、めまい、反射亢進、血圧上昇、失神、四肢のふるえ、落ち着きのなさ、尿意、胃の不快感等々、自律神経症状を中心に実に多彩です。

 

パニック発作では、殆どの場合、不安が10分ほどで急速に高まります。この不安感は、言葉では言い表せない性質のもので、しばしば死の恐怖(「このまま死んでしまうのかもしれない」)にまで強まることがあります。

 

動悸や発汗などの身体症状が現れると、集中力が低下します。患者様は発作中に失神することさえあります。発作は20~30分ほどでおさまりますが、まれに1時間にわたって続くこともあります。s症状は次第に消えていきますが、発作のない時でも、また発作がおきるのではないか(起きたらどうしよう)という良く不安が持続することがあります。

 

欧米諸国のパニック症の12ヵ月有病率は2~3%と推定されており、女性は男性よりも2倍ほど多いと言われています。どのような年代にも生じますが、思春期後期や成人期早期に最も多く発症します。パニック症の発症には遺伝的要因が関与していると考えられています。

 

発病時期の患者様には、生活上のストレスが多かったり、場合によっては、その人にとって特に重要な人や物との別離を体験したりしていることが多く、しかも、患者様自身がそれを「重大なこと」として捉えていることが報告されています。

 

患者様には、交感神経系の興奮の傾向や、刺激への慣れの乏しさなどの生理的特性が認められていますが、これらは生活上のストレスにとって、より強くなることが分かっています。また、脳の扁桃体の異常な興奮が見られ、前頭前野、海馬との根とワークの変調が起こっています。治療は、扁桃体興奮の抑制と、ネットワークの復旧にあります。

 

パニック症では、10~65%にうつ病が起こっています。また、恐怖症、強迫症(強迫性障害)、薬物依存症を併発することも多いようです。治療によって、患者様の30~40%は症状が消え、約50%は症状が残るものの、生活には差し支えない状態になります。しかし、10~20%の患者様では改善が不十分のままに留まります。

 

 

パニック症の主な治療方法は、薬物療法(投薬治療)です。70~80%の患者様で症状の軽減が見られ、有効です。選択的セロトニン取り込阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)を第一選択薬として使用することが推奨されています。しかし、副作用のために服薬を継続できないケースがあり、その場合にはベンゾジアゼピン系抗不安薬、β-ブロッカーであるプロプラノロールが有効です。これらは、軽度から中等度の肖像の患者様には、有効な薬ですが、重度の不安症には、字ベンゾチアゼピン系、セロトニン・ドーパミンアンタゴニスト(SDA)、多元受容体部分アゴニスト(DSS)が奨められます。カフェインは不安を誘発するため、摂取は控えるべきでしょう。

 

 

心理療法(カウンセリング)の一種である認知行動療法も有効な治療法です。中でも、系統的脱感作法がよく用いられます。これは不安恐怖を生じさせる事象に段階的に曝露していく方法です。認知行動療法では、不安の発作と身体症状との関係について教育を受けたり、不安を回避する方法や呼吸法などのリラックスする方法を訓練したりします。これらを組み合わせて、薬物療法だけに偏りすぎない工夫もも必要なのです。

 

春はパニック症の好発期?!

これはあくまでも、臨床家としての私見に過ぎませんが、日本においては、春(3月・4月・5月)は、パニック症が起こりやすい傾向があるように感じています。何故なら、上記に挙げた「条件(原因)」が見事に揃ってしまうからです。

 

4月の新年度にあたって、慣れ親しんだ環境や人たちと別れて、新しい環境に移ることになる人も少なくないことでしょう。まさに、日本において「春は出会いと別れの季節」に他ならず、それには慣れるまでのそれ相応のストレスが掛かります。また、パニック症には自律神経系との関連も指摘されていますが、元々春は「三寒四温」と言われていましたが、近年が冬のような日もあれば夏日もあるといったように、それが一層極端になっている傾向があります。この季節の変動も「物理的ストレス」として身体は確実に捉えているのです。加えて、新たな学校・職場・部署になる方は、「ここで上手くやっていけるだろうか」「ついていけるだろうか」等といった漠然とした不安を抱えても当然です。

 

このような状況下では、他の季節よりも、パニック症のリスク要因が増えるのはある意味当然とも言えるでしょう。

このコラムを読まれまして、気になる点がありました方や、
興味・関心を抱かれた方は、どうぞ当院まで、
お気軽にお問い合わせください。

 

当院では、パニック症をはじめ、

うつ病、躁うつ病(双極性障害)、適応障害、

心身症、自律神経失調症、睡眠障害(不眠症)、

摂食障害(過食症)、統合失調症、強迫症、不安症、

大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症)、

月経前症候群(PMS)、月経前不快気分障害(PMDD)、

過敏性腸症候群(IBS)、ストレス関連障害など、

皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、

心身両面からの治療とサポートを行っております。

 

 

また当院では、診察と一緒に、専門の心理士(臨床心理士・公認心理師)資格を持ったカウンセラーによるカウンセリング(心理療法)も行っておりますカウンセリング(心理療法)をご希望される患者様は、診察時に医師にご相談下さい。

 

 

Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)

参考引用文献:Newton別冊精神科医が教える心の病の説明書