自分では何も悪いことを言っているつもいはないのに、相手の気分を損なってしまうことはありませんか?どこで相手を怒らせてしまうのかが分からないことはありませんか? 発達障害をお持ちの方の場合、障害によって出やすい「癖」や特徴が、時にコミュニケーションの阻害要因になってしまうことがあります。
例えば、ADHDの人の場合は、貧乏ゆすりや手遊びといった多動、ASDの人であれば、目線が合わなかったり、声が大きすぎたり小さすぎたりします。これらの特徴が仕事のやり取りで現れれば、全て相手に悪印象を与える結果になってしまいます。
また、ASDは社会性の面から、ADHDは衝動性の面から、一般に他人の前ですると失礼に当たる行動をしてしまうことがあります。例えば、あくびや頬杖、手で口を覆わずに咳やくしゃみをしてしまうなどです。以下に、発達障害の人が無意識に出してしまいやすく、かつ気をつけられた方が良いものを挙げておきます。
➡体を揺らしたり、頻繁に姿勢を変えたりせず、背筋を伸ばして座る:理由は不明ですが、ASDを持つ人は体幹が弱い人が多く、体勢が落ち着かずに身体が揺れてしまったり、頻繁に座り直して姿勢を変えたりしてしまうことがあります。これは時として、相手に落ち着かない印象を与えてしまうので、意識して背筋を伸ばすようにしましょう。同じ理由で机やひじ掛けにひじをついてしまうことも多いので、失礼にならないように自然に身体を支えられる姿勢を練習しておくことがお勧めです。
➡会話中は、顔や頭、身体をかいたり触ったりすることは我慢:これも理由は不明ですが、ASDを抱える人はアトピーやアレルギーを持っていることが少なくありません。身体をかきむしったり、頻繁に自分の顔に触れたりすることは、やはり相手に落ち着かない印象を与えてしまいます。かゆみが出やすい箇所は、予め保湿液や薬などを塗って対策をされておくとよいでしょう。
➡貧乏ゆすりや手遊びは避ける:ADHDの場合に多く出てしまうのが、貧乏ゆすりや手遊びです。本人にとっては集中するのに有効であっても、話し相手にとっては逆に集中を妨げるものになってしまいます。この癖がある人は「座っている時は足の裏をしっかりと床につける」と意識すると、貧乏ゆすりは出にくなります。また、人の話を聞く際には、利き手はペンを握り、逆の手はメモ帳のページを抑える姿勢をまず作ってしまうと良いでしょう。メモを取るような状況でない場合は、手は膝の上におくようにされると良いでしょう。
また、仕事の話であっても、ただ情報を伝えれば良いわけではありません。報連相も人間同士のコミュニケーションであり、そこにはやはり相手の気持ちをおもんばかった表現が必要になります。相手の気持ちを汲み取ることが苦手なASDの人にとっては、これもまた仕事のやり取りに困難を生じさせる原因となってしまいます。ADHDの人の場合も、その率直な物言いから相手の気分を害してしまう場合があるので注意が必要です。
相手の気分を害さないためには、仕事の会話をする上での暗黙のルールを知っておくことが重要になります。意識し、守っていくにはそれなりの我慢や努力が必要になってきますが、知らなければそもそも何に努力したら良いのかが分かりません。
以下に、職場での会話中に意識すべきことと、NGになってしまうことを挙げておきます。他にも多々あるかと思いますが、比較的意識しやすいことや、出やすい癖を中心にご紹介します。
仕事の会話時に意識すると良いこと
- 話しかけられたら「はい」と返事をして身体ごと相手の方を向く
- 誰かを呼び掛ける声がしやら、取り敢えず声がした方を向く
- 自分が呼びかける場合には、まずは相手の名前を口にする
- 用件はいきなり切り出さず、相手の都合を確認してから話し始める
- 「ありがとうございます」や「申し訳なありません」をつける
- 最後まで言い切る
仕事の会話時のNG事項
- 頷きやボディーランゲージなど会話に必要なもの以外の、余分な身体の動き
- 相手と視線を合わせない、そっぽを向いている
- 話の流れを断ち切るような行動をしたり、話の途中にまったく違う話題を切り出す
- 社内の仕事への評価・批判
このコラムを読まれまして、気になる点がありました方や、
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当院(新宿ペリカンこころクリニック)では、ご希望の患者様に、ウェクスラー成人知能検査(WAIS)を施行することが可能な医療機関となっております。
ご自身の能力の凸凹の可能性が気になられる患者様、とりわけ発達障害(ASDやADHD)の可能性を危惧されている患者様は、御診察の際に、その旨を当院医師にお申し出頂けましたら幸いです。
また当院では、診察と一緒に、専門の心理士(臨床心理士・公認心理師)資格を持ったカウンセラーによるカウンセリング(心理療法)も行っております。カウンセリングをご希望される患者様は、診察時に医師にご相談下さい。
Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)
参考引用文献:林寧哲監修『ちょっとしたことでうまくいく発達障害の人が会社の人間関係で困らないための本』