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【医師監修】心療内科を受診した方がよいカラダのサイン!

日本人が一生の内に一度でもうつ病になる人(=生涯有病率)は、女性ではなんと25%という数値が出ています(男性では10%です)。うつ病は、心の病で休業する人の4~6割を占めている位、実はありふれた病気です。健康な方の「落ち込み」とは根本的に違って、仕事や家事が出来なくなってしまう、頑張ろうとしても酷く能率が悪くなってしまうのが特徴です。

 

 

ごく軽くて、知らぬ間に発病し、ひとりでに治るケースから、最悪では自殺に終わる人もいます。薬と十分な休養によって、後遺症もなく治り、知能や技術、蓄えられた経験は失われません。けれど、治癒(寛解)されるまでに約3~6か月ほどは掛かるので、職場や家庭への打撃が大きく、予防することが何よりも大切です。

 

 

心の病気が身体の病気と違うのは、「自分は病気かも?」と気づきにくいことです。心の病気になったと自分が気づく人は全体の15%と少数派です。むしろ不眠や食欲不振、だるさや頭痛など色々な身体の症状が出るため、うつ病の方の35%が内科を受診されます。そしてなんと半分の人は、どの医療機関にも自分の方からは受診しません。身体の症状は心のそれよりも気づきやすく、うつ病を考えるキッカケにもなりますので、これから書く3つの『い』のサインを覚えておくと良いでしょう。

 

 

うつ病の身体の症状~3つの『い』がポイント

 

身体の症状の場合、以下の3つの『い』が「2週間以上」続いた場合うつ病の可能性も視野に入れましょう。

 

★「眠れな

★「食べたくな

★「疲れやす

 

① 「眠れな

 

うつ病の方の不眠は特徴的で、何とか寝付けるのに、夜中に目が覚める(中途覚醒)、朝早く目が覚めて(早朝覚醒)、それからよく眠れない、というパターンがよく見られます。疲れているのに熟睡できず夢ばかりみて、2~4時頃に目が覚めて、仕事の事をあれこれと悩み、そこから寝付けなくなってしまいます。また、朝早く目が覚めた時、「これから先、自分はどうなるのだろう?」と将来への不安な気持ちに襲われて憂うつになっていきます。

 

注意すべきは、内科医(一般内科)が不眠症を診た場合、大抵のところ睡眠薬(抗不安薬)を処方することが多いのですが、うつ病による不眠には効かないという点です。この場合は、抗うつ薬による治療が奏功します。

 

 

②「食べたくな

うつ病には食欲不振がみられます。その特徴は、無理して食べれば食べられないこともないのですが、美味しくなくて味わうことが出来ない、食べなければ身体が持たないから仕方なく口にしている、という感じです。また、吐き気や胃の痛みがくることもありますし、1~2ヵ月の内に、3~4㎏痩せてしまうこともあります。当然、少なくない人が内科を受診しますが、心の病気から生じていますので、胃カメラや超音波などの検査では、殆どの方が「異常なし」とされてしまいます。

 

ストレスに出会うと逆に「過食」になる人もいますが、ストレスがかなりのものであったり、うつ病(大うつ病)の場合、多くの方は「痩せ」となって現れます。このように内科的な検査をされても異常が見つからない「急激な痩せ」は、うつ病を疑ってみましょう。

 

 

③「疲れやす

うつ病には「疲れやすさ」「だるさ」がつきものです。このだるさは休んでもとれず、何をするにも億劫という感じがします。

 

単なる疲労の場合、例えば残業が続いて帰宅が毎晩深夜となり、そこから夕食を食べて台所を片付けるとなると、「ああ、疲れた!こんなのやりたくない!」と誰もが感じるでしょうが、気合いを入れれば何とかやれます。しかし、うつ病の時のだるさは、自分を奮い立たせようとしても乗り越えられないのが特徴です。

 

一般的には、だるい状態が続くと肝臓病を考えますが、これは常識のウソです。医学書には月単位で続くだるさは、50~80%が過労やうつ病などの心の病気と記されています。長く続くだるさを感じられたら、一度はうつ病を疑ってみることです。

 

 

Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)

監修 佐々木裕人(精神保健指定医・精神科専門医・内科医)

★参考・引用文献:鈴木安名著働く女性のメンタルヘルスがとことんわかる本(あけび書房)

★参考HP:こころの耳(厚生労働省)