復職を可能にする要素とは、以下の3つです。リハビリの段階では、リワーク(復職支援)プログラム等を通して、この3つの要素を診ていくことになります。
1.生活リズムが整っており、決まった時間に一定の場所に来られる
それはつまるところ、職場に一定の時刻までに来て、業務を開始できるということです。在宅勤務の場合には通勤はありませんが、一定の時刻に業務を開始するという点は同様です。患者様が、リワークプログラムに参加されることで、「毎日一定の時刻に集まれる程度に回復されているかどうか」が、患者様ご自身の実感としても、また主治医の立場からも確認することが可能になるのです。
例えば、外来の診察の場合ですと、症状が強い時には予約日時を患者様の方からご変更されることがしばしばあります。それはまだ、約束の時間に決められた場所に必ず行けるほど、症状が回復していないということでもあります。症状が回復し、ある程度安定されてくると、約束の時間にも定期的に通えるようになるのです。そういう意味では、時間を守れることが、うつの患者様にとって、一つの重要な回復のバロメーターであるとも言えるのです。
2.集団の中で一定時間を過ごせる
業務は始まると一定時間続くものです。「集団の中で一定時間を過ごせる」ということは、それに耐えられるかどうかを意味します。また、能率よく業務が出来る程度にまで回復されていることを確認することも大切です。
ここで言う「集団」とは、復職後に一緒に働く上司や同僚のことをイメージしていますが、リハビリ中は、復職という共通の目標を持つ仲間のことでもあります。リワークプログラムに参加される方たちは皆、病気のために現在は休んでいますが、いずれは復職すること、また、復職後に再休職しないことを目指して、様々な活動に取り組まれているという点では共通している仲間です。まずは、その仲間たちの集団の中で一定時間を過ごせるようになられることが、実際に業務に戻られた際に、職場(部署)にて一定時間を過ごせる見通しが持てるのです。
これは、図書館通いや、カフェでの作業といった、ある意味では「いつ帰っても良い」「拘束されていない」環境では中々体験できないことでもあるのです。
3.平日は毎日プログラムを行っても疲労がたまらず、症状の再燃がない
休職中、一定期間に一度診察時に患者様のご様子を診るのに対し、リワークプログラムは平日定期的に実施することで、患者様のご様子を長時間、かつ継続的に診ることが出来ます。そうすると、一見かなり良くなってこられた患者様でも、症状がまだ残っている場合には、その症状によってリワークプログラムを休まれることもあります。また、翌日以降もその日のプログラムの疲れが残ってしまい、継続した参加が難しいという場合も少なくありません。
そのようなご様子を観察することで、患者様が実際に職場に戻って継続的に勤務ができるか否かの判断をより正確に行うことが可能になるのです。これは、患者様側にとっての懸念材料を払拭する上でも有効かと思われます。
リワークプログラムに継続して参加された際、翌日以降に持ち越される疲労や、症状の再燃がないことが確認できれば、職場復帰への準備が整ってきたということになります。反対に、症状がまだ完全に消えていないことが分かった場合には、時として薬の量や種類を変更することもあり得ます。それによって状態が改善し、プログラムにも参加できるようになっていけば、それだけ復職に近づいていくわけです。
そういった意味では、復職前のご自身のご状態の最終確認として、当院のリワークプログラム(1ヶ月完成)を受けてみられるという考え方も有用だと言えるでしょう。
Presented by. 医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科)
監修 佐々木裕人(精神保健指定医・精神科専門医)
★参考・引用文献:五十嵐良雄著『うつの人のリワークガイド』(法研)
★参考HP:『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き』(厚生労働省)