大量のモノをため込む「ためこみ症」
モノを捨てられない、モノを片付けられない、モノをため込んでしまう……そんな人はいないでしょうか? もしかするとその状態は、単に「片づけが苦手な人」「何でもとっておく人」という訳ではない可能性があります。モノを捨てられなかったり、ためこんでしまう人の中には、「ためこみ症」という心の病が隠れている場合があります。
ためこみ症は、ほとんどの人にとって聞きなれない言葉でしょう。ためこみ症は、2013年から病気の一つとして新たに加わりました。ひとことで言えば、その名の通り、大量にモノをため込む精神疾患です。脳の特定の部位が特有の働き方をするという生物学的側面だけでなく、心理面と社会面も影響し合っている複雑な状態です。
以前は、強迫症の症状の一つとして考えられていましたが、強迫症の人すべてに見られる症状ではないこと、また強迫症ではない人にも見られることから、単独の精神疾患として位置づけられるに至りました。
強迫症とためこみ症の違いとは?
「ためこみ症」はかつて、「強迫症(強迫性障害)」の症状の一つに位置付けられていました。しかし、アメリカ精神医学会の診断基準の最新版である「DSM-5」では、ためこみ症は強迫症とは別の新しい精神疾患の一つとなりました。
強迫症とは、強い不安やこだわりにとらわれ、日常生活の様々なことに支障が生じる病気です。自分の意思に反して、不合理なことだと分かっていても、そのことが頭から離れない、分かっていながらも同じ行為を何度も繰り返してしまう…等の症状があります。例えば、不潔に思えてしまい自分の手を何度も洗ってしまったり、家の戸締りやガスの元栓などを何度も確認せずにはいられなくなってしまいます。
強迫症の症状には「強迫観念」と「強迫行為」の2種類があります。強迫観念とは、前述の通り、不合理だと頭では分かっていてもその考えが頭から離れないことです。強迫行為とは、何度も手を洗ってしまうという例の通り、強迫観念に伴う不安を一時的に感じないようにするためおこなう行為であり、不安のために止めることが出来ません。
強迫症の症状の一つに「モノを集めたりためこむ強迫行為」があります。「邪魔になるほど非常に多くのモノを保存している」「必要のないモノを収集する」「あとで必要になるかもしれないことが怖いので、モノを捨てるのを避ける」という状態で、ためこみ症とも共通している状態です。
一方、ためこみ症と強迫症の決定的な違いもあります。強迫症の人の場合、不安のためにためこみ行動を行っていますが、ためこみ症の人の場合は、モノを入手したときや、ため込んだモノの中に特別なものを見つけた場合、喜びやウキウキ感といった「快」気分と結び付いていることがあります。
ためこみ症と強迫症が併存している確率は20%以下ですが、抑うつ状態やさまざまなモノを入手してしまう衝動性の制御に困難さがみられることがあります。
また、男女比では、小児期には2対1から10対1と男児の方に多くみられ、おおよそ60%が成人期まで症状が続き、慢性的経過を持つことが指摘されています。しかし成人期になると、男女差は、1対1から2対1となり、年齢により異なる状態が報告されています。さらに50歳以上では、関節炎や糖尿病、肥満、脳梗塞などの発症リスクが高まりやすいことも知られています。
ただ、これらの報告は、ためこみ症の診断基準や、併存する精神疾病の状態が統一されていなかったことの影響があるという指摘もあります。
このコラムを読まれまして、興味・関心を抱かれた方、
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当院では、強迫症(強迫性障害)をはじめ、
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Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)
監修 佐々木裕人(精神保健指定医・精神科専門医・内科医)
引用参考文献:五十嵐透子著『片付けられないのは「ためこみ症」のせいだった!?』