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広汎性発達障害とは?|大人に見られる特徴を精神科専門医が徹底解説

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広汎性発達障害とは?|大人に見られる特徴を精神科専門医が徹底解説

広汎性発達障害とは?大人に見られる特徴と向き合い方

はじめに

「広汎性発達障害(PDD)」という言葉を聞いたことはありますか?

これは発達障害の一種で、自閉スペクトラム症(ASD)やアスペルガー症候群などを含む診断名の総称でしたが、2013年の診断基準(DSM-5)からは「自閉スペクトラム症」として統合されました。

この記事では、かつて広汎性発達障害と呼ばれていた特性が、大人になった現在の生活でどのような形で困りごととして表れるのか、またその向き合い方や適切な支援の受け方について、精神科医の視点からわかりやすく解説します。

 

広汎性発達障害(PDD)とは?

広汎性発達障害は、生まれつきの神経発達の特性に基づく障害であり、大人になってから突然発症するものではありません。そのため、乳幼児期から何らかの特性は現れていると考えられています。

しかし、軽度であったり、周囲の環境が適応的であったりした場合には、幼少期には見過ごされることも多く、大人になってから社会生活上の困難を通して診断を受けるケースも少なくありません。

広汎性発達障害は、社会性・コミュニケーション能力・想像力の発達に困難を伴う神経発達症の一種です。

以前は以下のような診断名が含まれていました。

  • 自閉性障害(自閉症)
  • アスペルガー症候群(言語の遅れがなく知的障害を伴わないASDの一種)
  • 特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)

DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版)ではこれらは「自閉スペクトラム症(ASD)」に統合され、程度や特性の個人差に焦点を当てた診断が主流となっています。

 

大人に見られる特徴や困りごと

大人のASD(旧:広汎性発達障害)には以下のような特徴が見られます。

● 対人関係の難しさ

  • 空気が読めないと指摘される
  • 会話のキャッチボールが苦手(相手の反応を読み取りづらい)
  • 距離感の取り方に戸惑う

● 感覚過敏・こだわりの強さ

  • 音や光、においに敏感(感覚過敏)
  • 自分なりのルールや手順に強くこだわる(強迫的傾向)

● 柔軟な対応が苦手

  • 環境の変化に適応しづらい
  • 急な予定変更にストレスを感じやすい

これらは一見「性格の問題」として見過ごされがちですが、実は発達特性に起因していることも多く、本人の努力不足ではありません。

 

診断を受けることの意味

大人になってから診断を受ける方も増えています。診断の目的は「ラベルを貼ること」ではなく、「生きづらさの原因を明確にし、適切な支援を受けること」です。

以下のようなメリットがあります。

  • 自分の特性を理解できる
  • 周囲に配慮を求めやすくなる
  • 障害者雇用や就労支援、福祉サービスの利用が可能になる

特に働きづらさや人間関係のトラブルが続く場合は、医療機関への相談が第一歩になります。

 

向き合い方とサポートの選択肢

発達特性は「治す」ものではなく、「理解し活かす」ことが重要です。以下のようなサポートがあります。

● 精神科・心療内科での支援

  • カウンセリング(心理教育や認知行動療法)
    • 心理教育:自分の特性を理解し、対処法を学ぶための教育的支援
    • 認知行動療法:考え方や行動のクセを修正し、生活上の困難を軽減する精神療法
  • 必要に応じた薬物療法(不安や抑うつが強い場合など)

● 就労支援や社会資源の活用

  • 発達障害者支援センター(各都道府県に設置された支援窓口)
  • ハローワークでの障害者就労相談
  • 自治体の福祉サービス(生活訓練、就労移行支援など)
    • 就労移行支援:一般就労を目指す障害のある方に向けた支援プログラム

● 自己理解を深める

  • 特性に合ったライフスタイルの見直し
  • 得意な分野で力を発揮する働き方

 

医師からのアドバイス

「なぜ自分は生きづらいのだろう」と感じている方の中には、発達特性が関係しているケースも少なくありません。

困りごとが続いたり、人間関係がうまくいかないと感じるときは、早めに専門機関に相談することをおすすめします。診断がついたとしても、それは個性を否定するものではなく、より良く生きるための第一歩です。

 

まとめ:広汎性発達障害と前向きに向き合うために

広汎性発達障害(現:ASD)は、大人になってからもその特性が生活に影響を及ぼすことがありますが、適切な理解と支援により、快適に暮らすことは十分可能です。

「ただの性格」では片づけず、自分の特性を知ることは、自分自身を大切にすることにもつながります。気になる症状がある方は、早めに医療機関で相談してみてください。

 

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参考文献:

厚生労働省「発達障害者支援について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188530.html

 

日本精神神経学会「自閉スペクトラム症の理解」https://www.jspn.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=228

 

DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版)

 

発達障害情報・支援センター

https://www.rehab.go.jp/ddis/

 

NHK福祉ポータル ハートネット

https://www.nhk.or.jp/heart-net/

 

監修者:

新宿ペリカンこころクリニック

院長 佐々木 裕人

資格等:精神保健指定医、精神科指導医・専門医

所属学会:日本精神神経学会