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夜驚症は大人にも起こる?原因と対策を精神科医が解説

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夜驚症は大人にも起こる?原因と対策を精神科医が解説

はじめに

夜中に突然叫び声を上げたり、混乱した様子で飛び起きる――そうしたエピソードが続くと、「もしかして自分は異常なのでは?」と不安になる方も多いでしょう。

夜驚症は、主に子どもに見られる睡眠障害として知られていますが、実は大人にも起こることがあります。成人の夜驚症は発症頻度が低いため見落とされがちであり、正しい理解と対応が必要です。

この記事では、精神科医の視点から、大人の夜驚症の原因や症状、他の睡眠障害との違い、治療・対処法について詳しく解説します。

 

夜驚症とは?

夜驚症(Sleep Terror/夜驚)は、ノンレム睡眠時に起こるパラソムニア(睡眠時随伴症)の一種です。発症者は夜中に突然叫んだり、怯えた様子で目を見開いたりしますが、本人は完全に目覚めていないため、その記憶がないことが多いのが特徴です。

子どもに多く見られ、成長とともに自然に治ることも多い一方で、大人に発症するケースでは、ストレスや精神的負荷が背景にあることもあります。また、生活リズムの乱れや精神疾患との関係も指摘されています。

大人の夜驚症は、周囲の理解が得にくく、「怖がられてしまう」「迷惑をかけてしまうのでは」と悩む方も少なくありません。したがって、正確な情報に基づいて、冷静に対応することが求められます。

 

大人の夜驚症の主な原因

成人における夜驚症の原因は多岐にわたりますが、主に以下のような要因が関係していると考えられています。

  • 慢性的なストレスや不安:仕事や人間関係の悩み、家族の問題など。
  • 過労・睡眠不足:深い睡眠への移行が不安定になり、覚醒反応が生じやすくなる。
  • アルコールやカフェインの過剰摂取:睡眠の質を低下させ、夜驚症を引き起こすことがある。
  • PTSD(心的外傷後ストレス障害):過去のトラウマが睡眠中に再体験されることで、夜驚症様の症状が出現する。
  • 薬剤の影響:抗うつ薬、向精神薬、一部の睡眠薬の影響によるケースも報告されています。

これらの因子が複雑に絡み合い、脳の覚醒メカニズムに誤作動を引き起こすことで、夜驚症が発症すると考えられています。

 

症状の具体例と日常生活への影響

夜驚症の症状は、発作的で劇的なものであることが多く、以下のような特徴があります。

  • 突然の叫び声やうなり声
  • 恐怖に満ちた表情で起き上がる
  • 意識がもうろうとしており、周囲の声かけに反応しない
  • 数分後には自然に再入眠し、翌朝は本人が記憶していない

これらの症状が頻繁に起こると、同居家族やパートナーにとっても大きなストレスとなります。また、本人が「また起こしたらどうしよう」と不安を募らせることで、さらに睡眠の質が低下し、悪循環に陥ることもあります。

 

他の睡眠障害との違い

夜驚症は、以下のような他の睡眠障害と混同されやすいため、見極めが重要です。

  • 悪夢(ナイトメア):悪夢はレム睡眠中に起こり、恐怖を伴う夢を明確に記憶しています。夜驚症とは異なり、本人が目覚めた状態で症状を訴えることが多いです。

  • 睡眠時驚愕症:夜驚症と症状が似ているものの、睡眠周期との関係や覚醒の程度に違いがあります。

  • てんかん:夜間発作として出現する場合があり、脳波検査(脳波モニタリング)によって明確な診断が必要です。

誤診を避けるためにも、睡眠専門医や精神科医による評価が重要です。

 

大人の夜驚症の治療・対処法

生活習慣の見直し

  • 規則正しい睡眠習慣:毎日同じ時間に就寝・起床することで、睡眠の質を安定させます。
  • 刺激物を避ける:寝る前のアルコール、カフェイン、スマートフォンの使用は避けましょう。
  • リラックス習慣の導入:就寝前の深呼吸やストレッチ、アロマ、音楽などが効果的です。

精神的ストレスへのアプローチ

  • カウンセリング:心理的背景が強い場合、臨床心理士や公認心理師によるサポートが有効です。
  • 認知行動療法(CBT):夜驚症の発作を引き起こす思考パターンや習慣を修正する心理療法です。

薬物療法(必要な場合)

  • 必要に応じて、抗不安薬や短期的な睡眠導入剤を処方することもあります。ただし、長期使用は依存のリスクがあるため、医師の指導のもと適切に服用しましょう。

医療機関の受診を検討

  • 月に複数回の発作がある、日常生活に支障をきたしている、他の疾患の疑いがあるなどの場合は、精神科または睡眠外来への相談をおすすめします。

 

医師の立場からのアドバイス

大人の夜驚症は、一般にはあまり知られていないために過小評価されやすく、長年悩み続けている方も少なくありません。しかし、正しい診断と対応を受けることで、症状を軽減し、日常生活の質を向上させることは十分に可能です。

「ただの疲れ」「気のせい」として放置せず、自分の心と体の声に耳を傾け、必要なサポートを受けてください。精神科医として、安心して治療と向き合える環境づくりをサポートいたします。

 

まとめ:大人の夜驚症も放置せずに相談を

夜驚症は子どもだけのものではなく、大人にも起こりうる睡眠障害です。原因はストレスや生活習慣など様々ですが、正しい知識と対策により十分に改善が期待できます。

 

夜間の異常行動が繰り返されるようであれば、自己判断せず、早めに専門医へご相談ください。放置せず、正しい一歩を踏み出すことが大切です。

 

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参考文献:

MSDマニュアル家庭版「夜驚症」
https://www.msdmanuals.com/ja-jp

UpToDate「Disorders of arousal: Night terrors and sleepwalking」
https://www.uptodate.com

日本睡眠学会 睡眠障害診療ガイドライン
https://jssr.jp

精神疾患の分類と診断の手引(DSM-5)
https://www.americanpsychiatricassociation.org

厚生労働省「e-ヘルスネット」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/

 

監修者:

新宿ペリカンこころクリニック

院長 佐々木 裕人

資格等:精神保健指定医、精神科指導医・専門医

所属学会:日本精神神経学会