暑くなり、寝苦しい季節になりました。寝つきが悪いと熟睡できず、睡眠の質が低下します。しかも、夏はよりが短いため、つい早起き・夜更かしにもなりがりです。睡眠不足が続くと夏バテにも繋がってしまいます。夏こそ、快眠を心掛けましょう。
質の良い睡眠とは?
下記の項目に該当するのが、質の良い睡眠です。該当しない状態が長く続く場合は、医師に相談しましょう。
◎布団に入って短時間で短時間で眠れる:一般的に、布団に入ってから30分以内に寝つくことができればOKです。それ以上に時間が掛かる場合には、入眠障害の疑いも出てきます。
◎途中で覚醒することが少ない:夜中に何度も目が覚める中途覚醒は、加齢に伴い増える症状です。他にも、ストレス、運動不足、不規則な生活なども原因として考えられます。
◎朝スッキリと目覚められるかどうか:毎朝、ほぼ同じ時刻にスッキリと目覚められたら、質の良い睡眠です。心身が休息から活動の状態にスムーズに切り替わります。
◎よく眠れた感覚があるかどうか:睡眠時間が短くても熟眠感があえば質の良い睡眠です。逆に、長時間寝たにも関わらず、起床時に疲れやだるさが残っている時は、熟眠障害の可能性も考えらえます。
◎日中、良好な状態で過ごせるかどうか:日中、頭がボーッとしたり倦怠感を覚えたりすると、活動量が低下し、生活の質に影響することもあります。
睡眠が健康にもたらす効果とは?
私たちの眠りには深い眠りを含むノンレム睡眠とレム睡眠があり、睡眠中はこれを交互に90分前後の周期で4~6回繰り返しています。
✓成長ホルモンを分泌する:タンパク質の合成や損傷した細胞の修復・再生を促す働きがある成長ホルモンは、入眠直後の深いノンレム睡眠時に多く分泌されます。
✓免疫機能を維持する:免疫はホルモンと連動しています。そのため、睡眠不足などでホルモンバランスが崩れる免疫システムは成長に機能しなくなります。
✓自律神経の働きを整える:副交感神経が優位になると、身体がリラックスして入眠しやすくなります。質の良い睡眠は体内時計や自律神経の働きを整えてくれます。
✓疲労回復を促す:脳(心)の疲労は主にノンレム睡眠時に、身体の疲労はノンレム睡眠とレム睡眠時、特にレム睡眠時に回復すると言われています。
✓記憶を整理して脳に定着させる:入眠直後のノンレム睡眠時に新しい記憶が定着します。レム睡眠時にも記憶した情報や、嫌な記憶や感情の整理などが行われていると考えられています。
✓脳の老廃物を除去する:脳の老廃物は、脳内をめぐる脳脊髄液によって細胞外に洗い流されます。この洗い流しは、ノンレム睡眠時に盛んに行われると考えられています。
✓肥満を予防する:睡眠不足になると食欲を抑制するホルモン(レプチン)が減り、食欲を増進させるためのホルモン(グレリン)が増加するため、食べ過ぎになることがあります。
✓血圧を下げる:睡眠時には副交感神経が優位になって血圧が低下します。しかし、睡眠不足になると身体が休まらないので交感神経が活発化、血圧が上昇して、高血圧になりやすくなります。
夏のおすすめ睡眠対策
睡眠対策は就寝時だけでなく、朝から取り組むことが大切です。但し、猛暑の時は熱中症対策を最優先されて下さい。以下の項目(☆)は、朝~日中に掛けて心がけて頂きたい内容になります。
☆ 朝の光を浴びる:朝の光を浴びることで身体のリズムが調節されます。睡眠を維持するメラトニンというホルモンの分泌が抑制され、覚醒が促されます。体内時計もリセットされます。
☆ 朝食をとる:朝、トリプトファンというアミノ酸をとると、セロトニンという物質を経て、夜にメラトニンに変わります。トリプトファンは食事からしか摂ることができません。トリプトファンは、肉や魚、ご飯、大豆、乳製品、穀物などに多く含まれています。
☆よく噛んで食べる:噛むという行為では、側頭筋や咬筋などの咀嚼筋を動かします。するとその刺激が最も太い神経の三叉神経を介して脳に伝わり、セロトニンの分泌を促します。
☆ 身体を冷やし過ぎない:身体の中心部の体温(深部体温)は、日中は高く夜間は低くなります。体温の高低差が大きいほど深い眠りに繋がります。日中に身体を冷やしすぎると、高低差が少なくなり、寝つきが悪くなります。
☆ 涼しい時間帯に運動;日中、積極的に身体を動かして深部体温を上げておけば、夜間の深部体温yとの差が大きくなります。但し、今の暑い時期に運動をする時は、涼しい場所や時間帯を選んで下さい。
☆ 昼寝は15時までに:体内時計の影響で、日中は14時頃に強い眠気を覚えます。夜の睡眠に影響を与えないために、昼寝は遅くとも15時位までに20分以内に留めるようにしましょう。
以下の項目(★)は、夕方~就寝時に掛けて心がけて頂きたい内容になります。
★ 夕食は寝る3時間位前までに:就寝前の食事は中途覚醒を増やすことが報告されています。また、消化が悪いものを食べると、翌朝朝食を欠食し、身体のリズムを乱す要因にもなります。食事が遅くなってしまう時には、脂が少なく消化の良いものを少量に留めておきましょう。
★ 寝る前に水分補給を:睡眠中は、発汗によって、深部体温が低下し、水分も失われます。体内の水分が不足し、のどや口が乾燥すると、良い睡眠の妨げになります。寝る前にコップ1杯の水分補給をお勧めします。
★ エアコンを上手に活用:熱帯夜にはエアコンの設定温度を28℃程度にして、寝る1~2時間前からタイマーで朝4時位までつけたままにします。何故なら覚醒には明け方、体温が上がることが重要だからです。
★ 寝具や寝巻は通気性の良いものを:寝具や寝巻は通気性を重視し、麻などの素材を選んでみましょう。睡眠中は何度も寝返りをうつので、寝具は身体を締め付けないデザインのものがお勧めです。
★入浴は寝る1時間半前に:夏は、遅くても就寝1時間半ほど前にぬるめの湯に入り、深部体温を上げ過ぎないようにします。入浴後は、深部体温の低下を妨げないように、室温や寝具などを工夫して涼しく過ごしましょう。
★アルコールの摂り過ぎに注意:アルコールは心身の緊張をほぐすので、就寝前に飲むと、確かに入眠を早めます。しかし、分解されると眠りが浅くなり、利尿作用も加わって、結局夜中に何度も目が覚めてしまうので要注意です。
★ 遮光カーテンで外の光をシャットアウト:夏は日の出が早く、睡眠時間も短くなりがちです。もう少し寝たいという時は、遮光カーテンで光をシャットアウトします。真っ暗が苦手な人は、フットライトなどで明るさを調整されると良いでしょう。
このコラムを読まれまして、ご自分の現在のご状況として、
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Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)
参考引用文献:『Life 2025年7月号』