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回避性パーソナリティ障害って何ですか?

回避性パーソナリティ障害の特徴は、不安が強く、非常に傷つきやすいパーソナリティであることです。彼らは、人からどう思われているのかといった不安が強く、「自分が人に受け入れられるかどうか」に対してきわめて敏感で、「確実に受け入れられる」と確信できない限り、その場所に行こうとしません。このように「回避」とは、文字通り「避ける」ことであり、自分が受け入れられない人・場所・状況や、傷ついたりすることを避け、自尊心が傷つく場面を避けます。

 

 

「人が自分をどう評価しているか」「自分にどう対応してくれるか」といった不安が強いので、周りの環境や対人ストレスにはとれも敏感です。このタイプの人たちは精神的にとても傷つきやすいので、出来れば人の中に出たくないのですが、出ていったとしても、何か失敗をしてしまうのではないか、嫌われているのではないか、変なことを言ってバカにされるのではないかと、いつもびくびくしています。

 

 

そして、実際に困難にぶつかったりすると「自分はダメだ」と自己卑下してしまいます。ちょっとしたからかいなどもいじめと受け取って、不登校や出社拒否に陥ったりします。自己卑下は自己愛の防衛でもあります。自己愛が傷つきたくないからこそ、「回避」するのです。

 

 

自己愛性パーソナリティ障害の場合は、自己愛が傷つけられると引きこもりますが、回避性パーソナリティ障害の場合は自信がないので、最初から傷つきやすそうな場は回避してしまいます。

★回避性パーソナリティ障害の診断基準(DSM)★

 

社会的制止、不完全、及び否定的評価に対する過敏性の広範な様式で、成人期早期までに始まり、種々の状況で明らかになります。以下の7つの基準の内、4つ以上が当てはまります。

 

□① 人から批判、否認、拒絶されるのを恐れて、仕事で重要な人と会わねばならない機会を避けてしまう。

 

□②「好かれている」と確信できる人としか、つき合おうとしない。

 

□③ 恥をかくことを恐れて、親密な相手に対しても遠慮してしまう。

 

□④ 人が集まっているような状況では拒絶されないかと、そればかり考えてしまう。

 

□⑤「人と上手く付き合えない」と思っているため、新しい対人関係が作れない。

 

□⑥「自分は社会的に上手くやっていけない」「自分にはいいところがない」等と思っている。

 

□⑦ 新しいことを始めたり、リスクを冒すようなことに対して、異常なほど引っ込み思案である。

 

 

……さて、この回避性パーソナリティ障害が表面化するのはどのような時でしょうか? 先述のように、精神的に未成熟ですから、「社会」と言う大人の場に対しても、非常に脆弱です。入社や入学、人間関係のトラブルといったストレスをきっかけに、不登校や出社拒否、引きこもりになったりうつ病に罹患されることも少なくありません。不安症の中でも、特に社交不安症全般性不安障害を発症される方も多く見られます。

 

 

一方、回避性パーソナリティ障害は、パーソナリティ障害の中では比較的治りやすい方であるとも言われています。若ければ若いほど改善しやすく、25歳を過ぎるとやや難しくなります。回避性パーソナリティ障害の一般人口における有病率は、0.5~1%とされ、精神科・心療内科に通院されている患者様の10~25%が該当しますが、大部分は、うつ状態や不安症が受診の理由となっている方なのです。

 

 

回避性パーソナリティ障害の治療として、まず投薬治療(薬物療法)により、人への怯えを緩和させることが行われます。しかし、薬物療法だけでは不十分なことも多く、SST(社会技能訓練)やアサーショントレーニング、認知行動療法(特に行動療法等によって、ご本人自身が自分の抱える問題の中核、つまり「保護されていなければ安心できない」という点に気がつくことが肝心です。そして「傷つきやすさから、どう脱して強くなるか」という問題に焦点を徐々に絞っていきます。

 

 

家族にできることとしては、回避性パーソナリティ障害の発症要因として、親(特に母親)の過保護がこの病理と深く結びついていることを、まず知って頂くことです。そして、過保護をやめて「本人の強さをどう築きあげて自立させるか」という点で、治療者に協力していくことが求められてくることでしょう。

このコラムを読まれまして、ご自分の現在のご状況として、

気になる点がありました方や、興味・関心を抱かれた方は、

どうぞ当院まで、お気軽にお問い合わせください。

 

 

当院では、

うつ病不安症、適応障害、躁うつ病(双極性障害)、

心身症、ストレス関連疾病、睡眠障害(不眠症)、

大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症)、

パニック障害、自律神経失調症、冷え症、摂食障害、

月経前症候群、更年期障害、統合失調症、強迫症、

過敏性腸症候群、境界性パーソナリティ障害など、

皆様の抱えるこころのお悩みに対して、

心身両面からの治療とサポートを行っております。

 

 

また当院では、診察と一緒に、専門の心理士(臨床心理士・公認心理師)資格を持ったカウンセラーによるカウンセリング(心理療法)も行っております。カウンセリングをご希望される患者様は、診察時に医師にご相談下さい。

 

 

Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)

参考引用文献:町沢静夫著『図解 大切な人の心を守るためのこころの健康事典