「どうして自分が仕事を休むことになったのか?」を知ることは、とても大切なことです。何故なら、再休職を防ぐためにそのプロセスが重要な役割を果たします。休職した理由をご自分なりにきちんと整理し、理解できていないと、対策が立てられないからです。そこで「休職理由の分析」が重要なのです。この「分析」が十分に出来ていなければ、再休職予防のための「対策」も不十分なものになります。出来る限り詳しく、正確な内容の「分析」が必要なのです。
そこで、「自己分析レポート」を作成してみことをお勧めします。以下のような手順でレポートを書いていかれると、「どうして自分が仕事を休むことになったのか」を分析できるようになってくるのです。
① 休職に至るまでの「症状の変化」を書き出してみる
最初にどのような症状が起こり、その後どのように変化して休職に至ったのかを思い出し、書き出していきます。
初発症状の段階では休職に至っていなかったかもしれませんが、出来るだけ最初の症状まで遡ることが重要です。何故なら、その後に症状の再燃がある場合には、最初の症状と似たような症状が出て、似たような経緯で症状が悪化してくる場合が多いからです。中には、学生時代にまで遡る場合もあります。そのような場合、病気の始まりの時期がかなり以前だということが分かり、このような経緯が分かると診断の変更に繋がることもあります。
これまでの経緯をたどることで、一連の病気だということが分かります。患者様ご本人がそのことに気づいていなければ、当然主治医にもそのことを伝えられません。結果として正しい診断となっていないことがあります。診断が間違っているために症状の再発を何度も繰り返してしまっているというケースも少なくはないのです。
② 病状の変化が起こった時期の「環境の変化」を思い出す
環境の変化をきっかけとして症状が出てきたり、悪化したりすることがよくあります。そこで、過去に症状が変化した時期にどのような環境の変化があったのかを思い出し、書き留めます。それによって症状が影響を受けるパターンを掴み、自分にとって危険な状況を知ることもできるのです。
仕事では「残業が増える」などの業務負荷の変化や、職場の人間関係の変化がよくみられます。また、家庭での悩みごとが影響している場合もあります。
一方、職場や家庭での悩みが余りなくても病状が変化することもあります。例えば、季節、すなわち気温や気圧などの変化が関係しているかもしれません。昔から「春先、秋口には体調が乱れる」といった表現もあるように、季節などの影響も考えていきましょう。
③ 環境の変化に反応した「自分の要因」を考える
うつの症状が出てくる場合、様々な要因がありますが、環境の変化はあくまで「外因」です。自分を取り巻く外側の要因ということになります。それに対して、自分自身にある要因を「内因」といいます。内因と外因はセットになっています。
例えば、苦手な上司がいる場合はその上司が「外因」であり、苦手だと感じていることが「内因」です。その場合、「どうして苦手と感じるのか」を考えていくと、解決の糸口が見えてくることがあります。現在のことだけでなく、「いつから苦手になったのか」というように、過去に遡っていくことも大事です。きっと苦手の「原点」となったような経験が見るかることでしょう。それを自己分析レポートに書きます。
このように、自己分析レポートを書くことは、自分自身の対処する課題を知ることでもあります。病気の再発を防ぐ対策を立てるためには、そのようなプロセスが必要です。もちろん、職場にも様々な対策を求めることになりますが、職場側で出来ることには限界があります。自分で自分のことを知り、対策を取れるようになっておくと、より安心です。
皆様もぜひ自己分析レポートを書いてみて下さい。それはきっと復職後の行動指針になるはずです。また、自己分析は、働くことだけでなく、人生全体を見直す機会にもなることでしょう。
当院では、リワーク(復職支援)プログラムを実施しております。そこで扱う内容は、きっとご自身の振り返りや、自己分析に役立ってくれるはずです。一人で悩まず、どうか気軽に当院までご相談下さい。
Presented by. 医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)
監修 佐々木裕人(精神保健指定医・精神科専門医・内科医)
★参考・引用文献:五十嵐良雄著『うつの人のリワークガイド』(法研)
★参考HP:『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き』(厚生労働省)