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医師が解説! 休職中、最初に取り組むことは何でしょうか?

患者様によっては、休職して治療を受け、短時間で回復をされていく人もいますが、誰もがすぐによくなっていくわけではありません。回復には「個人差」があります。中には、働けなくなってしまったことに対して、罪悪感や自己不全感などを持ち、休職前よりも気分が落ち込んでしまうという人もいます。

 

 

……罪悪感を持たれると、「すぐにリワーク(復職支援)プログラムを受けて、復職を目指さなければ!」というようについ焦ってしまいがちです。しかし、うつの症状がある時には、午前中の気分は悪く、夜になって気分が多少良くなってくるという日内変動がしばしば見られます。これが職場に行けなくなる理由の一つでもあります。気分や体調がまだ整わないのであれば、それらを回復させるのが先決です

 

患者様の症状が和らいできたら、次は、元気に働いていた頃の規則正しい生活リズムを取り戻すことを目標とします一言で言うと、早寝早起き+快眠+快食です。これが出来てくればリワークプログラムにも元気に参加できるようになりますが、これは口で言うほど簡単なことではありません。

 

リワークプログラムを始める前に、まずは症状を和らげること、それから早寝早起き+快眠+快食といった生活リズムを整えることは、土台(基礎・ベース)を整えることに繋がりますので、欠かせない要素なのです。

不眠や過眠な睡眠障害に対処しましょう

①不眠への対応

生活リズムを整えるためには早寝が良いのですが、休職中の患者様は、仕事による時間の制約がないため、本来はが早寝が可能なはずです。患者様ご本人が「寝よう」と思えば、横になることはできます。ただ、眠りたくても寝つきが悪い場合があります。そのような時には寝つきが良くなるタイプの睡眠導入薬が処方されることがあります。

 

薬を使うことによって寝つきが良くなり、睡眠が安定すれば良いのですが、中には寝つきは良くなっても、その後中途覚醒することがあります。夜中に目が覚めてしまうのです。中途覚醒が一晩に何度も起きる場合もあれば、一度中途覚醒をした後に眠れなくなり、そのまま朝になってしまうこともあります。これを「再入眠困難」と呼びます。こうなると、昼間に眠くなって十分に活動が出来なくなります。そのような場合には、睡眠薬の種類の調整が図られることがあります。

 

また、朝方に目覚めて眠れないタイプの不眠もあります。これは早朝覚醒と言い、うつの症状がある人に比較的多く見られます。ここでいう「早朝」とは、まだ陽が昇る前の、真っ暗な内に目が覚めてしまうのです。「まだ起きるには早いから」と思って、もう一度眠ろうとしても眠れず、布団の中で色々と考え込んでしまいます。起き上がる時間になっても疲れが取れず、億劫感も強くまります。そのような朝は、気分もとりわけ落込みます。その結果、職場に行けなくなってしまうというのが、典型的なタイプのうつと考えてよいでしょう。

 

この場合には、抗うつ薬などの治療薬の効果が出て、症状が軽くなってくれるのを待つ必要があります。多くの場合、回復に伴って症状はいずれ消えていきます。

②過眠への対応

過眠は眠り過ぎてしまう状態です。これもうつの人にしばしば見られます。過眠はなかなか厄介な症状です不眠に対する薬には様々な種類がありますが、うつの人の過眠に対して安全に使用できる薬はありません。理論的には、脳を活性化する薬剤があれば眠気を減らせますが、依存や離脱症状などのデメリットの方が遥かに大きいので、そのような薬は使えません。過眠への対応は、日中の活動を見直しながら生活リズムを調整していくことが中心になります。

 

繰り返しになりますが、過眠はとても厄介な症状であり、過眠の治療では薬剤は使用せず、睡眠覚醒リズムを正常に戻すための指導が重要になります。

 

③睡眠覚醒リズムへの対応

人間の睡眠覚醒リズムは、脳がコントロールしています。体内時計などとも呼ばれ、脳の中に時計があるようなイメージです。その時計に「眠る時間」と「起きる時間」がセットされているようなものと考えられます。実際、そのような働きに関連する遺伝子も確認されています。

 

しかし、脳の中の時計では、個人差はあるものの、多くの人が、1日が24時間よりも少し長い時間(諸説ありますが、24~25時間の間です)でセットされています。そのままでは、脳の睡眠覚醒リズムと、1日24時間のリズムに時差が生じてしまいます。毎日少しずつ、眠る時間や起きる時間が後ろにずれていきます。これを、睡眠位相の後退と言います。後退が続くと、時として昼夜逆転現象が起きてしまうこともあります。

 

人はそうならないように、毎日少しずつリズムを前倒しにして生活をしています。そして、その調整に日光が重要な役割を果たしていることはよく知られています。朝、目を覚ました時にカーテンを開けて日光を浴びることで、目から入った日光が脳へ刺激を送り、しっかりと脳を覚醒させられる、と考えられているのです。

 

また、リズムの前倒しには、学校や職場などに行って日中活動する「社会的な活動」も重要だと言われています。「学校があるから」「仕事があるから」という理由で朝起きることが、社会的手がかりとなり、それも日光と同様に、身体のリズムを整えることに繋がると考えられているのです。

 

休職中であることに加えて、先述のようにうつの症状によって生活リズムも乱れやすくなります。だからこそ、一定の時間に就寝・起床することを目指し、規則正しい生活リズムを整えていくことが重要になるのです。

 

まずは、ご自分の睡眠時間、起床時間・就寝時間をしっかりと確認しましょう。ご自分で意識されていくこと、主治医に現在の睡眠の状態を伝えることは、非常に大切であることを再度認識して頂けましたら幸いです。

 

 

参考引用文献:五十嵐良雄著『うつの人のリワークガイド』(法研)

参考HP:眠りのメカニズム(労省・e-ヘルスネット)

 

 

Presented by. 新宿ペリカンこころクリニック(心療内科・精神科)

 

監修 佐々木裕人(精神保健指定医・精神科専門医)