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レム睡眠行動障害を放置するとどうなる?原因とリスクを精神科専門医が解説

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レム睡眠行動障害を放置するとどうなる?原因とリスクを精神科専門医が解説

レム睡眠行動障害を放置するとどうなる?精神科専門医が解説する原因・リスク・対処法

はじめに

「夜中に突然叫んだり、暴れるような行動をとる」

 

これは単なる寝相の悪さではなく、「レム睡眠行動障害(RBD:REM Sleep Behavior Disorder)」という病気の可能性があります。

この疾患は、夢の内容を現実の行動として再現してしまうという特徴があり、放置すると将来的に神経疾患へと繋がるリスクもあるため、注意が必要です。

 

本ページでは、レム睡眠行動障害の原因や症状、治療法、そして早期発見・対応の重要性について、精神科医の視点から分かりやすく解説します。

 

レム睡眠行動障害とは?

私たちの睡眠は、大きく分けて「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」が交互に繰り返される構造になっています。レム睡眠中は主に夢を見ている状態ですが、通常は脳が筋肉の動きを抑える仕組みにより、体はほとんど動かなくなります。

 

ところが、レム睡眠行動障害ではこの筋抑制が機能せず、夢の中の出来事をそのまま身体の動きとして表出してしまいます。つまり、脳は夢を見ている状態でありながら、体が実際にその夢に「反応」してしまうのです。

 

具体的な症状:

  • 睡眠中に突然叫んだり、大声をあげる
  • 手足を大きく動かす、または暴れるような動作をとる
  • 夢の中で誰かと格闘しているような身振りが出る
  • 無意識のうちにベッドパートナーを殴る・蹴るといった行為をしてしまう

 

これらの行動は、本人自身にはほとんど記憶がなく、自覚もないことが多いため、最初に異変に気づくのは同居する家族やパートナーであることが一般的です。

 

原因:なぜ起こるのか?

レム睡眠行動障害の発症メカニズムは全てが解明されているわけではありませんが、近年では神経変性疾患との関連性が強く示唆されています。

 

主な要因:

  • パーキンソン病やレビー小体型認知症の前駆症状として現れるケース
  • 抗うつ薬・向精神薬の副作用による影響
  • 過度なアルコール摂取やアルコールの離脱症状
  • 強いストレスや脳外傷などの急性要因
  • 特発性(明確な原因が特定できないもの)

 

この障害は中高年の男性に多く見られ、特に50歳以降での発症が増加傾向にあります。

 

放置するとどうなる?考えられるリスク

1. 自分や周囲の人を傷つける危険性

夢の内容に反応して手足を振り回したり暴れることで、一緒に寝ている家族やパートナーを誤って傷つけてしまうケースがあります。また、ベッドからの転落やぶつけ事故による骨折・打撲など、自身がケガを負うことも少なくありません。

 

2. 精神的ストレス・睡眠の質の低下

自身で症状に気づいた場合、「自分の精神状態に問題があるのでは」と不安を抱くようになり、眠ることへの恐怖や警戒心が生じることがあります。こうした心理的な負荷により睡眠の質が下がり、うつ症状や不安障害に繋がる可能性も否定できません。

 

3. 神経変性疾患への移行リスク

最も深刻なリスクとして、RBDはレビー小体型認知症やパーキンソン病などの神経変性疾患の前兆である場合があります。近年の研究では、レム睡眠行動障害を有する人のおよそ50〜80%が、数年以内に神経変性疾患を発症すると報告されており、早期の診断と対応が非常に重要です。

 

診断と検査方法

1. 問診

症状が起こる頻度や内容、睡眠中のケガの有無、現在服用している薬剤の確認などを丁寧に行います。また、本人が気づいていない行動も多いため、同居家族やパートナーからの情報提供が非常に重要となります。

 

2. 睡眠ポリグラフ検査(PSG)

医療機関では、脳波・眼球運動・筋電図などを一晩かけて記録する「終夜睡眠ポリグラフ検査」が行われます。これにより、レム睡眠中の筋活動が抑制されていないか、異常な運動が起きているかを客観的に確認します。

 

治療法と対策

1. 薬物療法

  • クロナゼパム(ベンゾジアゼピン系薬剤)

レム睡眠中の過剰な筋活動を抑え、症状を和らげる効果があります。

 

  • メラトニン製剤

比較的副作用が少なく、高齢者にも安全性の高い選択肢として用いられます。

 

2. 環境調整

  • ベッドの周囲にクッションやマットを敷き、転倒や打撲を防ぐ
  • 鋭利な家具やガラス製品は寝室から撤去
  • 状況に応じてパートナーと別室で寝ることを検討する

 

3. 生活習慣の見直し

  • 規則的な睡眠リズムを確保する
  • アルコール・喫煙を控える
  • 日中のストレスを適切に管理する

 

医師として伝えたいこと:早期発見・早期対応が鍵

レム睡眠行動障害は、単なる「寝相の悪さ」や「夢見の激しさ」として見過ごされがちですが、その背後には重大な神経疾患の兆候が隠れている場合もあります。実際、この障害が数年後に認知症やパーキンソン病などの診断に繋がることもあるため、早期対応が極めて重要です。

 

「夜間に奇妙な行動をとっているかもしれない」と感じたら、恥ずかしがることなく、まずは専門医(精神科・神経内科・睡眠外来など)に相談してみてください。

 

まとめ:見逃さず、正しく向き合うことが大切

レム睡眠行動障害は、単なる夢見の激しさではありません。睡眠の異常が神経の異変を教えてくれる重要なサインであることも多く、放置することのリスクは決して小さくありません。

夜中に大きな声を出す、暴れるなどの症状がある方は、神経内科や睡眠専門外来、精神科での受診をお勧めします。早期対応が、将来の健康を守る大きな一歩となります。

 

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参考文献:

Postuma RB et al. “Risk of neurodegeneration in idiopathic REM sleep behavior disorder: A systematic review and meta-analysis.” JAMA Neurology.
https://jamanetwork.com/journals/jamaneurology/fullarticle/2685350

日本睡眠学会「睡眠障害の分類と診断」
https://www.jssr.jp/

アメリカ睡眠医学会(AASM)公式サイト
https://aasm.org/

厚生労働省 e-ヘルスネット「睡眠と疾患」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-051.html

Mayo Clinic「REM sleep behavior disorder」
https://www.mayoclinic.org/

 

監修者:

新宿ペリカンこころクリニック

院長 佐々木 裕人

資格等:精神保健指定医、精神科指導医・専門医

所属学会:日本精神神経学会