新宿の心療内科・精神科・メンタルクリニック

フルニトラゼパムは本当に「やばい」のか?精神科医が正しく解説 新宿心療内科 新宿ペリカンこころクリニック【精神科・メンタルクリニック】 フルニトラゼパムは本当に「やばい」のか?精神科医が正しく解説 新宿心療内科 新宿ペリカンこころクリニック【精神科・メンタルクリニック】

フルニトラゼパムは本当に「やばい」のか?精神科医が正しく解説

HOME > 新着情報一覧 > フルニトラゼパムは本当に「やばい」のか?精神科医が正しく解説

フルニトラゼパムは本当に「やばい」のか?精神科医が正しく解説

はじめに

「フルニトラゼパムってやばい薬なの?」「依存性があるって本当?」

インターネットやSNSで「やばい睡眠薬」として話題に上がることもあるフルニトラゼパム(商品名:サイレース、ロヒプノール)ですが、医療現場では長年使用されてきた安全性の確立された薬でもあります。

この記事では、精神科医の視点から、フルニトラゼパムの作用や効果、副作用とそのリスク、誤解されがちな点、そして適正な使用方法について詳しく解説し、「やばい」と言われる理由の真相を探ります。

 

フルニトラゼパムとは?

フルニトラゼパムは、ベンゾジアゼピン系の睡眠導入薬で、強力な催眠・鎮静作用を持つ中〜長時間型の薬です。服用後30分~1時間程度で効果が現れ、作用時間は6〜8時間、場合によってはそれ以上持続します。

この薬は、以下のような症状に対して処方されることが多いです。

  • 慢性的な不眠症(入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒を含む)
  • 強い不安や緊張に伴う不眠
  • 精神疾患に伴う睡眠障害(うつ病や統合失調症など)

他の睡眠薬に比べて効果が強いため、通常は他剤で効果が不十分な場合に選択されることが多いです。

 

「やばい」と言われる背景には何があるのか?

フルニトラゼパムが「やばい」と言われる主な理由は、以下のような懸念や誤解がSNS等で拡散されたことにあります。

1. 強い催眠作用による健忘

服用後の記憶が一部曖昧になる「前向性健忘」が知られています。これは用量が多すぎたり、アルコールと一緒に摂取した場合に起きやすく、誤った使用方法によるものです。

2. 依存性・離脱症状

長期間の服用により、耐性や依存が生じる可能性があります。急な中止により不眠の再発や不安、けいれんなどが現れることもありますが、これは医師の管理のもとで徐々に減薬すれば回避可能です。

3. 海外での乱用例

海外、特に欧米ではフルニトラゼパムが犯罪目的(例:意識障害を誘発する薬物)に使われた過去があり、その影響で危険薬物のイメージが広がりました。ただし、日本では厳格に処方管理されており、医師の診察・処方が必須です。

 

フルニトラゼパムの副作用と注意点

強力な薬であるがゆえに、以下のような副作用が報告されています。

  • 翌朝の眠気やふらつき
  • 記憶の曖昧さ(健忘)
  • 倦怠感・頭重感
  • 注意力・集中力の低下
  • 運動機能低下による転倒リスク(特に高齢者)
  • 長期使用による依存や耐性の形成

 

使用上の注意点

  • アルコールと併用しない:作用が強まり、呼吸抑制や意識障害を起こすことがあります。
  • 高齢者は特に慎重に使用:転倒やせん妄のリスクがあるため、より低用量での処方が推奨されます。
  • 突然中止しない:長期使用後に急に止めると離脱症状が出るため、医師の指示で徐々に減薬します。

 

他の睡眠薬との比較

薬剤名

分類

作用時間

特徴

ハルシオン

超短時間型

2〜4時間

入眠に特化。健忘の報告あり

デパス

短時間型

6時間程度

抗不安作用もあり

フルニトラゼパム

中〜長時間型

6〜8時間以上

強力で安定した睡眠導入

ベルソムラ

非ベンゾ系

約7〜10時間

依存性が低く安全性が高い

このように、フルニトラゼパムは効果の強さにおいてはトップクラスですが、その分、副作用管理や慎重な使い方が求められます。

 

医師としての見解:恐れすぎず、過信せず

精神科外来でも、重度の不眠に悩む患者さんにとってフルニトラゼパムは有力な選択肢です。しかし、「強く効く=危険」という単純なイメージだけで判断してしまうのは適切ではありません。

薬を必要とする状態であれば、適切な薬剤を、適正な量で、正しいタイミングに使うことが重要です。

不安がある方は、必ず医師にご相談ください。一人ひとりの症状に合った使い方を一緒に考えることが、安心・安全な治療への第一歩です。

 

まとめ:フルニトラゼパムは「やばい薬」ではなく、管理下で安全に使える有効な薬

フルニトラゼパムは確かに強力な睡眠薬であり、依存や副作用への注意は必要ですが、「やばい薬」と決めつけるのは誤りです。医師の指導のもとで正しく使用すれば、不眠症に苦しむ方の生活の質を大きく向上させることができます。

必要以上に恐れることなく、適切な相談と管理のもとで服用することが大切です。睡眠に関する悩みがある方は、ぜひ一度専門の医療機関へご相談ください。

 

▶ 新宿ペリカンこころクリニックへの来院をご希望の方はこちら

 

参考文献:

厚生労働省:睡眠薬の適正使用 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000185698.html

 

日本睡眠学会:睡眠薬の使い方とやめ方

https://www.jssr.jp/data/pdf/tebiki_201306.pdf

 

MedlinePlus: Flunitrazepam

https://medlineplus.gov/druginfo/meds/a605038.html

 

WHO: International Drug Control – Flunitrazepam Overview https://www.who.int/controlled-substances/flunitrazepam/en/

 

医中誌Web:フルニトラゼパムに関する国内症例報告

 

監修者:

新宿ペリカンこころクリニック

院長 佐々木 裕人

資格等:精神保健指定医、精神科指導医・専門医

所属学会:日本精神神経学会