ヒステリー球とは?喉の違和感の原因と対処法を精神科医が解説
はじめに
「喉に何か詰まっているような気がする」「息苦しさや違和感があるのに、検査では異常がない」――そのような症状に悩まされたことはありませんか?
それは「ヒステリー球(咽喉頭異常感症)」と呼ばれる症状かもしれません。
この記事では、精神科医の立場からヒステリー球の症状、原因、治療法までをわかりやすく解説し、適切な対処法をご紹介します。
ヒステリー球とは?
ヒステリー球とは、明確な器質的異常(ポリープや腫瘍など)がないにもかかわらず、喉の異物感や違和感を強く感じる状態を指します。
医学的には「咽喉頭異常感症」や「咽頭球感」とも呼ばれ、内科や耳鼻咽喉科で検査しても原因が見つからないケースが多く、精神的な要因が関与していることが多いとされています。
代表的な症状には以下のようなものがあります。
- 喉に何かが引っかかっている感じ
- 息苦しさや圧迫感
- 飲み込みにくい感覚
- 声が出しにくい気がする
主な原因:ストレスと自律神経の乱れ
ヒステリー球は、強いストレスや不安状態にあるときに生じやすい症状のひとつです。
精神的な緊張が続くと、自律神経のバランスが崩れ、喉の筋肉が過度に緊張して異物感が現れると考えられています。実際、不安障害やうつ病の患者さんにこの症状がみられることもあります。
また、「検査で異常がないのに不調が続く」という状態が不安感を増幅させ、さらに症状を悪化させる悪循環に陥ることも少なくありません。
ヒステリー球の診断と鑑別
まずは耳鼻咽喉科や内科で、器質的な異常がないかを確認することが大切です。咽頭の腫瘍、逆流性食道炎、甲状腺疾患など、類似の症状を引き起こす疾患が除外されてはじめて、ヒステリー球と診断されます。
精神科・心療内科では、ストレスや心理的な背景を踏まえた問診を行い、必要に応じて不安障害やうつ病などの評価も行います。
ヒステリー球の対処法と治療
ヒステリー球は、適切な対応を行えば改善が期待できる症状です。以下のようなアプローチが有効です。
精神的アプローチ
- カウンセリングや認知行動療法(CBT)
- ストレスコーピング(ストレスとの付き合い方の指導)
- リラクゼーション法(深呼吸、瞑想など)
薬物療法
- 抗不安薬や抗うつ薬を短期間使用する場合もあります。
- 医師の指導のもとでの適切な服用が前提です。
生活習慣の見直し
- 睡眠をしっかりとる
- 食生活の改善
- 適度な運動
医師としてのアドバイス
ヒステリー球は、単なる気のせいではなく、心と体が密接に関わるれっきとした症状です。自律神経のバランスは、心理的な状態に大きく左右されるため、精神的ストレスや環境の変化が引き金になることが少なくありません。
そのため、「何科に行けばよいかわからない」と迷ってしまう方もいますが、まずは耳鼻咽喉科で器質的な問題を除外したうえで、精神科や心療内科の受診を検討するのが適切な流れです。
症状に対する不安が強いときほど、専門家の助言が安心につながります。ご自身を責めることなく、心身の状態を整える第一歩として、気軽に相談することが大切です。
ヒステリー球のような身体症状は、「気のせい」として片づけられてしまうこともありますが、実際にはつらい症状であり、日常生活に支障をきたすこともあります。
症状が長引いたり、強い不安や抑うつがある場合は、早めに専門医に相談することが大切です。心と体のつながりを理解し、適切な治療を受けることで、改善への道が開けます。
まとめ:ヒステリー球は心と体のSOSサイン
ヒステリー球は、体の異常ではなく、心と自律神経の乱れが原因で起こることの多い症状です。まずは心身の緊張をほぐし、必要であれば専門的なケアを受けることで、多くの方が改善を実感しています。
症状に不安を感じたら、ぜひ医師にご相談ください。正しい診断とサポートを受けることが、回復への第一歩です。
▶ 新宿ペリカンこころクリニックへの来院をご希望の方はこちら
参考文献:
日本心身医学会:心身症の診療ガイドライン
https://www.japmi.jp/
厚生労働省 e-ヘルスネット:ストレスと自律神経 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-035.html
医中誌Web:咽喉頭異常感症に関する国内研究
WHO: Mental Health and Stress-related Disorders.
https://www.who.int/
監修者:
新宿ペリカンこころクリニック
院長 佐々木 裕人
資格等:精神保健指定医、精神科指導医・専門医
所属学会:日本精神神経学会