パキシルで性格が変わる?副作用との関係と正しい理解を精神科医が解説
はじめに
パキシル(一般名:パロキセチン)は、うつ病や不安障害などの治療に広く用いられている選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の一種です。
「パキシルを飲んでから性格が変わった」「怒りっぽくなった」「感情が鈍くなった」などの声がネット上では見受けられます。これらの変化が本当に薬の影響なのか、不安になる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、精神科医の立場から「パキシルで性格が変わる」と感じる背景やその原因、副作用との関係、注意点、そして正しい服用のあり方について解説します。
パキシルとはどのような薬か?
パキシルはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の一種で、脳内のセロトニン濃度を高めることで、うつ状態や不安、パニック発作などの症状を改善します。
日本では以下のような疾患に対して処方されます。
- うつ病・うつ状態
- パニック障害
- 強迫性障害
- 社交不安障害
- 外傷後ストレス障害(PTSD)
比較的効果が強く、安定した治療実績がある反面、副作用も起きやすいため、服用量や中止方法には十分な注意が必要です。
「性格が変わる」とはどういうことか?
「性格が変わった」と感じるケースには、以下のようなパターンがあります。
1. 感情が鈍くなる
パキシルのようなSSRIには「感情の平坦化(emotional blunting)」と呼ばれる副作用が報告されています。これは、うつ症状の改善と引き換えに、喜びや悲しみといった感情の起伏が小さくなる現象です。
一部の患者さんは「うれしいことがあっても喜べない」「何となく無感動」といった変化を訴えることがあります。これを性格が変わったと感じることがあるのです。
2. 攻撃性・衝動性の変化
ごくまれに、パキシル服用中に怒りっぽくなったり、衝動的な行動が目立つようになったりする例もあります。これは薬剤の影響というよりも、回復期にありがちなエネルギーの回復と感情のアンバランスが要因となることがあります。
3. 本来の性格が表に出る
うつ状態や不安状態では、本来の性格が抑え込まれていることがあります。治療によって症状が改善すると、元々の明るさや活発さが戻り、周囲が「変わった」と感じることもあるでしょう。これは「改善による変化」であり、むしろポジティブな反応といえます。
パキシルの主な副作用と注意点
パキシルの代表的な副作用には以下のようなものがあります。
- 吐き気・胃のむかつき
- 眠気・不眠
- 頭痛
- 性機能障害(性欲減退など)
- 感情の鈍化
- 離脱症状(減薬・中止時の不安、不眠、めまいなど)
特に感情面の変化については、服用初期または増量時に感じることが多く、時間とともに慣れていくケースも少なくありません。
ただし、「日常生活に支障が出る」「性格変化が顕著でつらい」などの違和感を覚えた場合は、自己判断で中止せず、必ず医師に相談してください。
精神科医の視点:薬で性格が変わるのか?
精神科医の立場から申し上げると、「薬そのもので人格が変わってしまう」ことは基本的にありません。
ただし、脳内の神経伝達物質に作用する以上、感情や行動に変化が出る可能性はゼロではないのも事実です。
しかし、それらの変化は副作用や回復過程の一部であり、薬の影響で“人格そのもの”が変わるわけではありません。適切に服用し、必要に応じて医師が調整することで、バランスを取ることができます。
正しく服用すれば安心
パキシルに限らず、精神科の薬にはメリットとリスクが存在します。大切なのは、副作用ばかりにとらわれるのではなく、「薬を使ってどう回復を目指すか」を前向きに捉えることです。
以下のようなポイントを押さえましょう。
- 決められた用法・用量を守る
- 気になる副作用は我慢せず医師に伝える
- 無理に減薬・中止をせず、医師と相談しながら進める
まとめ:変化に気づいたら、まず医師に相談を
「性格が変わったかも」と感じるとき、薬の影響だけでなく、症状の回復や周囲の変化も影響している可能性があります。自己判断せず、気になることは遠慮なく主治医に相談することが、安心・安全な治療につながります。
薬はあくまで治療の手段のひとつ。副作用を過剰に恐れず、医師と二人三脚で治療に取り組むことが、回復への一番の近道です。
▶新宿ペリカンこころクリニックへの来院をご希望の方はこちら
参考文献:
厚生労働省 e-ヘルスネット|SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-053.html
Paroxetine: Drug Information (UpToDate)
https://www.uptodate.com/contents/paroxetine-drug-information
Montgomery SA, Baldwin DS. Emotional blunting: A new dimension of antidepressant side effects?
J Psychopharmacol. 2016;30(2):124-128.
医中誌Web|パロキセチンに関する副作用調査(国内研究)
監修者:
新宿ペリカンこころクリニック
院長 佐々木 裕人
資格等:精神保健指定医、精神科指導医・専門医
所属学会:日本精神神経学会



