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【医師監修】ためこみ症の治療に用いられる認知行動療法ってなんですか?

ためこみ症には、主に認知行動療法が用いられます。モノに対する見方や信念を、生活が送りやすいように適応させたり、新しい行動を学んだりしていきます。

 

ためこみ症の人で、モノの片づけや整理をする際に、集中して行うことが苦手な場合は、まず、他のモノが視野に入らないようにしてもらいます。例えば、モノに布をかぶせて、5分間だけでも片づけようとしてる部分に注意を集中する、という作業をやってもらったりします。

 

また、協力者がいれば、モノを預かってもらいます。モノの入手や整理、処分、保管のそれぞれに対しての考え方(認知)や行動を変えてもらい、モノを入手できなかったり特定のモノを手元に置いておかなくても不安に駆られることはない、ということを実際に体験してもらうのです。

 

具体的に言えば、「これが無くても大丈夫」ということを体験を通して理解するために、1日モノを預かってもらいます。そして湧き上がってくる感情や考えを記録にとっていきます。1時間おき、2時間おき…などと時間の感覚を延ばしていき、預かってもらっても、本人がイメージするような最悪なことは起こらないことを理解してもらうのです。

 

ためこみ症の人は、「これがなくなったら生きていけない」「大変なことが起きる」「二度と同じモノが手に入らない」等といった考えが浮かんできます。しかし、実際に記録をつけてもらうと、「大変なことは何も起こらない」と、客観的に見つめやすくなります。

 

最初の内は気になって仕方がない、という状態になりますが、その内に忘れたり、モノについて考えていない時間があったり、思い浮かべても忘れたり……といったことを繰り返しながら、心配していたことは起こらないということを体験していきます。そして、これまでとは異なる新しい行動をルーティン化していきます。これには、家族などの協力者の存在が不可欠です。

 

ただし、これらの方法を用いる場合は、本人が手放すことに同意していて、手放せない状態を改善したいという動機がなければ行えません。どんな治療法であれ、何より本人が今の状況を何とかしたいとおもわない限り、変わりくいことでしょう。この点はどのような治療や、医療機関であれども同様です。

 

不安を「なくす」のではなく「コントロール」する

 

「ためこみ症」の治療のゴールは、治すというよりも、コントロールすることにあります。

 

また、うつ病が併存している場合や、強迫症のこだわりやモノへのとらわれを軽減するために抗うつ剤が使われることもありますが、ためこみ症そのものには、薬はあまり有効ではありません。

 

ためこみ症の場合、「完治する」「症状をゼロにする」というのとは少し異なります。ためこみ症の場合、“不安”というものに対処しなければなりません。しかし、不安をゼロにすることは出来ませんし、むしろ不安をゼロにすることはとても危険です。

 

何故なら、人にとって不安が全くなくなってしまったら、道路の真ん中を歩いてしまっても平気、信号を無視しても平気ということになってしまいます。何らかの不安を抱くことで、私たちは自分の身を守ることが出来るのです。不安が無くなってしまったら、人は人として生活できなくなるかもしれません。そうではなく、どうやって不安と上手に付き合っていくか、どうコントロールしていくかということが大切です。

 

ある意味で、エクササイズを自分の生活に新たに取り入れることにも似ています。エクササイズを毎日やろうと決め手も、私たちは「今日は疲れたから」「最近は食事に気を付けているから」とエクササイズをサボる理由をつけることがあります。

 

エクササイズと同様に、モノを片付けることについても、サボらないように“習慣化”させることがポイントです。「使ったモノは元に戻す」「開けたら閉める」「落としたら拾う」「脱いだら掛ける」といったように、生活の中に片づけを取り入れていく練習をするのです。これらの行動を書いたメモを、自分の目につく場所に貼って、新しい行動を習慣化させていくことは、効果的な方法のひとつでしょう。

 

当院では、強迫症(強迫性障害をはじめ、
大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症含む)
うつ病、躁うつ病、不安症、適応障害、摂食障害、
パニック症、睡眠障害、自律神経失調症、心身症、
月経前症候群、統合失調症、社交不安症、
過敏性腸症候群、アルコール使用障害など、
皆様の抱えるこころのお悩みに対して、
心身両面からの治療とサポートを行っております。

 

このコラムを読まれまして、興味・関心を抱かれた方、
ご自分の現在のご状況として気になる点がありました方は、
どうぞ当院まで、お気軽にお問い合わせください。

 

Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)

引用参考文献:五十嵐透子著『片付けられないのは「ためこみ症」のせいだった!?