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【心療内科Q/A】「『低血糖症』について教えて下さい」

A.

医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)です。

 

 

車は、バッテリーを充電するだけでなく、ガソリンを入れなくては走れません。私たちの脳のバッテリーを「アミノ酸だとすると、ガソリンに当たるのが「ブドウ糖になるのです。

 

 

しかし、このガソリン(ブドウ糖)を入れている(摂取している)のにも関わらず、脳内が「ガス欠」を起こしているという不思議な現象が起きているのです。頭がボーッとしてだるい、会議や仕事中にすぐ眠くなる、集中力が続かなくてイライラする……。こんな症状は、脳に糖が足りなくなって、エネルギーが産出されない状態、即ち、低血糖症にあると言えるでしょう。

 

 

ここで、とある学会で報告された衝撃的なデータを一つご紹介しましょう。心療内科に何らかの精神症状を訴えて来院された300人中、何と296人が、糖負荷試験の結果、「低血糖症」と診断されたのです。糖負荷試験とは、75gのブドウ糖を患者様に飲んで頂いて、30分ごとに5時間まで、血糖値とインスリンの測定を行う血液検査です。患者様の食事を調べてみると、決して、糖質(炭水化物)を摂っていない訳ではありません。それどころかむしろ、ご飯やパン、お菓子、お酒など、糖質(炭水化物)に偏った食生活でした。

(※当院では「糖負荷試験」は現在実施しておりませんので、ご注意下さい)

 

 

このように、せっせと糖質を摂っているにも関わらず、脳では利用されず、それどころか「脳のブドウ糖不足」になっている……。一体これはどういうことなのでしょうか。

 

 

健康な人の脳は、エネルギー源であるブドウ糖を安定して供給しています。この安定してというのがポイントで、血液中のブドウ糖濃度である「血糖値」は、上がると、すい臓からインスリンが分泌されて下げようとし、逆に下がると、血糖値を上げようとする様々なホルモンが働いて、一定に保とうとします。

 

 

例えば、ランチに、ご飯やスイーツなど糖質を多く摂ると、血糖値は急激にグンッと上がります。そうなると、すい臓は急いで血糖値を下げようとして、大量にインスリンを分泌します。すると、血糖値は急降下。脳に糖分が行かなくなり、急激な眠気や集中力の低下、だるさや倦怠感等を感じることになります血糖値が下がると、脳へのブドウ糖の供給が足りなくなるわけですから、脳は「緊急事態!」と判断して、血糖値を上げる働きのある脳内伝達物質・アドレナリン及びノルアドレナリンを分泌します。人は、アドレナリンが分泌されると、イライラしたり怒りっぽくなったりします更に、ノルアドレナリンが分泌されると、不安感や抑うつ感が起こります。

 

 

それを解消しようと甘い物が欲しくなりますが、これが麻薬のようなもの…。甘い物を摂ると、一瞬セロトニンが増えるために、幸せな気分になれますが、すぐに消費されるので持続性がありません。またインスリンが分泌され、低血糖になり、イライラして………というサイクルを繰り返してしまうのです。

 

 

このように、糖質(炭水化物)は、一見「脳の栄養素」のように見えて、実は却って脳を疲れさせているのです。つまり、糖質(炭水化物)に偏った食生活で、脳へのブドウ糖供給が「不安定」になると、糖を摂っているのに利用されない、いくらガソリンを入れても頭が働かないという不思議な現象が起こるのです

 

 

なお、健康診断での血糖値が正常値だったから大丈夫!」と思っている方も、実は安心できません。何故なら、それは空腹時血糖と言って、食事を抜いた状態で測った数値である可能性があるからです。空腹時血糖が正常だったために、低血糖症(糖の代謝異常)に気付かない方が多くいらっしゃるのです。

 

 

しかも、例えお酒や甘い物に気をつけて食べていたとしても、現代人は知らず知らずの内に多くの糖質を摂っています。試しに、市販の食品のパッケージに印刷されている「成分表示」を見てみて下さい。ご飯やスイーツだけでなく、調味料や練り製品、スナックなど、何にでも糖分が含まれていることが分かることでしょう。入れると美味しくなる甘辛い味付けのタレやソースにも、実はたくさんの糖分が含まれているのです。

 

 

因みに、患者様によっては、低血糖症の症状が、パニック発作の症状に非常に近似している方も少なくないことも知られています。このようも、普段の食べ物”も、場合によっては“薬”と同じくらいの効果をもたらすほどの、病に対する影響力があるのだということを知っておいて頂けたら幸いです。

 

 

 

当院では、パニック症(パニック障害)をはじめ、

うつ病、躁うつ病(双極性障害)、適応障害、心身症、

摂食障害(過食症)、睡眠障害(不眠症)、不安症、

月経前症候群(PMS)、統合失調症、ストレス関連障害、

大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症)、

過敏性腸症候群(IBS)、自律神経失調症、強迫症など、

皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、

心身両面からの治療とサポートを行っております。

 

 

今後とも、医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)を宜しくお願い致します。