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【医師監修】認知行動療法のメリットとは?デメリットも解説しています

認知行動療法のメリットとは?

心療内科ではストレスなどによる心身の不調を、認知行動療法を使って治療していくことがあります。

多くの治療効果が立証されていますが、中には認知行動療法が向かない人もいます。

 

今回の記事では、認知行動療法のメリットと認知行動療法が向かない人の特徴や対処法をご紹介いたします。

向かないからといって心配する必要はありません。

別の治療方法もご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

認知行動療法とは?

そもそも、認知行動療法とはどのような治療法なのでしょうか?

認知行動療法は、ストレスなどで凝り固まった考えを、自身の力で解きほぐし自由に考えたり行動できるようにする心理療法です。

英語では、「Cognitive Behavioral Therapy」と言うため略して「CBT」とも呼ばれます。

ここでいう認知とは、ものの受け取り方や考え方を指します。

認知行動療法では、考え方に多様性を持たせながらストレスに対応する力をつけていきます。

認知行動療法の治療期間

心療内科で実施される認知行動療法は、1回のセッションにつき30分〜1時間程度行います。

また個人差はありますが、全部のセッションは10回〜20回程度が目安となっており、治療が終了するまでに半年〜1年程度かかります。

 

人によっては治療期間が長いと感じるかもしれませんが、時間をかけてゆっくりと行うことで再発率が低くなると言われています。

うつ病の方のセッションの流れ

ここからは、うつ病の方が行う認知行動療法のセッションの流れをお伝えします。

 

①うつ病評価スケールへ記入する

②前回のホームワークを振り返る

③取り扱う議題を設定する

④取り扱う議題に対する話し合いをする

⑤ホームワークを決める

⑥今回のセッションをまとめフィードバックを受ける

 

基本的にはこのような流れで行います。

もっと詳しい内容を知りたい場合は、認知行動療法を取り扱っている心療内科へお問い合わせください。

 

参考:うつ病の認知療法・認知行動療法 治療者用マニュアル

(https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/01.pdf)

認知行動療法の適用となる疾患

認知行動療法の適用となる疾患は幅広いです。

どのような疾患が適用になるのか見ていきましょう。

 

・うつ病

・不安障害

・パニック障害

・強迫性障害

・PTSD(心的外傷後ストレス障害)

・発達障害

・摂食障害

 

認知行動療法は、もともとうつ病の治療に用いられていました。

その後、うつ病以外の疾患にも治療効果があることが分かり幅広い領域で活用されています。

ストーカー・依存症・性犯罪・窃盗などの犯罪行為の再発防止プログラムにも組み込まれているのです。

 

認知行動療法の種類

認知行動療法にはさまざまな種類があります。

心療内科でカウンセリングをしながら、患者さんに合わせた治療を選択していきます。

リラクセーション法

「リラクセーション」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか?

これはストレス刺激による心身の緊張を緩和する技法です。

漸進的筋弛緩法・呼吸法・バイオフィードバック法・自律訓練法などがリラクセーション法に当てはまります。

漸進的筋弛緩法

全身の筋肉を意図的に緊張させ、一気に弛緩することでリラックスしていることを感じる方法です。

呼吸法

呼吸を用いて、心身をリラックスさせていく方法です。

ヨガにもよく取り入れられており、自然な呼吸を使う方法と呼気と吸気のタイミングを自分でコントロールする方法があります。

バイオフィードバック法

普段意識していない人間の反応を知覚可能な信号にしてコントロールする方法です。

センサーを活用し筋緊張、皮膚温、血圧、心拍、脳波などを測定しながら、自身の体を制御できるようトレーニングしていきます。

自律訓練法

ドイツの精神科医であるシュルツが体系化した治療法です。

リラックスした体勢と環境で決まった言葉を用いて自己暗示を行い、心身をリラックスさせます。

 

参考:専門医のための心身医学講座 リラクセーション法

(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpm/57/10/57_1025/_pdf)

曝露療法

エクスポージャー療法とも呼ばれ、主に強迫性障害や不安障害、PTSDの患者さんに用いられます。

不安の原因となる刺激に少しずつ触れていき、段階的に不安を小さくしていく方法です。

モデリング法

観察学習、模倣学習とも呼ばれます。

モデルが問題なく適応している様子を見ることで、自身の症状を軽減させる方法です。

エリスの論理療法

アメリカの臨床心理学者であるアルバート・エリスにより体系化された治療法です。

「何が起きたか」ではなく「それをどのように解釈したか」によって心理的な問題が起こるという考え方を用います。

 

人は無意識のうちに「非合理的な信念」を抱きます。

非合理的な信念とは「〜すべきである」「〜しなければいけない」という考え方です。

 

例えば、「学校にいる全員と仲良くしなければならない」「上司として絶対にミスをしてはいけない」というものです。

 

論理療法では、これらの非合理的な信念に焦点を当て、その変容を促します。

ベックの認知療法

ペンシルベニア大学の教授であるアーロン・T・ベックにより体系化された治療法です。

認知療法では、主に「自動思考」と「スキーマ」に焦点を当てて治療していきます。

 

自動思考とは、ある出来事があった際に自動的に浮かぶ考えやイメージのことです。

この自動思考のベースとなっているのが「スキーマ」です。

 

ベックの認知療法では、自分がどのようなスキーマを持っているかを把握し、自動思考の癖を治療していきます。

認知行動療法のメリット

さまざまな疾患に応用されている認知行動療法には、一体どのようなメリットがあるのでしょうか?

1つずつ見ていきましょう。

副作用の心配がない

1つ目のメリットは、副作用の心配がないことです。

認知行動療法は薬を使わない治療法のため、副作用の心配がありません。

 

薬を使用する治療に抵抗感がある方にはおすすめの方法です。

薬物療法と同程度の効果が期待できる

2つ目のメリットは、薬物療法と同程度の効果が期待できることです。

認知行動療法は、 抑うつ症状を軽減するだけではなく社会的機能を改善し、生活の質を高めると言われています。

 

先ほどご紹介したように、認知行動療法にはさまざまな種類があります。

心療内科では、患者さん一人一人に合わせた認知行動療法を提供いたします。

 

参考:日本における心理士によるうつ病に対する認知行動療法の系統的レビュー

(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjbt/38/3/38_KJ00008598585/_pdf/-char/ja)

日常生活で実践しやすい

3つ目のメリットは、日常生活で実践しやすいことです。

心療内科で行う認知行動療法は、カウンセラーとの対話だけではなく日常生活の中で実践できる課題を探します。

 

日常生活を送るなかで治療を行えるため、治療の効果を実感しやすいでしょう。

少しずつ変わっていく自分を認知しながら治療できるのが、認知行動療法の大きなメリットです。

慣れれば自分で実践できる

4つ目のメリットは、慣れれば自分で実践できることです。

最初は心理カウンセラーがいる心療内科で治療をしていきます。

 

しかし、やり方さえ覚えてしまえば自分が好きな場所・好きなタイミングで実践できます。

セルフコントロールができるようになると、再発率を下げることができるでしょう。

認知行動療法のデメリット

認知行動療法には多くのメリットがありますが、デメリットもあります。

 

・費用がかかる

・時間がかかる

・自分の状態によっては利用できない

 

それでは1つずつ見ていきましょう。

費用がかかる

1つ目のデメリットは、費用がかかることです。

パニック障害やうつ病に対する認知行動療法は保険適用が進んでいます。

 

しかし、保険診療をしている医療機関は少なく、ほとんどが自費診療です。

心療内科により自費診療の値段は異なりますが、1回につき6,000円〜8,000円はかかる場合が多いでしょう。

 

認知行動療法は単発ではなく、複数回行うことで治療効果があります。

そのため、「治療は受けたいけどお金がかかる」と金銭面で悩む方がいるかもしれません。

時間がかかる

2つ目のデメリットは、時間がかかることです。

認知行動療法は、16週間続けることで十分な効果が出ると言われています。

また、1回のセッションの所要時間は1時間程度です。

 

家事や仕事などで忙しく治療に時間が割けない方にとっては、デメリットになるかもしれません。

 

認知行動療法を行う際は、焦らずにゆっくりと治療を行っていくことが大切です。

 

自分の状態によっては利用できない

3つ目のデメリットは、自分の状態によっては利用できないことです。

本人の心の状態が悪いと、疲労感が出たり精神的に不安定になってしまうリスクがあります。

 

事前に、心療内科でご自身が認知行動療法に向いているかどうかを確認しておくと安心です。

認知行動療法に向いている人

それでは、認知行動療法に向いているのはどのような人なのでしょうか?

認知行動療法は自分自身と向き合い、認知と行動を変える努力が必要です。

そのため、「現状を変えたい」という強い思いがある方には向いている方法だと言えます。

 

他にも、「チャレンジ精神がある」「好奇心がある」方は向いているでしょう。

認知行動療法に向かない人

一方で、認知行動療法に向かない人にはどのような特徴があるのでしょうか?

症状が強く出ている人

認知行動療法は、落ち込みや不安など不安定な精神症状が強く出ている人には向いていません。

なぜなら、認知行動療法では自身の考え方の癖や認知の方法を客観的に見る必要があるからです。

 

症状が強く出ている場合は、冷静に自分を分析することが難しいでしょう。

悪い状態で治療をしても、体力や気力が続かずに逆に疲労してしまうかもしれません。

 

認知行動療法以外にも治療方法はありますので、お気軽に心療内科でご相談ください。

治療に前向きではない人

治療に前向きではない人は、認知行動療法に向かないでしょう。

患者さん本人が「変わりたくない」「このままで大丈夫」だと思っていては、治療がスムーズに進みません。

 

また、カウンセラー任せの人も治療効果が十分に出ないかもしれません。

もちろんカウンセラーは、患者さんの治療が上手くいくように全力でサポートします。

しかし、実際に課題や問題に立ち向かうのは「患者さん自身」です。

 

「認知行動療法をやれば治るだろう」「カウンセラーが自分の状態をよくしてくれる」という考えを持っている状態だと、治療のモチベーションが低下してしまうでしょう。

辛い経験を思い出したくない人

トラウマによる辛い経験を思い出したくない人は、認知行動療法をしない方が良いでしょう。

認知行動療法の治療中は、過去の嫌な経験や辛い思い出と向き合う必要があります。

このような思い出と向き合うのは非常に辛いですが、乗り越えるために重要なのです。

 

過去を思い出すと治療できない精神状態になる場合は、別の治療法を検討した方が良いでしょう。

環境が整っていない人

心療内科で治療が必要だと判断され、本人も治療に意欲的であっても治療する環境が整っていない場合は実施が困難です。

 

現在進行形で周囲から被害を受けている人は、まずはその対処を行いましょう。

本人の安全を確保した上で治療を始めることをおすすめします。

認知行動療法に向かない人の対処法

自分が認知行動療法に向かなくても落ち込まないでください。

ここからは、認知行動療法に向かない人の対処法をご紹介します。

心療内科で他の治療方法を相談する

まずは、プロに他の治療方法はないか相談しましょう。

一人で悩んでいても不安は募るばかりです。

悩んでいること全てを、ありのまま伝えてみてください。

あなたにとって最適な治療法を提案してくれるはずです。

薬物療法を検討する

心療内科では患者さん一人一人に合わせたお薬を処方しています。

主に使われるお薬は以下の通りです。

 

・抗うつ薬

・抗不安薬

・睡眠薬

 

抗うつ薬は、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどの神経伝達物質を調整し不安を軽減させたり意欲を取り戻す効果が期待できます。

 

抗不安薬は、不安やイライラが強い人に処方されます。

 

睡眠薬は、夜寝付けなかったり途中で起きてしまうなど睡眠障害がある場合に処方されます。

 

このように一人一人の症状に合わせたお薬を処方し、心身の健康をサポートしていきます。

十分な休息をとる

心身をリラックスさせたり、ストレスを解消させるためには十分な休息が有効です。

休息するために、まずは時間を確保しましょう。

仕事をしている場合は休職をするなど、積極的に長い休暇を取ることをおすすめします。

 

しかし、休暇を取ったからといって布団の中で寝続けていては意味がありません。

趣味やスポーツをしたり、心から気を許せる友人と会ったりして自分を見つめ直す時間を作りましょう。

 

「健康づくりに関する意識調査」によると、対象者のうち「調査前1ヶ月の間にストレスを感じた人」の割合は54.6%でした。

 

また男女とも歳を重ねるほど、ストレスを感じる割合が増加しています。

男性は「仕事」、女性は「育児や出産」が一番のストレス要因になっているそうです。

 

自分では大丈夫だと思っていても、知らず知らずのうちにストレスが溜まっているかもしれません。

一度自分を客観視し、無理をしていないか確かめてみましょう。

 

参考:休養・こころの健康 厚生労働省

(https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b3.html)

認知行動療法に近い心理療法を検討する

認知行動療法に近い心理療法に、マインドフルネスがあります。

 

日本マインドフルネス学会によるとマインドフルネスは、「今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること」と定義されています。

 

引用:https://mindfulness.smoosy.atlas.jp/ja

 

みなさんは「瞑想」をご存知でしょうか?

実は、瞑想はマインドフルネスの一種です。

 

基本的な瞑想のやり方をご紹介します。

①床か椅子に座り、楽な姿勢でゆっくりと目を閉じます。

②自分の呼吸に集中します。

③途中で何か頭に浮かんできたら、それを否定せずに再び呼吸に集中します。

 

①〜③を毎日15分〜25分行いましょう。

マインドフルネスを行うことで「今この瞬間」に集中でき、ネガティブな思考にとらわれる時間が減っていきます。

まとめ

いかがだったでしょうか?

今回は、認知行動療法のメリットと認知行動療法が向かない人の特徴や対処法をご紹介しました。

ストレスにより心身の不調を感じている場合は、一度心療内科を訪れてみましょう。

当院では、認知行動療法に取り組んでいます。特に、1対1のカウンセリングではどうしても高額になりがちなため、グループカウンセリングを導入しております。グループカウンセリングは、複数人の患者さんに集まっていただき、臨床心理士が講師役となり、セミナー形式で認知行動療法を勉強していきます。グループカウンセリングは保険適用となるので、料金を抑えられるメリットがあります。

是非一度、当院にご相談ください。

 

監修

佐々木裕人(精神科専門医・精神保健指定医)