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【医師監修】自律神経失調症を徹底解説!

 

 自律神経失調症とは?

 

自律神経失調症は、身体のさまざまな機能を調節する自律神経のバランスが崩れることによって引き起こされる多様な症状群を指します。自律神経は、交感神経と副交感神経の二つから成り立ち、私たちの身体の機能を無意識にコントロールしています。交感神経は主にストレスに対する「戦うか逃げるか」反応を引き起こし、副交感神経はリラックスや休息を促進します。この二つの神経系のバランスが崩れると、身体に多様な不調が現れることがあります。

 

 自律神経失調症の原因

 

自律神経失調症の原因は非常に多岐にわたりますが、主な要因として以下のようなものがあります。

 

 ストレス

 

現代社会において、仕事や家庭生活、人間関係などの様々なストレスが自律神経失調症の主要な原因となります。長期間にわたるストレスは交感神経の過剰な活性化を引き起こし、自律神経のバランスを崩す要因となります。例えば、職場での過度な業務量やプレッシャー、家庭内でのトラブルや対人関係の問題が挙げられます。

 

 生活習慣の乱れ

 

不規則な生活リズム、睡眠不足、過度な飲酒や喫煙などの生活習慣の乱れも自律神経失調症を引き起こす要因です。特に夜更かしや朝方までの作業などは、身体の自然なリズムを崩し、自律神経に負担をかけます。例えば、シフト勤務や夜勤のある仕事をしている人は特に注意が必要です。

 

 環境の変化

 

引っ越しや転職、学校の進級や卒業など、生活環境の大きな変化も自律神経失調症の引き金となります。これらの変化は新しい環境に適応するために心身に大きなストレスを与えることがあります。例えば、海外赴任や留学などでの環境変化も該当します。

 

 遺伝的要因

 

家族に自律神経失調症を患った人がいる場合、その家族のメンバーも発症するリスクが高くなることがあります。遺伝的な要因が影響することもあるため、家族歴の確認が重要です。これは特に精神的なストレスに対する耐性が遺伝する場合に顕著です。

 

 自律神経失調症の症状

 

自律神経失調症の症状は非常に多様で、個人によって異なります。主な症状としては以下のようなものがあります。

 

 身体的症状

 

– 動悸や息切れ:突然の心臓の鼓動の速まりや、息苦しさを感じることがあります。これは特にストレスの多い状況や緊張状態で顕著に現れることがあります。

– 頭痛やめまい:特に緊張型頭痛や片頭痛、回転性のめまいが見られることがあります。頭痛はしばしば肩こりや首のこりと関連していることが多いです。

– 消化器症状:食欲不振、吐き気、下痢や便秘など、消化器系の不調が現れることがあります。これは胃腸の運動が自律神経によって調節されているためです。

– 冷え性や発汗異常:手足の冷えや異常な発汗が見られることがあります。特に夜間やストレス状況下で顕著に現れることが多いです。

 

 精神的症状

 

– 不安感や恐怖感:特に理由もないのに不安を感じたり、特定の状況に対する強い恐怖感が現れることがあります。パニック発作として現れることもあります。

– うつ症状:気分の落ち込み、やる気の喪失、興味や喜びの減退などのうつ症状が見られることがあります。これが長期間続く場合、抑うつ状態やうつ病に進展することもあります。

– イライラや怒りっぽさ:些細なことでイライラしたり、怒りを感じやすくなることがあります。これはストレスに対する過敏な反応の一部として現れます。

 

 自律神経失調症の診断

 

自律神経失調症の診断は、主に患者さんの症状の聞き取りと身体検査、必要に応じて血液検査や画像診断を行います。他の疾患を除外するための検査も重要です。具体的な診断方法としては以下のようなものがあります。

 

 問診

 

患者さんの生活習慣、ストレスの状況、症状の詳細について詳しく聞き取ります。特に症状の発生時期や頻度、関連する状況などを把握することが診断に役立ちます。例えば、症状が特定の時間帯や状況で悪化する場合、そのパターンを理解することが重要です。

 

 身体検査

 

心拍数や血圧の測定、呼吸の観察、消化器系の検査など、身体の各機能を確認します。これにより、自律神経の異常がどのように現れているかを評価します。例えば、安静時と運動後の心拍数の変動を比較することが有用です。

 

 血液検査

 

甲状腺機能や貧血の有無、炎症の指標などを調べるために血液検査を行います。他の内科的疾患を除外するための重要なステップです。例えば、甲状腺機能低下症や糖尿病などが自律神経症状を引き起こすことがあるため、それらの疾患を除外することが重要です。

 

 画像診断

 

必要に応じて、心臓や脳の画像診断を行います。例えば、心電図や脳波検査などを通じて、心臓や神経系の異常を確認します。これにより、心疾患や神経疾患の有無を評価することができます。

 

 自律神経失調症の治療

 

自律神経失調症の治療は、症状の原因となる要因を取り除くこと、症状の軽減を図ることを目的としています。治療方法としては以下のようなものがあります。

 

 生活習慣の改善

 

規則正しい生活リズムを作ることが重要です。早寝早起きを心がけ、バランスの取れた食事を摂ること、適度な運動を行うことが推奨されます。また、ストレスの原因となる要素を取り除くために、リラックス法や趣味を楽しむ時間を持つことも大切です。具体的な方法としては以下のようなものがあります。

 

– 睡眠の質を高める:十分な睡眠を確保するために、就寝前のスマートフォンやパソコンの使用を控える、寝室の環境を整えるなどの対策を講じます。

– バランスの取れた食事:栄養バランスの良い食事を心がけ、特にビタミンB群やマグネシウムを含む食品を積極的に摂ることが推奨されます。

– 適度な運動:定期的な運動はストレスを軽減し、自律神経のバランスを整えるのに効果的です。ウォーキングやヨガなどの軽い運動を取り入れることが推奨されます。

 

 薬物療法

 

必要に応じて、抗不安薬や抗うつ薬、睡眠導入剤などが処方されることがあります。これらの薬物は症状を緩和し、日常生活の質を向上させるために使用されます。具体的な薬物療

 

法としては以下のようなものがあります。

 

– 抗不安薬:ベンゾジアゼピン系薬物などが不安感や恐怖感を軽減するために使用されます。ただし、依存性があるため、長期間の使用は避けるべきです。

– 抗うつ薬:選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)や三環系抗うつ薬などが、うつ症状の改善に効果的です。これにより、気分の安定が図られます。

– 睡眠導入剤:睡眠障害の改善のために、非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬が処方されることがあります。これにより、睡眠の質を向上させることができます。

 

 心理療法

 

認知行動療法(CBT)は、自律神経失調症の治療に効果的な方法の一つです。患者さんがストレスに対する考え方や行動を見直し、より適応的な方法を学ぶ手助けをします。また、カウンセリングを通じて、ストレスの原因を探り、その対処法を一緒に考えることも重要です。具体的な心理療法としては以下のようなものがあります。

 

– 認知行動療法(CBT):患者さんの否定的な思考パターンを修正し、より適応的な行動を学ぶことを目指します。例えば、不安や恐怖に対する認知の修正や、リラクゼーション技法の習得などが含まれます。

– マインドフルネス療法:現在の瞬間に集中することで、ストレスや不安を軽減する方法です。瞑想や呼吸法を通じて、心の安定を図ります。

– 対人関係療法(IPT):人間関係の改善を通じて、ストレスの軽減と症状の改善を目指します。具体的な対人スキルの向上を図ります。

 

 補完代替療法

 

アロマセラピー、マッサージ、鍼灸などの補完代替療法も、自律神経のバランスを整えるのに役立つことがあります。これらの療法はリラックス効果を高め、ストレスを軽減する効果があります。具体的な補完代替療法としては以下のようなものがあります。

 

– アロマセラピー:エッセンシャルオイルを用いて、リラックスやストレス軽減を図る療法です。例えば、ラベンダーやカモミールなどの香りがリラクゼーションに効果的です。

– マッサージ:筋肉の緊張をほぐし、リラクゼーションを促進する手技療法です。特に肩こりや首のこりの改善に効果的です。

– 鍼灸:東洋医学に基づく治療法で、特定のツボを刺激することで身体のバランスを整えます。これにより、ストレスや痛みの軽減が期待されます。

 

 自律神経失調症の予防

 

自律神経失調症を予防するためには、日常生活におけるストレス管理と生活習慣の見直しが重要です。以下のような対策を心がけることが予防につながります。

 

 ストレス管理

 

日常生活におけるストレスを適切に管理することが重要です。ストレスの原因を特定し、それに対処する方法を見つけることが必要です。例えば、仕事の負担を軽減するために業務を整理したり、リラックスできる時間を持つことが効果的です。具体的なストレス管理法としては以下のようなものがあります。

 

– 時間管理:効率的な時間管理を通じて、過度な仕事量やプレッシャーを軽減します。優先順位をつけて業務を進めることが重要です。

– リラクゼーション技法:深呼吸法や瞑想、ヨガなどのリラクゼーション技法を取り入れることで、心身のリラックスを図ります。

– 趣味の時間を持つ:趣味や楽しみを見つけ、それに時間を割くことでストレスを軽減します。例えば、読書や音楽鑑賞、アウトドア活動などが推奨されます。

 

 規則正しい生活リズム

 

規則正しい生活リズムを保つことが自律神経のバランスを整えるために重要です。早寝早起きを心がけ、毎日同じ時間に食事を摂るようにしましょう。また、十分な睡眠を確保することも大切です。具体的な生活リズムの整え方としては以下のようなものがあります。

 

– 一定の起床・就寝時間を保つ:毎日同じ時間に起床し、就寝することで身体のリズムを整えます。週末も同様のスケジュールを維持することが推奨されます。

– 適切な食事のタイミング:規則正しく食事を摂ることで、消化器系のリズムを整えます。特に朝食を欠かさずに摂ることが重要です。

– リラクゼーションタイムの確保:一日の中でリラックスする時間を設けることで、ストレスを軽減します。例えば、就寝前のリラクゼーションタイムを習慣化することが有効です。

 

 適度な運動

 

適度な運動は自律神経のバランスを保つために非常に有効です。ウォーキングやジョギング、ヨガなどの軽い運動を日常的に取り入れることで、ストレスを軽減し、心身の健康を維持することができます。具体的な運動習慣としては以下のようなものがあります。

 

– 定期的なウォーキング:毎日30分程度のウォーキングを習慣化することで、心肺機能を向上させ、ストレスを軽減します。

– ヨガやストレッチ:ヨガやストレッチを通じて、筋肉の緊張をほぐし、リラックス効果を高めます。特に夜間のヨガやストレッチが効果的です。

– 有酸素運動:ジョギングやサイクリングなどの有酸素運動を定期的に行うことで、全身の血行を促進し、心身の健康を維持します。

 

 バランスの取れた食事

 

バランスの取れた食事を摂ることも、自律神経の健康を保つために重要です。特にビタミンやミネラルを豊富に含む食品を積極的に摂るようにしましょう。また、カフェインやアルコールの摂取を控えることも大切です。具体的な食事のポイントとしては以下のようなものがあります。

 

– ビタミンB群の摂取:ビタミンB群は神経の機能をサポートするため、バランスの取れた食事に取り入れることが推奨されます。例えば、豚肉や卵、納豆などが豊富な供給源です。

– ミネラルの摂取:マグネシウムやカルシウムは神経の安定に寄与するため、これらのミネラルを含む食品を積極的に摂るようにしましょう。例えば、海藻やナッツ類、乳製品などが挙げられます。

– カフェインやアルコールの制限:カフェインやアルコールは自律神経に影響を与えるため、その摂取を控えることが重要です。特に寝る前のカフェインやアルコールの摂取は避けるようにしましょう。

 

 まとめ

 

自律神経失調症は、多様な原因によって引き起こされる複雑な症状ですが、適切な診断と治療を行うことで、症状を改善し、日常生活の質を向上させることが可能です。生活習慣の改善やストレス管理、必要に応じた薬物療法や心理療法を通じて、心身のバ

 

ランスを取り戻しましょう。当クリニックでは、患者さん一人ひとりの症状に合わせた適切な治療を提供し、健康な生活をサポートいたします。お困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

 

参照

chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.japha.jp/doc/byoki/019.pdf

日本臨床内科医会

自律神経失調症

e-ヘルスネット(厚生労働省)

 

https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/autonomic_dysfunction/

 

社会福祉法人恩賜財団済生会

 

自律神経失調症

【医師が解説】自律神経を整える飲み物!

 

監修 佐々木裕人(精神保健指定医・精神科専門医・内科医)