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【医師監修】自律神経の乱れの原因と対処法について解説!チェック項目つき!

【医師監修】自律神経の乱れの原因と対処法について解説・チェック項目つき

頭痛、めまい、肩こり、腰痛、お腹の不快感、食欲不振、眠れなさ、全身のだるさなど、体調不良があるものの原因がはっきりせずに困っている、という悩みはありませんか?「検査をしたけれど原因が分からなかった」という場合には、それらの症状は自律神経のバランスの崩れと関係しているかもしれません。自律神経の乱れを放置すると他の疾患を引き起こしてしまうことも多いです。症状を軽減し、早期に対処するためにも心療内科などの医療機関に相談するとよいかもしれません。

 

この記事では「自律神経失調症」に関わる症状や原因、治療を中心にご紹介します。セルフチェック項目も掲載していますので、ぜひご覧ください。

 

【目次】

1:自律神経失調症とは?

1-1:自律神経失調症の概要―実はわかりにくい自律神経失調症―

1-2:自律神経失調症のチェック項目

 

2:自律神経失調症の症状と原因

2-1:自律神経の仕組み

2-2:自律神経失調症に関わる症状と自律神経の関係

2-3:自律神経失調症の原因は?

 

3:自律神経失調症への処方箋

3-1:心療内科での治療方法

3-2:心療内科を受診する場合のポイント

 

まとめ

 

【本文】

1:自律神経失調症とは?

「頭痛がする」「頭が重い」「めまいがする」「肩こりがする」「胃に不快感がある」「下痢や便秘になりやすい」「眠れない」などは、疲労やストレスのかかっている場面で起こりやすい症状です。これらは、経験したことのある方も多いのではないでしょうか。

明らかな身体の病気がなく、検査でも異常がみられないものの、自律神経のバランスが崩れて不調をきたしていると考えられる場合には、自律神経失調症の可能性があります。自律神経失調症を放置すると、より重度な疾患を引き起こすリスクがあります。心療内科をはじめとする医療機関で治療を受けることによって症状は軽快し、より重度の疾患に至るのを防ぐことができます。

自律神経失調症の概要と、自律神経が関わる症状をチェック項目の形でご紹介します。

 

1-1:自律神経失調症の概要―実はわかりにくい自律神経失調症-

「自律神経失調症」という言葉は、どこかで聞いたことがあるのではないでしょうか。東邦大学の阿部達夫先生が1960年代に作られた言葉なのですが、実は、医学の専門書の多くには「自律神経失調症」という用語が掲載されていません。自律神経の乱れが関与する症状が現れているものの、自律神経の働きを正確に調べられる検査方法がなく、確立した疾患概念や診断基準があるわけではないからです。

医療機関で検査を受けて、気になっている症状の原因と治療法が明確になればよいのですが、検査からはこれといった原因が見つからず、複数の医療機関にかかる方もいます。症状の原因が判然としないだけではなく、周囲からの理解を得ることの難しさにつらさを感じることもあるでしょう。

しかし、このような状態の時点で、心療内科などの適切な医療機関を受診して、症状が緩和できるように対処したり、症状そのものの原因と考えられるストレスや生活習慣を見直したりするなど、適切な治療を行えば症状は軽快して、より重度の疾患に至るのを防ぐことができます。

 

1-2:自律神経失調症のチェック項目

自律神経の働きが関わって現れる症状とはどのようなものでしょうか。ここでは、自律神経失調症のスクリーニングテストとして作成された自律神経失調症調査表(東邦大式医学指数,Toho Medical Index:TMI)から、自律神経の症状に関わる43のチェック項目をご紹介します。それぞれの項目を読んで、「はい」と答えた数を出してください。

 

自律神経失調症調査表(東邦大式医学指数,Toho Medical Index:TMI)

1 いつも耳鳴りがしますか はい いいえ
2 胸か心臓のところが締め付けられるような感じをもったことがありますか はい いいえ
3 胸か心臓のところが押さえつけられるような感じをもったことがありますか はい いいえ
4 動悸が打って気になることがよくありますか はい いいえ
5 心臓が狂ったように早く打つことがありますか はい いいえ
6 よく息苦しくなることがありますか はい いいえ
7 人より息切れしやすいですか はい いいえ
8 ときどき座っていても息切れすることがありますか はい いいえ
9 夏でも手足が冷えますか はい いいえ
10 手足の先が紫色になることがありますか はい いいえ
11 いつも食欲がないですか はい いいえ
12 吐き気があったり、吐いたりしますか はい いいえ
13 胃の具合が悪くてひどく気になることがありますか はい いいえ
14 消化が悪くて困りますか はい いいえ
15 いつも胃の具合が悪いですか はい いいえ
16 食事のあとか、空腹の時に胃が痛みますか はい いいえ
17 よく下痢しますか はい いいえ
18 よく便秘しますか はい いいえ
19 肩や首すじがこりますか はい いいえ
20 足がだるいですか はい いいえ
21 腕がだるいですか はい いいえ
22 皮膚が非常に敏感でまけやすいですか はい いいえ
23 顔がひどく赤くなることがありますか はい いいえ
24 冬でもひどく汗をかきますか はい いいえ
25 よく皮膚に蕁麻疹(じんましん)ができますか はい いいえ
26 よくひどい頭痛がしますか はい いいえ
27 いつも頭が重かったり痛んだりするために気がふさぎますか はい いいえ
28 急に熱くなったり冷たくなったりしますか はい いいえ
29 度々ひどいめまいがしますか はい いいえ
30 気が遠くなって倒れそうな感じになることがありますか はい いいえ
31 今まで2回以上気を失ったことがありますか はい いいえ
32 からだのどこかにしびれや痛みがありますか はい いいえ
33 手足が震えることがありますか はい いいえ
34 体がカーッとなって汗の出ることがありますか はい いいえ
35 疲れてぐったりすることがよくありますか はい いいえ
36 とくに夏になるとひどく体がだるいですか はい いいえ
37 仕事をすると疲れきってしまいますか はい いいえ
38 朝起きるといつも疲れきっていますか はい いいえ
39 ちょっと仕事をしただけで疲れますか はい いいえ
40 ご飯が食べられないほど疲れますか はい いいえ
41 気候の変化によって体の調子が変わりますか はい いいえ
42 特異体質と医師にいわれたことがありますか はい いいえ
43 乗り物に酔いますか はい いいえ

「はい」の数(    )

 

いかがでしたでしょうか。チェック項目をひととおり読まれてみて、自律神経が関わっている症状の多さに驚かれたのではないかと思います。

「はい」を選んだ項目の数は、いくつありましたか?

10点以下の場合は、自律神経に関する症状に問題はありません。

11点以上の場合は、自律神経に関する症状が多くみられており、気がかりな状態です。心療内科を受診して、症状を心身両面から診てくれる心療内科医に相談するとよいでしょう。

 

ご紹介したチェック項目のみでは、自律神経失調症に関する自己判断はできません。また、気分の落ち込みがあったり、逆に興奮状態があったりするなど、精神状態に関する症状がある場合には、心の状態が自律神経に影響して、チェックリストにあるような症状が現れていることもありえます。

チェック項目で「はい」に該当する数の多い・少ないによらず、身体症状と心理面の症状がある場合には、身体と心の症状の両側面から治療方法を検討することができる心療内科を受診するとよいでしょう。医療機関の利用を検討する方は、「3:自律神経失調症への処方箋」をご覧ください。

 

2:自律神経失調症の症状と原因

自律神経失調症は、視覚化や数量化がしづらい生体メカニズムと関わっています。医学的な検査では「異状なし」「原因不明」となる症状ですが、自律神経の仕組みを考えることによって症状が引き起こされる理由を理解しやすくなるでしょう。

ここでは、自律神経の仕組みと、自律神経失調症に関わる症状と自律神経の関係、そして自律神経失調症の原因についてご紹介します。

 

2-1:自律神経系の仕組み

自律神経とは、生命維持に不可欠な機能を本人の意思や意識とは関係なく、反射的・自動的に動かしている神経のことです。自律神経系は交感神経系と副交感神経系からなっており、それぞれが各内臓に対してほぼ相反する作用を担っています。交感神経が作用するものとしては心拍数が増える、気管支が広くなる、胃腸の動きが遅くなるなどがあり、身体の働きを活発にします。一方、副交感神経が作用するものとしては心拍数の減少、気管支の収縮、胃腸の動きが速くなるなど、睡眠時やリラックスしている時に優位になります。

例えば、人が横になっているベッドから起きて立ち上がろうとすると、血液は重力によって身体の下のほうへ移動しようとします。これが大量に行き過ぎてしまうのを防いでくれているのが交感神経の働きです。しかし自律神経系に不調があると、このメカニズムが障害されるため、血圧が低下して失神する(いわゆる起立性低血圧)状態になります。

交感神経と副交感神経のバランスを保つことは、体調の維持のために重要なものですが、バランスが崩れてしまった場合に自律神経失調症(不定愁訴症候群)に関する症状が出現します。

 

2-2:自律神経失調症に関わる症状と自律神経の関係

「頭痛がある」「肩こりがする」「手足が冷える」「手足がしびれる」などの症状は、交感神経が異常に興奮している状況で、血管が収縮することと関係しています。

「夜になっても眠れない」「疲れが取れない」「動悸がする」「便秘が続く」などの症状も、交感神経が活発になっているために生じます。

一方で、「起きたのに血圧が上がらない」「めまいがする」「下痢が続く」「身体がだるい」「元気が出ない」などの症状は、副交感神経が異常に興奮している状況で現れます。

症状は、その人の弱い部分に現れやすいものです。肩がこりやすい人の場合にはがんこな肩こりになりやすくなります。

この他にも、頭重、ほてり、寝汗、食欲不振、胃痛、悪心、疲労感、倦怠感、息切れ、動悸、背痛、腰痛、腹痛、腹部不快感など、自律神経の乱れの影響による症状は個人によって様々にあります。

 

2-3:自律神経失調症の原因は?

自律神経のバランスが乱れる原因について、直接的なものを特定することはできませんが、間接的には過剰なストレスや生活習慣の乱れが考えられます。

人が生きていく上では、ほどよいストレスは必要ですが、ストレスが大きすぎると活動のための神経である交感神経の働く場面が多くなってしまいます。自動車に例えると、アクセルを踏み続けている状態です。そうすると身体は休息を取れなくなり、疲労から回復できなくなってしまいます。

生活習慣は、私たちの身体にある「体内時計」と呼ばれる生体リズムの機能と密接な関わりがあります。食生活が不規則であったり、慢性的な寝不足が続いていたり、昼夜逆転のように睡眠リズムの乱れがあったりすると、生体リズムが狂ってしまい、自律神経のバランスが崩れるもとになります。

 

 

3:自律神経失調症への処方箋

自律神経失調症は、身体に関する症状がメインの場合には内科で治療することもあります。しかし、心身両面に症状を呈していたり、ストレスが原因として関わっていたりするケースが目立つことから、心療内科をはじめとするメンタルヘルス系のクリニックを受診して治療にのぞまれる方が多いです。

ここでは心療内科の場合を例として、自律神経失調症に関する治療のおもな方法と、心療内科を受診するにあたって医師に伝えるとよいことなどについてご紹介します。

 

3-1:心療内科での治療方法

心療内科における自律神経失調症の治療は、身体の不調のメカニズムを理解するところから始まります。そして、ストレスの関与が大きいと考えられる場合には、心身医学的な治療が行われます。

 

自律神経失調症の治療のポイントは、大きく分けて2つあります。1つ目は、症状を抑えるための薬物治療です。例えば、痛みに対しては鎮痛薬、お腹の調子が悪い場合は整腸薬といった具合です。自律神経を整えるために漢方薬や自律神経調整薬が用いられることもあるでしょう。対症療法を行うことによってつらい症状が軽快すると、身体の症状によるストレス自体も軽減されることから、治療プロセスでの相乗効果が期待できます。

 

2つ目は、自律神経の乱れの原因に関わっていると考えられるストレスや心の面に対するアプローチです。自分自身の考え方のくせを知って、ストレスを溜め込まないようにすることや、症状にとらわれすぎないようにするための精神療法を勧められることもあります。また、過度な緊張をとって、自律神経のバランスの乱れを改善するための有効な手段として、自律訓練法や筋弛緩法、呼吸法といったリラクゼーションの仕方を身につけることも大切でしょう。

 

もちろん、規則正しい生活習慣を心がけることも大変重要です。起床時間・就寝時間を一定にする、朝起きたら太陽の光を浴びる、規則正しい食生活を心がける、適度な運動を行う、心身がリラックスできる方法を実践する、就寝1時間前に入浴する、就寝前には飲食(特にカフェインやアルコール)をしないなど、日常生活のすごし方を意識しましょう。

スマートフォンやパソコンなどのブルーライト、室内の明るい照明を浴びると身体を「昼」と勘違いさせ、交感神経が刺激されます。時間帯による照明の明るさや色合い、デバイスの使用時間も工夫するとよいでしょう。自律神経は目に見えない機能だけに、自分の身体が発しているサインを受け取り、自律神経のバランスが維持できるように心がけたいものです。

 

 

3-2:心療内科を受診する場合のポイント

心療内科の初診では、心身の困りごとに関する状態について時間をかけて丁寧に確認します。ご自身が感じている症状や、心療内科医に伝えたいことを整理して、遠慮なく伝えることが大切です。

「伝えるとよいこと」の例をご紹介します。心療内科の初診時に尋ねられてもその場で思い出しにくい事柄については、あらかじめメモをしておいて持参するのもよいでしょう。

 

【伝えるとよいことの例】

・自覚している症状

・いつ頃からどのような症状があるか

・他の医療機関への受診状況や検査結果

・治療中の疾患や、服薬中の薬の種類と量

・心配に思っていること、不安なこと

・知りたいこと

・心療内科医に伝えたいこと

 

まとめ

今回は、自律神経の働きのメカニズム、自律神経失調症の症状・原因、心療内科などの医療機関における治療方法などをご紹介しました。自律神経失調症を放置すると、より深刻な疾患へとつながるリスクがあります。「つらい」と感じている場合は、症状を悪化させないようにするためにも、身体と心の両面からアプローチすることのできる心療内科を受診して、早期に対処することをお勧めします。

 

【文献】

浅野嘉延(2023):なるほどなっとく!内科学 改訂3版.南山堂

 

阿部達夫・筒井末春(1972):自律神経失調症 第2版.金原出版

 

一般社団法人 日本女性心身医学会:女性の病気について:自律神経失調症

https://www.jspog.com/general/details_53.html

 

一般社団法人日本臨床内科医会:わかりやすい病気のはなしシリーズ19 自律神経失調症

https://www.japha.jp/doc/byoki/019.pdf

 

厚生労働省:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳:自律神経失調症

https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1591/

 

榊原隆次(2023):東邦大学と自律神経失調症・自律神経不全. 東邦大学医学会, 70(2),83-34.

https://mylibrary.toho-u.ac.jp/webopac/bdyview.do?bodyid=TD71223017&elmid=Body&fname=td71223017_cover.pdf

 

千葉県医師会:知ってはいるが、実はあまりわかっていない自律神経失調症

https://www.chiba.med.or.jp/general/millennium/pdf/millennium52_1-4.pdf

 

監修 佐々木裕人(精神科専門医・精神保健指定医)