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【医師監修】リ ワークプログラムは職場復帰を目指すリハビリ!費用や流れを解説!

【医師監修】リワークプログラムは職場復帰を目指すリハビリ・費用や流れを解説

「リワークプログラムってなにをするの?」

「リワークプログラムの費用っていくらぐらいかかる?」

 

リワークプログラムの名前は知っているものの、中身はよくわからない方も多いでしょう。

本記事を読むことで以下の4つがわかります。

 

・リワークプログラムの概要

・リワークプログラムはどのような施設で受けられるか

・リワークプログラムの内容

・リワークプログラムの流れや費用

 

リワークプログラムの概要や流れなどを知ってうまく活用し、スムーズな職場復帰を目指しましょう。

リワークプログラムの意味とは?|職場復帰を目的とするリハビリ

リワークプログラムとは、うつ病や適応障害などのこころの病気が原因で休職している方に対して「職場復帰を目的としておこなうリハビリテーションプログラム」 のことです。

 

休職中に症状が安定したら、リワークプログラムで職場復帰のための準備をはじめます。リワークプログラムでは、復職するときに必要な以下の能力の向上が期待できます。

 

  • 集中力
  • 注意力
  • 持続力
  • コミュニケーション能力

 

休職すると、一時的に4つの能力が下がります。その状況のままで復職すると、こころの病気の症状が悪化したり、無理して仕事を続けなければならなかったりする状況になる恐れがあります。

 

そのため、リワークプログラムを受け上記4つの能力が向上、もしくは休職する前に戻ると職場の復帰がみえてくるでしょう。

リワークプログラムを受けられるところ

リワークプログラムを受けられるところは大きくわけて以下の4つです。

 

  • 医療機関
  • 地域障害者職業センター
  • 職場
  • 就労移行支援事業所

 

どのようなリワークプログラムを受けられるか施設ごとに解説します。

医 療機関でのリワークプログラム

医療機関でのリワークプログラムは、精神科や心療内科などでおこなわれます。「治療的な要素が強く症状の回復と再発だけではなく、復帰したあとに再度、休職することを予防すること」が目的です。

 

治療的な要素が中心のプログラムがおこなわれます。期間は2ヵ月〜半年ほど。医療機関でのリワークプログラムの対象者は、こころの病気により休職中、かつ復職の意欲がある方です。

 

ただし、復職の意欲があっても医師が対象者の症状が重いと判断した場合は、リワークプログラムに参加ができない可能性があります。

 

医療機関でのリワークプログラムのメリットは、医療スタッフのケアを受けながら職場復帰の準備ができることです。職場と連携し復帰後の対策も考えられるため、復職後の不安を軽減できるでしょう。

地 域障害者職業センターでのリワークプログラム

地域障害者職業センターのリワークプログラムとは「本人と雇用主、主治医がコーディネートし職場への復帰を目指すリハビリテーション」のことです。

 

地域障害者職業センターでは「専門的な職業リハビリテーションのプログラム」をおこないます。

 

地域障害者職業センターは都道府県ごとに最低1か所ずつ設置されており、障害のある方やこころの病気により休職している方が対象です。医療機関を受診している場合は、主治医とも連携しながら支援プランを実施します。

 

公的機関での実施であり、無料でリワークプログラムに参加できます。

さらに、休職者のみでなく職場のスタッフも支援者として参加するため、現実的なプログラムとなり、復職後も安心して働けるでしょう。

職 場内でのリワークプログラム

職場内でおこなわれるリワークプログラムとは「自社の休職者が復職し、さらに働き続けられるように職場で支援する」ことです。

 

厚生労働省が公開した「令和4年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況」によると、過去1年間でメンタルヘルスの不調により1ヵ月以上休業または、退職した労働者がいた事業所の割合は13.3%とされています。

 

この割合は、前回の調査と比較すると3.2%上昇しており、年々増加しています。こころの病気で体調を崩し休業したり、退職したりする方は多いです。

 

その対策として、職場内に医療部門や専門部署があり、EAP(従業員支援プログラム)サービスを実施しているところがあります。また、主治医の許可がおりて復職しても再休職してしまうことがあるため、職場内でリワークプログラムを実施する企業もあります。

就 労移行支援事業所でのリワークプログラム

就労移行支援事業所でのリワークプログラムとは「障害のある方を対象に職業訓練として支援をする」ことです。

 

本来、就労移行支援事業所は「企業への就労を希望する障害者」が対象です。

 

ただし、一部の就労移行支援事業所では、こころの病気の方を対象としたリワークプログラムを実施する施設もあります。

 

リワークプログラムの無料体験を実施しているところもあるため一度、体験してから参加を決めましょう。

リワークプログラムの内容

リワークプログラムの内容は「治療により職場に適応する」ためのプログラムです。主に以下の5つを実施します。

 

  • 認知行動療法
  • 自己分析
  • 生活リズムの調整
  • オフィストレーニング
  • グループトレーニング

 

「リワークプログラムでは実際何をするの?」と疑問を感じたり、心配になったりしている方はぜひ参考にしてください。

認 知行動療法

認 知行動療法(CBT:Cognitive Behavior Therapy)とは「不安やストレスなどにより固くなった考えや行動を、自由に考えたり行動したりできるようにする心理療法」です。

 

うつ状態のときは些細なことで否定的な考えに陥りやすいです。

 

たとえば、何か失敗したときに「自分はダメな人間だ」「自分は誰とも関わらないほうがいい」とマイナスに考えてしまいがちです。

 

認知行動療法では、否定的な思考から抜け出すために考え方の改善を目指します。

 

物事の捉え方を変えることはストレスの軽減になるため、うつ病や不安症のほかに強迫性障害の症状の改善に効果が期待できます。

自己分析

自己分析とは「自分の経験を振りかえり、出来事を客観的に見つめなおすこと」です。

 

復職するために、どのような理由で休職に至ったのかを振り返ります。というのも、自己分析が不十分なまま復帰すると、再び休職したり早期退職につながったりするためです。

 

具体的には、自分の強みや弱みを把握し、苦手なところはどう改善したらいいのか対策を考えます。休職の要因は、自身や職場にあるため環境要因も分析することが大切です。

 

症状がつらいときや休職する原因が主に職場にある場合は、職場との連携が取れるか職場やリワークプログラムを実施するスタッフに相談してみましょう。

生活リズムの調整

うつ病や双極性障害などのこころの病気を抱えている方は、不眠や気分の抑うつが認められ、不規則な生活リズムになるケースがあります。

 

たとえば、昼夜逆転やごはんを食べないなど生活リズムが崩れやすいです。

 

ただし、職場復帰するためには毎朝決まった時間に起きたり、睡眠時間を確保したりしなければなりません。そのため、生活リズムを整えることが、復職への第一歩といえるでしょう。

オフィストレーニング

軽作業からはじめ集中力や作業能力を取り戻し、職場への復帰を目指すのがオフィストレーニングです。

 

うつ病や双極性障害で休職すると、休んでいる期間は集中力や作業能力の低下がみられます。これらの能力を改善するのがオフィストレーニングです。

 

オフィストレーニングでおこなう主な内容は、主に以下のとおりです。

 

  • パソコン作業
  • 読書
  • 書類作成

 

職場への復帰を目指し少しずつ仕事を進めていきます。とくに、事務作業が多い仕事の方にとっては、必要なトレーニングといえるでしょう。

グループトレーニング

グループトレーニングでは、職場の人と話す場面を設定して練習することで、職場でのコミュニケーションのストレスを少なくし職場への復帰を目指します。

 

休職すると上司や同僚とコミュニケーションをとる機会が減り、コミュニケーション能力が低下するためです。グループトレーニングの主な内容は以下のとおりです。

 

  • 集団で作業するときの連携
  • 臨機応変な対応力
  • メンバーへの配慮
  • グループワークの進め方

 

復帰していきなり通常どおり働くことは負担が大きいため、まずは模擬的なトレーニングから慣れていきます。

リワークプログラムの流れ

自分に合ったリワークプログラムを受けることが大切です。また、医師の判断でリワークプログラムを受けられないと判断される可能性があります。そのような場合は、まずは体調の回復を優先してください。

リワークプログラムの利用方法と流れ

ここでは、実際のリワークプログラムの利用方法と流れを解説します。

 

  流れ 注意点
参加の許可を取得 主治医にリワークプログラムを受けたいと相談。
リワーク先の選定 ・自宅から通いやすい施設。

・自宅に合ったプログラムを実施している施設。

利用の手続き 診療情報提供書、障害者手帳などの必要書類を提出。
申請の受理 リワークプログラムの開始。

 

利用期間の目安は約3〜8ヵ月です。ただし、利用する施設や利用者のこころやからだの状態によって変動します。

費用

リワークプログラムの費用は主に利用料です。おおよその目安として参考にしてください。

 

施設 目安の利用料 特徴や注意事項
医療機関

(心療内科・精神科)

約2,000~3,000円

(1日6時間/デイケア)

・健康保険が適応され3割負担

・自立保険制度を利用すると費用の負担を軽減

地域障害者職業センター 無料 ・公務員は利用できません

・各都道府県に1か所のみ

職場 無料

(職場の負担)

職場にリワーク制度があるか確認
就労移行支援事業所 約1,000円 ・行政の補助で利用者の自己負担は1割

・自治体によっては交通費や昼食代の補助

 

リワークプログラムの費用は「利用料×利用期間」で計算されます。なかには、昼食代や交通費がかかるケースもあります。公的な支援を活用すると、費用の負担を軽減できる可能性があります

 

リワークプログラムを実施する施設ごとに違うため、利用する前にそれぞれの施設に確認しましょう。

リワークプログラム利用後から職場復帰までの流れ

リワークプログラム利用後、復帰の可否は主治医の診断書を元に産業医が判断します。復帰する許可が出れば、会社と職場復帰に関して調整します。

 

  • いつから復帰するか
  • 復帰後にどのようなフォローをしてほしいか
  • まずは時短勤務で始めるか

 

職場の上司や産業医と話し合って決めていきましょう。

 

「どのようなフォローをしてほしいか」を自分からいうのは難しいかもしれません。

 

ただし、上司や産業医もどのようにフォローしたらいいかわからない場合があります。そのため「仕事量を調整してほしい」「業務内容を変更してほしい」と具体的に伝えると、復職後も働きやすくなるでしょう。

リワークプログラムの意味がないと感じる理由と対処法

 

「リワークプログラムは意味ない?」と考えている方もいるのではないでしょうか。

 

意味がないと感じる理由として、リワークプログラムを受けるしんどさや効果を感じないことがあります。ここでは、その原因と対策を解説します。

リワークプログラムがしんどいと感じる

しんどいと感じる理由のひとつは体調が優れないことです。

 

休職中は体力も気力も落ちており体調を崩すことがあります。精神的に不調を抱えていると「行っても意味がない」「休んでしまった。もう無理だ」などと、極端な考えになる傾向があります。

 

そのため、主治医や職場のスタッフに相談しましょう。

 

また「通うことが面倒に感じる」という理由もあります。とくに、通い始めのころに感じやすいかもしれません。

 

なぜなら、生活リズムが乱れていたり、何をするにも面倒だと思ったりするためです。

 

ただし、そのまま退所するとこころの状態を改善する機会がなくなり、復職後も同じような症状を繰り返す恐れがあります。

 

リワークプログラムに通い続けると、少しずつ慣れてくるため継続できるように工夫しましょう。

リワークプログラムの効果を感じない

「リワークは効果がないの?」と不安に感じる方もいるでしょう。

 

リワークプログラムは、休職の原因に向き合うことで、病状の再発や復職後にふたたび休職するのを防げます。精神的な不調をわずらう原因を把握できます。

 

そのため、今は効果がないと感じているかもしれませんが、効果を実感できるまで通い続けることが大切です。リワークプログラムの不安や悩みなどは、主治医や施設のスタッフに相談してみてください。

リワークプログラムに関するQ&A

ここでは、リワークプログラムに関するよくある質問を3つ紹介します。リワークプログラムへの疑問を解決し、職場への復帰を目指しましょう。

リワークプログラムを実施している施設はどうやって探したらいい?

リワークプログラムを実施している施設は、日本うつ病リワーク協会 のホームページから調べられます。

 

お近くの精神科・心療内科クリニックや地域障害者職業センター、障害福祉サービス事業所などに問い合わせてみましょう。

リワークプログラムは毎日通わないといけない?

リワークプログラムは毎日通う必要はありません。

 

体調が優れないときには無理して通わなくても大丈夫です。週2日や3日など、あなた自身の体調に応じたスケジュールで受けられます。

 

具体的なプログラムやスケジュールについては、リワークプログラムを実施する施設のスタッフや医療機関に相談してみましょう。

リ ワークプログラム中は傷病手当ってどうなるの?

リワークプログラムを受けているときは、休職中となるため給与は支給されない恐れがあります。

 

ただし、傷病手当は受けられます。くわしくは、最寄りの自治体に確認してください。

リワークプログラムを受けて本当に職場復帰できるの?

リワークプログラムを受けると、職場に復帰できるケースが多いです。

 

実際に、リワークプログラム利用者の復職 1 年後の就労継続率は 83.2% とされる調査結果もあります。

 

リワークプログラムを利用した方は仕事を長く続けられています。

 

リワークプログラムの効果がないと感じたり、通うのがしんどくなったりしている方は、無理のないように受け続けることが大切です。

まとめ

リワークプログラムとは、復職意欲のある休職者を対象としており、職場復帰するためのリハビリのことです。

 

「医療機関」「就労移行支援事業所」「地域障害者職業センター」「職場」など、さまざまな施設でリワークプログラムを受けられる。

 

リワークプログラムの効果を実感しなかったり、体調が思わしくなかったりするケースがあるかもしれません。

 

そのときは、主治医やスタッフに相談して、焦らずゆっくりリワークプログラムを進めていきましょう。

 

当院では、リワークプログラムに取り組んでいます。こころの病気を治療する専門医が一人ひとりに丁寧に対応しています。症状に悩んでいる方は、一度相談してみてください。

 

https://www.mhlw.go.jp/content/000561013.pdf P2

「職場復帰支援の手引き」|厚生労働省

 

リワークプログラムとは

「一般社団法人日本うつ病リワーク協会」

 

リワークプログラムとは

「一般社団法人日本うつ病リワーク協会」

 

リワークプログラムとは

「一般社団法人日本うつ病リワーク協会」

 

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r04-46-50_gaikyo.pdf

「令和4年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況」|厚生労働省

 

https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000794737.pdf p37

「障害者の就労支援について」厚生労働省

 

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/3b.pdf p2

「就労移行支援について」|厚生労働省

 

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjbt/38/3/38_KJ00008598585/_pdf/-char/ja

「日本における心理士によるうつ病に対する認知行動療法の系統的レビュー」

 

https://www.ncnp.go.jp/hospital/patient/rinshoshinri/rinshoshinri_blog20220713.html

そもそも認知行動療法(CBT)ってなに?|NCNP病院

 

https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/04.pdf p6

「うつ病の認知療法・認知行動療法 (患者さんのための資料)」|厚生労働省

 

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17162985/

16歳から74歳までの全国調査対象者における年齢層別の不眠症の併存疾患と影響および催眠術の使用

 

 

会員リワーク施設情報

「日本うつ病リワーク協会」

 

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/101004-1.pdf P2

「~メンタルヘルス対策における職場復帰支援~ 改訂 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」|厚生労働省

 

https://utsu-rework.org/cms/wp-content/themes/the-thor-child/img/pdf/2019_006.pdf

「一般社団法人日本うつ病リワーク協会」

 

https://www.photo-ac.com/main/detail/29060114&title=%E3%82%AC%E3%83%83%E3%83%84%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%82%92%E3%81%99%E3%82%8B%E5%8C%BB%E8%80%85#goog_rewarded

 

 

監修 佐々木裕人(精神科専門医・精神保健指定医)