睡眠時随伴症とは、睡眠中に生じる異常な行動や体験の総称で、「パラソムニア」とも呼ばれます。睡眠時随伴症には「睡眠時遊行症(夢遊病)」「睡眠時驚愕症(夜驚症)」「悪夢障害」「レム睡眠行動障害」「レストレッグス症候群(RLS)」等が挙げられています。今回はそれらについて一つひとつ説明をしていきます。
睡眠時遊行症(夢遊病)
睡眠時遊行症(夢遊病)は、睡眠中に起き出してうろうろと歩いたり、服を着替えようとしたりと、さまざなな行動をとる疾患です。時には家から出ていってしまうこともあるため、怪我をしたり事故にあったりする危険もあちます。大抵、周囲が優しく誘導すると再び入眠します。一旦目が覚めて症状がおさまる場合もあります。
この睡眠時遊行は大抵、夜間の睡眠のはじめの3分の1の間に起こります。また、深い眠りに入っている時にむりやり起こしたりすると、睡眠時遊行を起こす場合もあります。
一般に4~8歳の間に発症し、最も頻度が高いのは12歳前後です。子どもの10~30%がこの症状を1回以上経験しており、何回も経験するのは2~3%とのことです。年齢が増すにつれて発症頻度は低下します。睡眠時遊行をする人の80%に、睡眠時遊行症や睡眠時驚愕症の家族歴があることが指摘されています。
鎮静薬や、乱れた睡眠パターン(断眠、睡眠-覚醒スケジュールの乱れ)、ストレスなどは、睡眠時遊行を起こしやすくします。
睡眠時驚愕症(夜驚症)
睡眠中に突然起き上がり、絶叫したり、激しく身体を動かしたりと酷いパニックを起こします。また、しばしば部屋の扉に向かって駆け出すこともあります。パニックは大体、1~10分程度続きます。パニックは、大抵夜間の睡眠期間のはじめの3分の1の間に起こります。大抵、ひと晩に1回のパニックですが、数回みられることもあります。
睡眠時驚愕症の一般人口の有病率は分かっていません。小児期に最も多く、年齢が増すにつれて低下します。第一度近親者にこの疾患の患者様がいる場合、有病率は10倍も高くなります。
鎮静薬や、乱れた睡眠パターン(断眠、睡眠-覚醒スケジュールの乱れ)、ストレスなどは、睡眠時驚愕症を起こしやすくします。
悪夢障害
患者様は、何かに追いかけられたり、命の危険を感じたりするような、強い不安や恐怖を伴う夢(悪夢)を見ます。悪夢にはリアリティーがあり、夢の内容はいつも同じようなものです。患者様は、目が覚めた直後はもちろん、翌朝であっても悪夢の内容を細かく覚えています。また、目が覚めてからも夢をみた時の不快な感情は続き、その苦痛は日中まで続いたりします。
大人の場合、パーソナリティ障害などの疾患を患っていることがあります。または、心的外傷体験を経験し、その場面を再現した悪夢(再現性悪夢)を見ていることもあります。一方、子どもの場合、悪夢はたいてい情緒的な発達に関係しています。
主要な睡眠時間帯の後半、眠りが浅くなった時に悪夢をみやすいようです。レム睡眠の質を悪くするような乱れた睡眠(断眠、睡眠-覚醒スケジュールの乱れ)が悪夢をみやすくします。また、レム睡眠を抑える薬剤の服用を急にやめようとすると、悪夢を見る頻度が増えることがあります。
悪夢障害は、小児期から青年期にかけて有病率が上昇します。就学前の子どもを持つ親の1.3~3.9%が、子どもが悪夢を頻繁に、またはいつもみると報告しています。10~13歳の機関に有病率が増加し、女性については20~29歳まで有病率の増加は続きます。そして、加齢とともに有病率は低下します。
悪夢障害は、心理的・社会的ストレスにさらされた子どもに生じやすいものです。まれに、成人期まで悪夢が続き、ほぼ生涯を通じて苦しむ人もいます。
レム睡眠行動障害
夜間の睡眠中にせん妄状態だ起こる障害です。恐ろしい幻視や幻聴を経験し、興奮したり、激しい行動を起こしたりします。高齢者の方に多くみられる障害です。
レストレッグス症候群(RLS)
レストレッグス症候群(RLS)は、むずむず脚症候群、下肢静止不能症候群と呼ばれることもあるように、ふくらはぎや足先などの下肢に、むずむずした異常知覚が起こる睡眠関連疾患です。下肢がむずむずするのは眠れないせいだと思い、医師に不眠のみを訴えるケースも多いです。
このむずむず感は、夕方から夜間にかけて現れ、動くことで一時的に和らぎます。何とかむずむずを解消しようとして下肢を動かしたり、歩きまわったりするために、頻繁に睡眠が妨げられ、重い不眠症状が出ます。1ヶ月に数回位の頻度のものから、昼間まで症状が続いて、毎日、長時間、むずむずにさいなまれる場合まであります。
さらに、患者様の60~80%が、睡眠時推移性四肢運動(PLMS)を合併しています。PLMSとは、数秒~10数秒ごとに脚を不随意にそり返らせる、あるいは、けり出すような運動のことを言います。この動きは、RLSと関係なく他の様々な疾患と関連しています。
RLSは、突発性RLSと、腎不全、妊娠、鉄欠乏といった要因によっておこる二次性RLSに分けられます。突発性RLSの原因は不明ですが、ドーパミン神経系の異常が考えられています。ドーパミン作動薬が治療薬としては有効です。
RLSは睡眠障害の中でも、有病率が高い疾患の一つです。高齢者や女性に多く、患者様のおよそ3分の1に家族歴があります。
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Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)
参考引用文献:Newton別冊『精神科医が教える心の病の説明書』