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【医師監修】「捨てられない、かたづけられない」はADHDだから??

「もったいない」「いつか使うかもしれない」…等々、何かしらの理由をつけて、不要なものをいつまでも手放せないではいないでしょうか? 勿論、これだけでは病気ではありません。しかし、日常生活に支障が出るほど物(や動物)を大量にためこんでしまう精神の病気があります。それが「ためこみ症(Hoarding Disorder)」です。

 

 

実は、ためこみ症は、他の精神疾患や発達障害と併存(重複)している割合が非常に高いことが知られています。例えば、ADHDの人には一つの作業に集中することが難しいという特性があります。そのため、物の整理や処分が上手く出来ないことも多くなります。実際、ためこみ症と診断された人の内、3割近くがADHDだという報告があります。また、ためこみ行動は、うつ病強迫症ADHDなどの二次的な症状としても見られます。

 

ためこみ症は、主に成人になるまでの若い時期に発症することが多いようです。オーストラリアの心理学者ジェシカ・グリシャム氏らが2006年に報告した調査は、25歳以下でためこみ症を発症したとされる人が全体の68.2%を占めていたのですが、若い時期に発症しても、ためこみ症だと気付かれないことも多いそうです。何故なら、ほとんどの未成年は、自分で物を買うお金がなく、また、部屋を散らかしても親が片づけてしまうことが多いからです。よって、成人して一人暮らしをするようになってから、実はためこみ症だったと発覚する例が、実際は多いのです。

 

 

ためこみ症の原因は、まだ明確にはされていません。ただ、可能性としては、生まれもった気質と、過去(特に幼い時期)の体験や環境の両方が影響していると考えられています。例えば、幼い頃に親から物を大事にするように教えこまれることで、物を保存することへの執着が強くなり過ぎてしまったり、あるいは、親が極端に綺麗好きで、幼い頃から絶えず片付けを強要されてきたことで、物のある空間への思いが極端に強くなってしまったり…といった例があります。また、家族を亡くした、親が離婚した、親から十分な愛情を受けることが出来なかったといった喪失体験により、発症する例もあります。

 

 

ためこみ症の人は、食事や睡眠などの日常生活よりも、物があることを優先します。例えば、ベッドの上に身体をおくスペース分だけを空けて睡眠をとるような場合は、ためこみ症である可能性が高いとされています。物がご自身の生活空間を侵食していくので、まずは、ご自身の部屋を撮影した画像などを客観的な視点で眺めて見ることも大切です。

 

 

ためこみ症の治療にあたっては、まず当事者ご本人に「ためこみ行動を改善したい」という思いがなければ行うことは出来ません。これが大前提にあることを踏まえられた上で、身近に心配な人がいる場合は、専門機関や専門家に相談されることをお勧めします。

 

当院(新宿ペリカンこころクリニック)では、ご希望の患者様に、ウェクスラー成人知能検査(WAIS)を施行することが可能な医療機関となっております。

 

ご自身の能力の凸凹の可能性が気になられる患者様、とりわけ発達障害(ADHDやASDの可能性を危惧されている患者様は、御診察の際に、その旨を当院医師にお申し出頂けましたら幸いです。

 

 

Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)

監修 佐々木裕人(精神保健指定医・精神科専門医・内科医)

参考引用文献:Newton別冊『精神科医が語る発達障害のすべて 改訂第2