最近、よく話題になる、ゴミ屋敷ですが、実は以前から精神医学的には、ためこみ行動によるものではないかと考えられています。
ためこみ行動がみられる可能性のある精神疾患や発達障害は、一概には言えませんが、次のようなものが代表的なものとして挙げられています。
うつ病
◇疾患の特徴➡深い悲しみ、意欲の低下、思考力の低下などが起こります。不眠や食欲不振といった身体症状も伴います。DSM-5-TRに基づくと、こうした症状が2週間以上続くと、うつ病と判断されることがあります。
◆ためこみ行動の特徴➡意欲や思考力の低下によって、物の処分や片付けをしたいと思っていても実行に移すことが難しくなります。あるいは、「いつかやる」「すぐにやれる」と考えるが、行えません。
強迫症
◇疾患の特徴➡「~しないと不安だ」とういう強迫観念にかられ、特定の行動(強迫行為)を繰り返してしまいます。強迫行為には、手を何度も洗う、自宅の鍵や火元を何度も確認する…等々、多岐にわたります。
◆ためこみ行動の特徴➡強迫行為として、物を集めたり手放せなかったりします。例えば、後で必要になって困ることへの不安や恐怖から、物を捨てることを避けようとします。
注意欠如多動症(ADHD)
◇疾患の特徴➡物を失くすといった「不注意」や、じっとしていられないといった「多動」が主に見られます。
◆ためこみ行動の特徴➡長時間におよぶ物の処分や片付けに集中することができません。また、忘れてしまうことへの強い不安から、すべて見えるように並べておく傾向があります。
自閉スペクトラム症(ASD)
◇疾患の特徴➡対人関係やコミュニケーションの障害、興味と行動のかたより(こだわり)が主にみられます。
◆ためこみ行動の特徴➡こだわりの強さなどのために、物の処分や整理を怠りがちになります。ADHDの方とは対照的に、物を積み重ねて置いておく傾向があります。
統合失調症
◇疾患の特徴➡幻覚、妄想といった症状や、脳の活動が低下し、喜怒哀楽が乏しくなる抑うつ状態(感情の平板化)になるといった症状が見られます。遺伝と環境の影響を受けて脳内の神経伝達物質のバランスが崩れる状態と言われています。
◆ためこみ行動の特徴➡論理的な判断が行いにくく「この物を処分すると大変なことが起こる」などと考えてしまい、物を処分しないことがあります。また、意欲や気力の低下により、片付けが困難にります。
このように精神疾患に伴うためこみ行動の違いをまとめさせて頂きました。しかし、上記に挙げた特徴はあくまで一部でしかありません。もし、お心当たりのある人が身近にいる場合は、「この人はこの病気のはずだ」等と勝手に判断するのではなく、専門の医師などに必ず相談をするようにされて下さい。
当院(新宿ペリカンこころクリニック)では、ご希望の患者様に、ウェクスラー成人知能検査(WAIS)を施行することが可能な医療機関となっております。
ご自身の能力の凸凹の可能性が気になられる患者様、とりわけ発達障害(ADHDやASD)の可能性を危惧されている患者様は、御診察の際に、その旨を当院医師にお申し出頂けましたら幸いです。
Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)
監修 佐々木裕人(精神保健指定医・精神科専門医・内科医)
参考引用文献:Newton別冊『精神科医が語る発達障害のすべて 改訂第2販』