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【医師監修】うつ病とためこみ症は違います!!

結果的にためこみ状態となる「うつ病」

うつ病によって、結果的にためこみになっていることは往々にしてあります。以前にもブログにてご紹介しましたように、うつ病または抑うつ状態にあると、エネルギーや気力が著しく低下します。やる気も出ず、集中力も持続しません。ためこみ行動をしているというよりは、結果的にためこんでしまっている状態にあると言えます。

 

エネルギーが低下することによって、重度の場合はシャワーや入浴をしない、歯磨きや着替えもしない等、身の回りのことすらできなくなることがあります。本を1ページ読むことすらできません。まして、身の回りのモノを片づけようというエネルギーが働くはずもありません。このような状態が長く続けば、当然ためこんでいる状態になります。

 

このとき、ためこみ症と違うのは、モノに対する執着がないことです。ですから、このような場合では、ためこみ症と診断されることはありませんし、ためこみ行動をしているわけでもないでしょう。

 

一方、ため込み症で、うつ病あるいは抑うつ状態を併存していることは最も多く、50~70%にみられると報告されています。その場合は、ためこみ症とは別にうつ病の治療が必要になってきます。

「認知症」とためこみ行動

高齢者の人口が増えるにつれて、認知症も増え続け、2025年には700万人にまで増加すると言われています。認知症にはいくつかの種類がありますが、その中でもアルツハイマー型認知症や、前頭側頭型認知症などにためこみ行動が見られます。

 

「買った(モノを入手した)ことを忘れる」からだと思われるかもしれませんが、認知症の人の場合は、物忘れとは区別されるため、入手したことを忘れるというよりは、所有しているものが頭に入力されていないという表現の方が的確かもしれません。

 

特徴としては、「足りなくなるのではないか」「何かあったときのために」など、モノが手元にない状態や不足する状態を考えて、余分にモノを購入するので、結果的にためこんだ状態になりがちです。また、食料品を購入しても、腐ってしまうまで保存し続け、処分しません。

 

認知機能が低下すれば、分類することも困難になります。それに加えて、高齢になればなるほど、人生において多くの喪失体験をしています。そのため、モノを手放すことに対して過敏になっていることが影響しているのかもしれません。

「統合失調症」の症状としてのためこみ行動

統合失調症は、脳の様々な部位のネットワークが上手く働くなる状態です。不調な状態になる部分によって、幻覚や妄想、意欲の低下などの症状が起こります。これらの症状には、脳内のネットワークの働きに深く関わっている神経伝達物質の影響が考えられています。

 

幻覚は、実際にないものをあるように感じる状態で、いないにも関わらず人の声が聞こえたり、見えたり、感じたり、あるいは自分の悪口や噂話が聞こえてきたり…といったような複数の種類があります。妄想には、例えば嫌がらせをされている、インターネットに自分に関する情報が流れているといった被害妄想や、他の人が自分に好意を持っている、嫌っている等と直接コンタクトのない他の人と自分を関連づけて考えてしまう関係妄想などがあります。

 

統合失調症の人にも、ためこみ行動が見られることがあります。例えば、妄想や幻覚によって、「自分の排泄物を流すと、汚染を拡大することに繋がる」「処分すると大変なことになる」などと考え、排泄後に流さないといった状態が見られることがりあす。清潔の必要性の認識が欠如した状態と言えます。

 

また、統合失調症の症状には、喜怒哀楽などの様々な感情の動きが少なくなったり、自分だけでなく他の人の感情や表情などの理解が難しくなったり、意欲や気力の低下がみられます。それによって何もする気が怒らず、結果的にモノのためこみ状態に繋がることもあります。

当院では、うつ病をはじめ、
大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症含む)、
躁うつ病、不安症、適応障害、摂食障害、強迫症、
パニック症、睡眠障害、自律神経失調症、心身症、
月経前症候群、統合失調症、社交不安症、認知症、
過敏性腸症候群、アルコール使用障害など、
皆様の抱えるこころのお悩みに対して、
心身両面からの治療とサポートを行っております。

 

このコラムを読まれまして、興味・関心を抱かれた方、
ご自分の現在のご状況として気になる点がありました方は、
どうぞ当院まで、お気軽にお問い合わせください。

 

Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)

監修 佐々木裕人(精神保健指定医・精神科専門医・内科医)

引用参考文献:五十嵐透子著片付けられないのは「ためこみ症」のせいだった!?