境界性パーソナリティ障害
境界性パーソナリティ障害とは「些細なことで気持ちや対人関係が崩れてしまい、普段の生活や仕事に支障をきたす障害」のことです。
境界性パーソナリティ障害の症状
境界性パーソナリティ障害は多くの場合、青年期に症状があらわれやすく、加齢とともにその症状は軽くなります。境界性パーソナリティ障害は、男性よりも女性に多いと言われています。
主な症状は以下のとおりです。
- 人間関係や自己像の不安定性
- 極度の気分変動
- 突発的な行動
症状の程度やどのような症状があるかは個人差があります。
なかには、孤独感を強く感じてしまい「見捨てられたくない」といった思いから自傷行為をして、周りの人が助けてくれるように危険を作るケースもあります。

境界性パーソナリティ障害の原因
境界性パーソナリティ障害を引き起こす原因は、はっきりとわかっていません。ただし、以下の3つの要因が関係している可能性があります。
1.生物学的な要因
セロトニンやノルアドレナリンなどの脳内神経伝達物質が関与しているといわれています。
というのも、これらの物質には以下のような作用があるためです。
⚫︎ セロトニンは精神を安定させる働きがあり、機能低下により衝動性や自殺企図が生じやすくなる。
⚫︎ ノルアドレナリンはストレスにより分泌され、過剰分泌による情動の不安定性を引き起こす。
ほかにも、ストレスの処理にかかわる部位である視床下部や恐怖にかかわる扁桃体の過剰反応などが、境界性パーソナリティ障害の要因といわれています。さらに、発達障害の影響も考えられます。
2.家庭の養育環境
境界性パーソナリティ障害を引き起こす要因には、以下のような幼少期の経験があるとされています。
- 身体的虐待
- 性的虐待
- ネグレクト
- 片親の喪失
これらの経験により心的外傷後ストレス障害(PTSD)になり、境界性パーソナリティ障害の発症にかかわっていると考えられています。

3.社会・文化的な要因
境界性パーソナリティ障害は、発展途上国より先進国で多いといわれています。
現代社会の中では、さまざまなリスクにさらされ絶えず「不安」を感じているためです。
また、境界性パーソナリティ障害では女性の方が男性より約4倍多いことから性別による違いも見られます。
その背景には、昔の男尊女卑の考え方があるといわれているためです。例えば、男性が感情的になり女性を殴ったとしても正当化され、逆に女性が感情的になると「ヒステリーだ」といわれネガティブにとらえられてきた背景も影響しています。
このように、女性が感情的になることはよくないことだとされ、自分が悪いという思い込みにつながりやすくなったのかもしれません。

境界性パーソナリティ障害の治療
境界性パーソナリティ障害の治療法は主に「精神療法」「薬物療法」の2つです。
これらの治療は、完治するのは難しい病気であるため、症状を軽くすることが目的です。精神療法や薬物療法を続けることで少しずつ症状が軽くなると考えられています。
精神療法
精神療法には、認知行動療法や弁証法的行動療法があります。
⚫︎ 認知行動療法物事の捉え方を修正することで行動を変える治療法
⚫︎ 弁証法的行動療法主に白か黒か思考の考え方を修正する治療法
これらの治療方法は自殺行動の低減、抑うつの改善に有効といわれています。
自分の考え方を修正し、感情を適切にコントロールする力を身につけることで衝動的な行動や考えを軽減します。
薬物療法
薬物療法では「気分安定薬」「非定型抗精神病薬」が使用されます。
気分安定薬は脳内の神経伝達物質の働きを調整し、抑うつや不安、衝動性などを軽減し気分を安定させます。副作用には、眠き・ふらつきや体重増加、吐き気などがあります。
非定型抗精神病薬は、脳内のドパミン受容体やセロトニン受容体に働き、妄想や情動不安定などの症状を軽減します。
今後とも、医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)を宜しくお願い致します。