こころのペリカン便り

Column

【心療内科Q/A】 「『SET-UP』コミュニケーションとは?②」

A.

医療法人社団ペリカン六本木ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)です。

 

 

前回は、境界性パーソナリティ障害を持つ方と実用的な対話を行う上で有用となるSET-UPというコミュニケーション手法をご紹介させて頂きました。本日はその第2回目となります。

 

 

SETは、支援(Support)」、「共感(Empathy)」、「真実(Truth)の3つの部分から成る、対話のための体系です。

 

 

Sが示す支援(Support)」の部分では、私(=支援者)」を主体とする発言を使って、気に掛けていることと、その相手(=境界性パーソナリティ障害をお持ちの方)の傍に居続ける決意があることを伝えますあなた(支援者)が個人として心配をしており、力になりたいと思っていることをしっかりと伝えます。

 

 

「支援(Support)」の発言の例を挙げるとすると……

 

「あなたがどんな気持ちでいるのか、私はとても気になっているわ」

「君に何が起きているのか、僕は心配でたまらないんだ」

「力になりたいと思っているの」

 

……といったような言葉になってくるでしょう。

 

 

Eが示す共感(Empathy)」の部分では、共感の気持ちと共に、相手(境界性パーソナリティ障害の方)のことをしっかりと認識していることを伝えますその相手の持つ内面の苦悩と葛藤を受け止めるのです。

 

 

「共感(Empathy)」の部分では、支援者であるあなたのことではなく、境界性パーソナリティ障害に苦しむ相手の体験にフォーカスします。

 

 

「共感(Empathy)」の言葉は、例えば……

 

「そんな状況だと、(あなたは)本当に大変よね」

「そこまで追い込まれるなんて、(あなたは)必死なんだろうね」

「(あなたは)誰にも想像できない位、辛いんじゃない?」

 

……等といった言葉となることでしょう。

 

 

Tが示す真実(Truth)では、現実的に状況を見極め、問題となってくる事柄を扱っていく上では、境界性パーソナリティ障害の当事者の方が“主役”とならなくてはいけない点に着目をします他の人も荷担しているかもしれませんが、予測可能な結果にご自身も関与していることを、境界性パーソナリティ障害の方ご自身が、認識しなくてはいけない内容についてフォーカスをします。

 

 

「支援(S)」と「共感(E)」の発言は、あくまでも支援者自身の主観に基づく言明です。それに対して「真実(T)」発言では、現実的な選択肢を取り上げ、何をすれば今現在の問題に対処していけるかを扱います。この「真実(T)」発言を上手に表現するには、受容的でありながらも中立的な、事実を淡々と伝えるような言い方が一番でしょう。

 

 

「真実(Truth)」を語る際は、例えば……

 

「何が起こったか、私たちはお互いに分かっている……結果に一緒に対処しないといけないね……私が手伝えることは……あなたには何ができそう?」

 

……等のようになることでしょう。

 

 

この「SET」の3つの中では、「真実(T)」を耳に入れることが、境界性パーソナリティ障害の方にとっては最もつらく、困難であることが想像されます何故なら、これまでその状況に直面することから逃げようとされてこられたのが、その試みに対し、正面から立ちはだかり、現実的な問題解決を求めるものになるからです。ここでは、非難をしたり、絶望に浸ったりするのではなく、その当事者本人の“責任”の所在がフォーカスされることになります。

 

「SET」の枠組みに追加されたUPの部分は、あなた(支援者)とあなたの大切な人(当事者様)にとっての「リマインダーです。健康的な対話をするには、理解(Understanding)」と「根気強さ(Perseverance)が、終始必要だということを思い出させてくれます。

 

 

また、境界性パーソナリティ障害の「病理」を、関係者全員が「理解(U)」していなかったとしたら、上手くいくはずがありません(ただ、理解したからといって、行動の責任が免除される訳ではありません)。「根気強さ(P)」は、失望や苛立ちを乗り越えて、お互いに傍にい続けようとする決意を思い出させてくれます。対話が難しい時には、ただ黙って傍にいることが最善であることもあるからです。

 

 

 

当院では、

うつ病、躁うつ病(双極性障害)、不安症、適応障害、

心身症、ストレス関連疾病、睡眠障害(不眠症)、

大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症)、

パニック障害、自律神経失調症、冷え症、摂食障害、

月経前症候群、更年期障害、統合失調症、強迫性障害、

過敏性腸症候群、境界性パーソナリティ障害など、

皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、

心身両面からの治療とサポートを行っております。

 

 

また当院では、診察と一緒に、専門の心理士(臨床心理士・公認心理師)資格を持ったカウンセラーによるカウンセリング(心理療法)も行っております。カウンセリングご希望の患者様は、診察時に医師にご相談下さい。

 

 

今後とも、医療法人社団ペリカン六本木ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)を宜しくお願い致します。