こころのペリカン便り

Column

【心療内科 Q/A】「『認知行動療法』って何なのでしょうか?③」

A.

医療法人社団ペリカン六本木ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)です。

 

 

以前同コラムにて『認知行動療法』って何なのでしょうかというタイトルにて概説をさせて頂きました。今回はその3回目となり、行動療法的アプローチについて記載致します。

 

 

 

認知行動療法は、認知療法的アプローチ行動療法的アプローチに大別することが可能です。そして行動療法的アプローチとは、刺激→反応の結び付きから行動を説明する理論を基に発展しました。その行動療法的アプローチの中から、シェイピング法(スモールステップ法)と呼ばれるものをご紹介します。

 

 

「シェイピング法」とは、習得が望まれる行動に近い行動をとったときに、その行動を褒めて強めていけるようにする(=“強化する”)というやり方です。イメージとして、子育て等において、お母さんがお子さんに対して望ましい行動をした時に大げさに褒めたり、好きなご褒美をしたりすると、お子さんが伸びていく……といった感じの状況を想像して頂ければ良いかと思います。

 

 

これを応用してご自身の行動変容や行動強化に用いる場合は、スモールステップでの行動変容が挙げられます。苦手な場面を克服するのに用いることが多いのですが、出社拒否や会社に行き辛いお気持ちが強い方が、まず定時に家から出るという所から始めて、それが出来るようになったら、まずは地元の最寄り駅まで行ってみる、次に隣の駅まで行ってみる、乗り換えの駅まで行ってみる、会社の最寄り駅まで行ってみる、会社の門(入口)まで行ってみる……と小さいステップ(=モールステップ)で状況を工夫していき、最後に本来目標としていた「会社に行く」という行動まで持っていくといったものです。

 

 

つまり「シェイピング法」とは、最終目標とする行動(=「標的行動」)を獲得するまでの道のりを段階的に分け、それを一つずつクリアすることによって、最終的には“新しい行動”を獲得しようという方法なのです。

 

 

 

シェイピングを成功させる為には、いくつかのポイントがあります。

 

 

1つ目は、最終目標とする行動(標的行動)を明確化することです。どんな場合であっても、目標が明確でなければ、意欲的に取り組むことは出来ません。それと同様に、獲得しようとする行動を明確に出来ることは、意欲やモチベーションを高め、目標達成を促進してくれるのです。

 

 

2つ目は、ステップを適確に設定することです。それぞれのステップが、対象者にとって遂行可能なものであり、各ステップの幅にも無理がなく、なおかつ簡単すぎないことが大切です。最初は5段階程度の設定が適当です。第4~5段階で、標的行動に至るように工夫していきます。

 

 

3つ目は、各ステップにおいて、その行動が成功した場合、確実に“強化する”(=誉める、認める、賞賛する)ことです。「自分はこの行動が確実に出来るようになったのだ」という実感を得ることは、その後の行動意欲を高めるために、非常に重要なことです。誰かに報告をしたり、自分自身にご褒美をあげたりすることが役立つでしょう。

 

 

目標とする行動を行う為には、いきなり大きな目標を立ててしまうと、却って何も出来ないといった状況に陥りやすいものです。出来るだけ、取り組み易く、実行し易いものから、具体的に順序立てて挑戦していくことで、「また出来なかった」という思いよりも、段階をまた1つクリアすることが出来たという思いや自信を積み重ねていくことになり、それがまた次のステップ(段階)に挑戦するモチベーションにも繋がります。

 

 

無理をして大きな理想を掲げるよりも、目標を確実に達成する為には、小さなステップ(スモールステップ)の方が近道になり得ることを覚えておいて頂けましたら幸いです。

 

 

 

当院では、

うつ病、躁うつ病、不安症、恐怖症、適応障害、

睡眠障害(不眠症)、過敏性腸症候群、心身症、

摂食障害、パニック症、自律神経失調症、強迫症、

月経前症候群(PMS)、更年期障害、統合失調症、

大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症)など、

皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、

心身両面からの治療とサポートを行っております。

 

 

また当院では、診察と一緒に、専門の心理士(臨床心理士・公認心理師)資格を持ったカウンセラーによるカウンセリング(心理療法)も行っております。カウンセリングをご希望される患者様は、診察時に医師にご相談下さい。認知行動療法の実施も可能です。

 

 

今後とも、医療法人社団ペリカン六本木ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)を宜しくお願い致します。