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医療法人社団ペリカン六本木ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)です。
以前、同コラムにて、「ストレスとなり得る『上司と部下の意識差』」について記載させて頂きました。その中で、部下は上司に対して、「(部下個人に対して)働きかけてくれる上司」を求めている一方、上司は「(部下個人にではなく)組織的なリーダーシップを示す上司像」を目指してしまっているという「認識差」があることにも言及させて頂きました。
このことはちょうど、日本発祥の有名なリーダーシップ理論「PM理論」の内容にそのまま当て嵌るとも言えますので、今回はその「PM理論」をご紹介させて頂きたいと思います。これは本邦にて1960年代に提唱された理論ですが、半世紀以上経過したいま現在においても適用することが可能な、日本人の普遍的な観念に訴えているものだと言えるでしょう。
「PM理論」は、日本の社会心理学者・三隅二不二(みすみじゅうじ)氏によって、1966年に提唱されたリーダーシップ理論です。そこでは、集団というものは、一般的に、次の2つの機能により成り立つものと考えています。
★P機能(Performance function:目標達成機能):目標設定や計画立案、指示、叱咤などにより、成績や生産性を高める能力
★M機能(Maintenance function:集団維持機能):集団の人間関係を良好に保ち、チームワークを強化、維持する能力
即ち、P機能は、「集団が生産性を高めるような働きをすること」を指しています。会社を例に取ると、業績の芳しくない社員に対して、上司が叱咤すること等が挙げられるでしょう。
そして、M機能は、「集団のチームワークを強固にするような働きをすること」を指しています。会社を例に取ると、飲み会を開いて日頃の労をねぎらうこと等が挙げられるでしょう。
PM理論では、この2つの機能の強弱によって、リーダーシップを4つのタイプに類型化しました。アルファベットの大文字はその面が強いこと、小文字はその面が弱いことを示します。
① PM型(P・M共に大きい):目標を明確に示し、成果を挙げられると共に、集団を維持し、まとめる力もある。リーダーの理想像。
② Pm型(Pが大きく、Mが小さい):目標を明確に示し、成果を挙げるが、集団をまとめる力は弱い。成果は挙げるが人望はないタイプ。
③ pM型(Pが小さく、Mが大きい):集団をまとめる力はあるが、成果を挙げる力が弱い。人望はあるが、仕事は今ひとつというタイプ。
④ pm型(P・M共に小さい):成果を挙げる力も、集団をまとめる力も弱い。リーダー失格タイプ。
この4類型と集団効果については、以下のような結果が出ています。
集団効果の基準を、「部下の意欲・満足度、職場でのコミュニケーション、事故の低発生率(M機能)」にすると、PM型>pM型>Pm型>pm型、となるそうです。
集団効果の基準を、「生産性(P機能)」にすると、短期的には、PM型>Pm型>pM型>pm型、長期的には、PM型>pM型>Pm型>pm型、となるそうです。
これらの結果から、長期に渡って同じチームで何かに取り組む場合には、「リーダーにはM機能の方がより重要である」ことが分かってきます。
日本においては、余程のことが無い限りは、「ある程度の期間に渡って、同じチームメンバーで仕事を行う」ことになります。つまり、M機能は言うまでもありませんが、「生産性(P機能)」に目を向けた際にも、M機能が最終的には効いてくるという訳なのです。
実際、M機能を重視されているリーダーの下で働く部下は、「言われたことだけを行う」という受け身的姿勢で働く方よりも、「主体的に考えて、時には発案者となって仕事を行う」ようになっていきます。加えて、その部下の行動に対して、上司はきちんと良い所を認めてあげることができる(=M機能)ので、部下は益々意欲的になっていく…という好循環が働くのです。
上司の方は、「部下がきちんと動いてくれない」と嘆かれる前に、ご自身が部下に対して、どのようなリーダーシップのスタイルを取られているかを再確認されることも、非常に重要な事柄なのです。
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