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医療法人社団ペリカン六本木ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)です。
前回・前々回と2回に渡り「SET-UP」コミュニケーションについて記載させて頂きました。本日はその「第3回目」となります。
繰り返しになってしまい恐縮ですが、この「SET-UP」コミュニケーションは、境界性パーソナリティ障害の方と向き合うために開発されました。それ以外においても、ストレスが大きい状況下に置かれている方々との対話においても有用であると言われています。
実際に「SET」を使っていかれる段階において、理想を言うのであれば、対話の度に「SET」の3つの要素(支援・共感・真実)がほぼ同じ割合で含まれていると良いでしょう。
但し、「SET」の3つの要素の内、どれか一つが表現されていなかったり、あるいは、表現されていたとしても相手(境界性パーソナリティ障害の方)がそれを吸収しびれてしまったりすると、当然とも言える反応に出会うはずです。
ある種の“防衛的な”返答が返ってきたならば、その時に「SET」の3つの要素の内の何が届かなかったのかということに、注意を向ける必要が出てきます。そして、再度、その側面により注意を集中して、不完全になってしまったコミュケーションの要素(部分)をしっかりと伝え直します。
例えば、「支援(S)」の部分が、上手く伝わっていなければ、境界性パーソナリティ障害の方は、あなた(支援者)を責め、気遣ってくれていない、助けようとしてくれない…等と反応をされることでしょう。どんな反応であれ、結局のところ『私のことを気に掛けてくれていない』のパターンに当て嵌まるのならば、「支援(S)」の部分を改めて強調して伝えなければならないという“合図”なのです。
「共感(E)」の部分が表現されていなかったり、受け入れられていなかったりすれば、ここでも当然とも言える反応が返ってくることでしょう。即ち、『理解しえもらえない』と境界性パーソナリティ障害の方は怒りながら非難をされるはずです。境界性パーソナリティ障害の方が体験している苦悩はその人固有のものであり、本当の意味においては誰であって正しく理解はできないのだということを、支援者がちゃんと気がついているということを伝えることがここでは重要になってくることでしょう。
「真実(T)」の部分も大切で、ここがしっかり伝わらないと、更に複雑なジレンマに陥ってしまいます。支援者も境界性パーソナリティ障害の方も、もしかすると現実の問題に直面することを一緒になって避けているのかもしれません。しかし、現実世界の苦境に立ち向かわないでいると、境界性パーソナリティ障害の方の『否認』を強めてしまうことになります。
一時的には「真実(T)を回避」するような対話によって、対立をかわせるかもしれません。状況は一旦静まり、境界性パーソナリティ障害の方の根底にある防衛的な怒りも暫くは和らぐかもしれません。しかし、そうやって現実を避けても長続きはしません。
境界性パーソナリティ障害の方に、難問を突き付けるようなことはしたくはないと思われることでしょう。けれども、これは『否認』という「非現実的な期待感」を助長するようなものなのです。
やがて、束の間の平穏を破って、境界性パーソナリティ障害の当人にしか対処できない、現実世界の問題が舞い込んできます。魔法のように問題が解決するという期待は満たされず、欲求不満は高まり、最終的には、失望と怒りが爆発します。しかし、だからと言って、「真実(T)」を否認し、避けている期間が長ければ長引くほど、いずれやってくる災禍(カタストロフィ)は大きくなってしまうので、どこかで覚悟を決めて、「真実(T)」と向き合うことは不可欠なのです。
当院では、
うつ病、躁うつ病(双極性障害)、不安症、適応障害、
心身症、ストレス関連疾病、睡眠障害(不眠症)、
大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症)、
パニック障害、自律神経失調症、冷え症、摂食障害、
月経前症候群、更年期障害、統合失調症、強迫性障害、
過敏性腸症候群、境界性パーソナリティ障害など、
皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、
心身両面からの治療とサポートを行っております。
また当院では、診察と一緒に、専門の心理士(臨床心理士・公認心理師)資格を持ったカウンセラーによるカウンセリング(心理療法)も行っております。カウンセリングご希望の患者様は、診察時に医師にご相談下さい。
今後とも、医療法人社団ペリカン六本木ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)を宜しくお願い致します。