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医療法人社団ペリカン六本木ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)です。
ネット(ゲーム)依存と脳のメカニズムの関係についての「第2回」です。今回は「衝動性との関係」について記載させて頂きます。
「衝動」とは、本能と同じように原始的な脳の機能であり、反省や抑制なしに人を突き動かす心の動きのことを言います。通常は、意志や理性といった高次な脳機能によって制御されていますが、押さえることが難しいほど強い衝動や制御障害が起こると、欲求がそのまま行動として現れてしまいます。これを「衝動行為」と呼び、衝動行為が現れる傾向のことを「衝動性」と言います。
例えば、「今すぐなら100円あげるけれども、明日なら200円、1週間後なら2000円あげます」と言われた時、1日も待てずに、目の前の100円に飛びついてしまうような傾向を「衝動性」と呼びます。
これに対して、衝動を抑えてより大きな報酬が得られるように我慢して待つことを「自己制御」と呼びます。大抵の方々は1週間待って2000円を得ようとすることでしょう。
ネット(ゲーム)依存の方の場合、押し並べて衝動性が高く、1週間後の2000円よりも目の前の100円に飛びついてしまうような傾向が強いということが分かっています。アルコール依存症といった他の依存症においても同様の傾向が見られることから、依存と衝動性の結び付きがそれだけ強いことが伺われます。
そうした衝動性を抑え、理性的にコントロールするのは脳の前頭前野(ぜんとうぜんや)と呼ばれる部分です。前頭前野は「脳の指令塔」とも呼ばれるほど重要な役割を果たしており、記憶ややる気に関係するほか、「やってはいけないことはしない」「やりたいことを我慢する」といった理性や忍耐にも大きく関わっています。ネット依存やその他の依存の方の場合、この部分の活動が低下していることが分かっています。
ネット(ゲーム)依存の方の脳は、ゲームに関連したものを見るだけで、脳の前頭前野や線条体(せんじょうたい)が強く反応します。一般の方では特に反応が出ないようなものに対しても、ネット(ゲーム)依存になると前頭前野が強く反応してしまい、強くブレーキをかけなければ衝動を抑えることが出来ないという状態像が見えてきます。
アルコール依存等を始めとした「物質依存」の場合(ネット・ゲーム依存は「行為依存」)は、アルコール等の物質が作用することで前頭前野の働きが低下している訳ですが、ネット依存の場合は、そうした物質がなくても脳の働きが低下してしまうところに特徴があります。前頭前野の働きが弱くなってしまった脳では、最早ゲーム等への衝動を抑えることが出来なくなってしまうのです。
最後に、今回のコラム内で繰り返し出てきました「前頭前野(ぜんとうぜんや)」について、少し補足をさせて頂きます。
脳の「前頭葉(ぜんとうよう)」の大部分を占める「前頭前野」では、意思決定、注意の持続、情動のコントロール等を行います。よって、この前頭前野の活動の活動が低下すると、意識が集中できす、判断力が低下してしまいます。さらに、前頭前野の下部にある「前頭眼窩野(ぜんとうがんかや)」という部分に、ネット(ゲーム)依存の方は「委縮」が見られることが言われています。この前頭眼窩野は、意思決定などの認知処理に関わる部位とされており、ここが障害されると、衝動性が高まり、適切な行動が取れなくなってしまうそうです。
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