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医療法人社団ペリカン六本木ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)です。
ADHDの診断基準である「DSM(精神疾患の診断・統計マニュアル)」が、ADHDを「発達障害(神経発達症群)」の一種であるとしたのは、2013年に公表した最新版の「DSM-5」以降のことでした。
これは近年における、非常に大きな変更点の一となりました。それ以前の「DSM-4(改訂版含む)」まで、ADHDは「行動障害」のカテゴリーに分類されていました。加えて、「神経発達症」のカテゴリーに分類されている自閉スペクトラム症との併存は否定されてきました(DSM-5以降、ADHDと自閉スペクトラム症の併存はあり得るとされました)。
他にも、DSM-5では、大人のADHDの診断に関する大きな変更が行われています。
ひとつは、「症状が初めて観察された年齢」の変更です。DSM-4では、該当するADHDの諸症状が「7際になる前から」見られていたかどうかが、診断を確定する上での条件となっていました。
「7際になる前」ということは、小学校就学以前です。診断を受けるのが子どもであれば、保護者が母子手帳等の記録を持参して診察に付き添い、客観的な情報を直接聞くことが容易に出来ますが、大人になってからADHDを疑って医療機関を受診される場合、その方が40歳代であれば、その親は60~70歳代です。ご高齢であることで記憶が曖昧になっていることも多く、記録や資料が紛失・廃棄されて残っていないことも珍しくはありません。
親と離れて暮らしている方の場合には、親を同伴しての診察自体が困難な場合もあります。平均寿命は延びていますが、既にお亡くなりになられている場合や、認知症といった困難を抱えている場合もあります。そのため、DSM-4の診断基準では、大人のADHDの多くの方に対して、「診断基準を満たしているかどうか」を客観的に判断することが出来ませんでした。
こうした問題点を含め、DSM-5では、当て嵌まるADHDの諸症状が見られた年齢を「12歳」に変更しました。小学校時代のことであれば、ご本人の記憶に残っていることも多いので、「夏休みの宿題はどのように取り組んでいましたか?」「提出期限には間に合っていましたか?」「忘れ物をすることは多かったですか?」といった、大人になってからの問題を判断するための質問が出来るようになりました。
加えて、17歳以上の症状を問う診断基準でチェックされる症状の数も、DSM-4から改定されました。
長い間、ADHDは子どもの障害だと考えられてきたため、診断記載内容も子どもを想定して作られていました。しかし、昨今の大人になってからADHDに気が付くケースが増えた現状を踏まえ、子どもとは異なる大人の事情に合った具体的な診断基準が必要になってきたのです。
例えば、「しばしば日々の活動で忘れっぽい」という項目は、子どもの場合、「決まった曜日の習い事があるのに、その日に友達の家に行ってしまった」例が該当します。大人でも、決まった曜日に行うルーティンワークは数多くありますが、子どもよりも、忘れっぽいことで支障が生じる日々の活動というものは数多く存在します。そこでDSM-5からは、「青年期後期および成人では、電話を折り返し掛けること、お金の支払い、会合の約束を守ること」というような具体例が追加された訳です。
ADHDに関しては、現代の医学でも未だ解明されていない部分が多く存在します。今後も、診断基準が変わっていくことも十分に有り得ることを、頭の片隅に留めておいて頂けましたら幸いです。
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