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医療法人社団ペリカン六本木ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)です。
今回は、あらためて、「発達障害」とは何なのか、現在の最新の知見を含めて、お伝えをさせて頂きます。
発達障害の概念は、近年研究が進むとともに、変化し再編されていっています。
「自閉症」「アスペルガー症候群」「広汎性発達障害」
……とかつて呼ばれていたものは、現在では、
「自閉スペクトラム症」という呼び方(=疾病分類)に
統合されるようになりました。
自閉スペクトラム症は、「自閉症連続体」とも呼ばれています。
これまで、症状の違いにより様々に分類されていたものは、
実のところ同じ自閉症の中の連続した一面が現れているのではないだろうか、
という考え方がこの言葉を生み出した所以になります。
それは、所謂“健常者”との境目についても同様の見方をしています。
現在の所、所謂“健常者”と発達障害の方を明確に分ける区切りは存在していません。
この両者の間には、広いグレーゾーン(パステルゾーン)が存在してします。
実際のところ、働きながら悩んでいる方や、
学生時代までは特に問題を感じなかったのに
就職した前後から躓いてしまった方などは、
発達障害の中でもこのグレーゾーンに位置される方が殆どです。
そして、ご自分のハンデが「性格の問題」等と周囲に見られてしまい、
その誤解に苦しまれていらっしゃられる方も、
大多数の方がこのグレーゾーンに入っていると言われています。
このように、“健常者”と発達障害の方との違いは、「濃度の違い」であり、
どこまでが白でどこからが黒なのかというハッキリとした基準はないのです。
発達障害の診断が難しく、医師の慎重な判断が必要となる理由はここにあります。
発達障害とは、脳の機能の偏りに何かしらの原因があると言われています。
自閉スペクトラム症(以下、ASD)や、ADHDの方の脳には、
前頭葉の機能に不活性があると見られており、
これが障害の発生に密接な関連性があると考えられています。
ADHDの方の中には、投薬により症状や特性に大きな変化が認められることからも、
その症状や特性が、ご本人の「性格」等に問題があるのではなく、
脳の機能に原因があることを裏付けていると言えるでしょう。
また近年では、ASDやADHDの方の感じられる課題の根幹に、
「ワーキングメモリー(作動記憶)」が関わっていると言われてきています。
「ワーキングメモリー(作動記憶)」とは、
情報を一時的に短時間記憶すると共に脳内で操作をする能力を指す、
一種の概念的な用語です。
言語や思考、空間認知等も、このワーキングメモリーと関連しており、
そして、このワーキングメモリーは、
先述の脳の前頭葉の働きと関わっている能力であると考えられています。
ここで重要なことは、発達障害やそれに準じるグレーソーンの方々は、
ご自分の性格や努力の問題ではなく、
脳機能に何かしらの原因を持つ器質的(先天的)なものである、という事実を、
知っておくことです。
そしてもしも、
この障害や傾向により、ご自分が“生きづらさ”を感じているのであれば、
やるべきことは、自分を責めることではありません。
医療や公的な機関からの適切なサポートを受けて、自身の生活を改善させ、
今よりも“生きやすい”環境を作っていくことが先決です。
ですから、繰り返しになりますが、決してご自分を責めないで下さい。
一方で、諦めて努力を放棄することとも違います。
誤った見当違いな方向ではなく、
適切な方向への努力は、した分だけしっかりと能力は延びていきますし、
何よりも、工夫し努力されている姿を周囲の人は見てくれています。
正しい方向への努力は、周囲の人に認められ評価される自分を作ることへ、
必ず繋がっているのです。
このコラムを読まれて、
ご自分の現在のご状態として気にかかる点が出てこられた方、
興味・関心を抱かれた方は、
どうぞ当院まで、お気軽にお問い合わせください。
当院では、
ADHD、ASD等を含めた大人の発達障害をはじめ、
うつ病、躁うつ病(双極性障害)、不安障害、適応障害、摂食障害、
パニック障害、睡眠障害、自律神経失調症、月経前症候群、統合失調症など、
皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、
心身両面からの治療とサポートを行っております。
今後とも、医療法人社団ペリカン六本木ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)を宜しくお願い致します。