インフルエンザ

インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症です。風邪と似た症状が現れますが、風邪よりも重い症状が出ることが多いです。インフルエンザは、特に冬の時期に流行します。感染力が強く、短期間で多くの人に広がるため、予防が大切です。

インフルエンザの主な症状は、高熱、のどの痛み、頭痛、筋肉痛、関節痛、せき、鼻水、寒気などです。特に高熱が特徴的で、38度以上の熱が出ることが多いです。また、体がだるく感じることや、食欲が低下することもあります。症状は急に現れ、数日から1週間程度続きます。特に子どもやお年寄りは、重症化しやすいため注意が必要です。

インフルエンザの感染経路は主に飛沫感染(咳などで唾液や鼻水が小さな水滴となって飛び散ること)です。

悪寒、頭痛、関節痛、倦怠感などの全身症状、咳、痰、呼吸困難、腹痛、下痢などの胃腸症状などを認めます。

療養期間は1週間程度です。

インフルエンザの原因は、インフルエンザウイルスです。ウイルスは、主に飛沫感染や接触感染によって広がります。飛沫感染は、咳やくしゃみでウイルスが飛び散り、それを吸い込むことで感染します。接触感染は、ウイルスが付着した物に触れ、その手で目や鼻、口を触ることで感染します。インフルエンザウイルスは、非常に感染力が強いため、予防が重要です。インフルエンザウイルスには強力な感染力があり、一旦流行すると年齢や性別にかかわらず、短期間で多くの人に感染します。日本では毎年11月~4月に流行が見られます。人に感染するインフルエンザウイルスには、A型・B型・C型の3つがあり、現在流行の中心になっているのはA型とB型です。A型は症状が重篤になる傾向があり、死に至ることもあります。また、感染力が強いために、広域大流行(パンデミック)を起こしやすく、過去には香港やスペインなどで多くの死者を出しました。2009年には世界中で流行した新型インフルエンザは、A型、H1N1亜型でした。B型は、A型よりも症状が比較的軽く、限られた地域で流行するケースが見られます。C型は鼻かぜ程度の軽い症状で済むことが多いウイルスです。

インフルエンザの予防に効果が期待できるのがワクチンの接種です。流行シーズンを迎える前の11月頃から接種します。なお、特殊な型のインフルエンザが流行しそうな場合、医薬品メーカーにおけるワクチン製造が間に合わず、逐次供給となることもあります。そうした際には、優先度の高い人から順にワクチン接種が実施されます。インフルエンザワクチンは原則として、13歳未満の場合に2~4週間の間隔をおいて2回接種します。13~64歳は1回または2回(医師と相談して決める)。65歳以上の高齢者や、過去にインフルエンザにかかったことがある人なら、1回の予防接種でも免疫力が得られるとされています。一般的に、インフルエンザワクチンにはその年流行しそうなA型2つ(香港型、ソ連型の一種)とB型1つが入っています。つまり、ワクチン接種によって3つの型の免疫が一緒に付きます。これにより、65歳未満の場合には70~90%の発病予防効果があり、合併症の併発や死亡を減らす効果があります(健康な人の場合)。インフルエンザワクチンの効果が現れるのは約2週間後からで、そのあと約5か月間持続すると言われています。費用は自己負担で、1回分が約3000~5000円程度です。なお、65歳以上の高齢者や、60~64歳で心臓や呼吸器系、腎臓などの基礎疾患を持つ人の場合、ワクチン定期接種の対象となることが法令により定められています。市町村による費用補助の対象にもなっています。

12月~3月に前述の症状があった場合には、インフルエンザの可能性が高いと考えられます。この時期に38℃以上の発熱があれば、24時間以内に受診を勧めます。48時間以上過ぎると、抗インフルエンザ薬の効果が期待できません。インフルエンザは、冬から春先にかけて毎年必ず流行するので、症状や流行状態からインフルエンザの疑いを持つことが大切です。家族、保育園、学校など患者様の所属する集団内での流行状況を確かめるようにします。

インフルエンザの診断は、主に症状と患者さんの話を基に行います。また、インフルエンザの迅速検査もあります。これは、鼻やのどの粘膜を採取し、ウイルスの有無を調べる検査です。この検査は数十分で結果が出るため、早期診断に役立ちます。ただし、感染の初期はまだウイルス量が少なく、インフルエンザであるにもかかわらず、体温上昇がわずかで、検査結果も陰性になる可能性がかなりあります。逆に、一部ではインフルエンザではないのに迅速検査が陽性に出る場合(偽陽性)もありえます。迅速検査は絶対的な診断法ではないことに注意が必要です。

検査結果のみならず、発熱の程度や筋肉痛などの全身症状、流行の兆しや周囲に同様の症状の人がいるかどうかを参考にしながら、抗インフルエンザ剤を使うかどうかを判断します。全身状態をみるために、血液検査をすることもあります。なお、白血球数は正常範囲内か、もしくは減少します。CRPは合併症がなければあまり亢進しないのが一般的ですが、まれに高値または低値を示します。ただし、検査の精度には限界があるため、医師の診察と合わせて判断します。

厚生労働省のインフルエンザ診断基準は以下の通りです。

インフルエンザの一般的な治療は、一般療法、対症療法、抗ウイルス療法の3つからなります。一般療法としては、可能な限り安静を保ち、栄養と十分な睡眠を取ります。インフルエンザウイルスの空気中での活動や感染を抑えるために、加湿器などで室内の湿度を50~60%に保つのがよいとされます。また、水分を十分に補います。お茶、スープ、ジュースなど飲みたいものを十分に飲みます。対症療法としては、発熱や関節痛に対して解熱鎮痛薬、鼻水やくしゃみに対して抗ヒスタミン薬などが用いられます。一方、インフルエンザの症状はインフルエンザウイルスに対して免疫が正常に働いている結果であり、薬で無理に抑えない方がよいという考え方もあります。市販の薬を自己判断で使用することはかえって逆効果になる場合があるので控えましょう。インフルエンザウイルスに対する治療薬として、抗インフルエンザウイルス薬(塩酸アマンタジンとノイラミニダーゼ阻害薬「タミフル」「リレンザ」など)があります。塩酸アマンタジンはA型インフルエンザウイルスに有効で体制が起こりやすいのですが、ノイラミニダーゼ阻害薬(タミフルやリレンザ)はA型、B型どちらのインフルエンザウイルスにも有効です。ただし、これらの抗ウイルス薬は発病後48時間以内に服用しないと効果がありません。なお、現在日本ではノイラミニダーゼ阻害薬を予防薬として使用することができますが、13歳以上に限るという制限など、いくつかの条件があります。

インフルエンザウイルスは気道粘膜を障害するので、細菌の二次感染による気管支炎や肺炎を合併することがあり、これは高齢者においてより高頻度となります。よって、肺炎の合併には細心の注意を払い、もし罹患したなら高度な治療を速やかに受けさせる必要があります。

インフルエンザで最も重い合併症がインフルエンザ脳症と呼ばれるものです。死亡率は約30%で、後遺症も約25%の子供に見られる重篤な疾患です。インフルエンザ脳症は、発病から数時間~1日と神経症状が出るまでの期間が短く、主として痙攣、意味不明な言動、急速に進行する意識障害が神経症状として見られます。インフルエンザワクチンの接種により、インフルエンザによる重篤な合併症や死亡を予防することが期待されています。インフルエンザ脳症についても同じですから、予防接種を極力受けるようにします。インフルエンザに感染し、インフルエンザ脳症の疑いがあれば、発症初日からメチルプレドニゾロンのパルス療法などを受け、重篤な後遺症を減らせる可能性があります。

インフルエンザの最も確実な予防法は、流行前にワクチン接種を受けることです。特に、高齢者や小児、慢性の心肺疾患を持つ人などでは、積極的にワクチン接種を受けましょう。ワクチンは、インフルエンザの感染を防ぐだけでなく、感染しても重症化を防ぐ効果があります。また、手洗いやうがいを徹底することも大切です。特に外出後や食事の前には、しっかりと手を洗いましょう。さらに、人混みを避け、マスクを着用することも予防に役立ちます。マスクは、自分がウイルスを移されない効果のほかに、周囲に移さない効果もあります。栄養バランスの良い食事と十分な睡眠をとり、免疫力を高めることも重要です。インフルエンザにかからないように、日ごろの生活で予防対策をしっかり行いましょう。健康な毎日を過ごすために、基本的な対策を続けることが大切です。