科目
内科
ポイント
- 高尿酸血症は、尿酸塩沈着症(痛風関節炎、腎障害など)の病因であり、血清尿酸値が0mg/dLを超えるものと定義されています。性・年齢を問いません。
- 痛風関節炎を繰り返す症例や痛風関節を認める症例は薬物治療の適応となり、血清尿酸値を0mg/dL以下に維持するのが望ましいとされています。
- 高尿 酸血症は、高血圧、虚血性心疾患、糖尿病、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病の有益な指標ですが、血清尿酸値を低下させてイベント減少を検討した介入試験は未施行です。
高尿酸血症・痛風の疫学
- 日本において稀な疾患と考えられていた痛風は、1960~70年代の高度成長期に患者が急増し、現在では極めてありふれた疾患となっています。厚生労働省が実施している国民生活基礎調査によると、痛風で通院している患者数は1998年度に59万人を超え、89年度の約2倍を示しました。患者数の増加とともに、最近の特徴として、20~30歳代の若年発祥の増加が挙げられます。
- 痛風の基礎疾患である高尿酸血症についても、成人男性における頻度は1960年代に約5%、70年代から80年代前半に約15%、80年代後半から90年代に約20%と経年的に増加がみられます。女性では閉経前に1%程度、閉経後に3~5%の頻度です。
高尿酸血症の臨床的意義
- 高尿酸血症は臨床的に2つの観点から考える必要があります。すなわち、1つは痛風関節炎・腎障害をはじめとする尿酸塩沈着(urate deposition disease)の原因としての高尿酸血症であり、2つ目は種々の生活習慣病の病態において有益な指標としての高尿酸血症です。
- 尿酸塩沈着症は体液中の溶解度を超える尿酸がナトリウムと尿酸塩を形成し、析出・沈着することで発症するため、高尿酸血症は血清尿酸の飽和度である0mg/dLを超えるものと定義されています。血清尿酸値には明らかな性差があり、男性は女性より高値ですが、血清尿酸の飽和濃度に男女差はないため、高尿酸血症の定義に性差は設定されていません。
- 高血圧、虚血性心疾患、糖尿病、メタボリックシンドロームなどの種々の生活習慣病において血清尿酸値が臨床上有益なマーカーになることが示されてきました。
- 血清尿酸値の上昇に伴ってメタボリックシンドロームの頻度は増加することが示され、高尿酸血症はメタボリックシンドロームの診断基準には含まれていませんが、周辺徴候であることが示唆されています。
- 血清尿酸値がたとえ0mg/dL未満であっても血清尿酸値の上昇とともに生活習慣病のリスク増加が連続的に認められ、この観点からは明確な基準値は設定されていません。また、これらの病態における高尿酸血症の意義付けは未だに明確ではなく、血清尿酸値を低下させてイベント減少を検討した介入試験は未施行です。
高尿酸血症の診断と病型分類
- 高尿酸血症の診断のための採血は空腹でなくてもよいですが、恒常的な高尿酸血症の判定には複数回の測定が必要です。
- 高尿酸血症は「尿酸産生過剰型」「尿酸排泄低下型」「混合型」に大別されます。尿酸産生量を直接測定することは不可能であるため、通常は尿酸排泄量を測定して推定します。
- 外来で病型分類をする場合は、尿酸クリアランス・Ccr試験(60分法)を行います。検査予定日の3日前より高プリン食・飲酒を控えるように指導し、当日は絶食で来院していただきます。300mlの飲水を負荷し、30分後に排尿していただきます。以後、60分間の分割尿を正確に採取するとともに、中間の畜尿開始後30分に採血を行い、得られたデータから各パラメーターを算出します。
- 60分法を行う余裕がない場合にスポット尿を用いる簡便法がありますが、明確なエビデンス足りうる報告はありません。
痛風関節炎の診断・治療
- 痛風関節炎とは関節内に析出した尿酸塩結晶が起こす関節炎です。
- 通常は単関節炎で、第1中足趾節(MTP)関節や足関節などに好発します。関節の発赤・疼痛・腫脹があり、24時間以内に炎症のピークに達します。
- 発作は完全に寛解し、寛解期には無症状です。
- 診断には、特徴的症状、高尿酸血症の既往、関節液中の尿酸塩結晶の同定が重要です。
- 痛風結節は尿酸塩血症が皮下組織にたまり結節状になった状態で、耳介や肘関節・膝関節・手指関節・足趾関節などに好発します。痛風結節は診断的価値が高いですが、頻度は少ないです。
- 痛風発作中の血清尿酸値は低値を示すことがあり、診断的価値は高くないことに注意が必要です。
- 痛風発作の前兆期にはコルヒチン1錠(0.5mg)を用い、発作を頓挫させます。痛風発作が頻発する場合には、コルヒチンを1日1錠連日内服(コルヒチン・カバー)することが予防に有効です。
- 痛風関節炎を繰り返す症例は薬物治療の適応となります。
- 痛風発作時に血清尿酸値を変動させると発作の増悪を認めることが多いため、発作中に尿酸降下薬を開始しないことを原則としています。
- 痛風発作時にはNSAIDsを短期的に内服します。(NSAIDsパルス療法)
- 痛風発作を寛解させて約2週間経過したのちに、通常使用量の1/3~1/2の少量の尿酸降下薬を開始します。尿酸値の急激な低下はしばしば痛風関節炎を再発させるため、尿酸値を見ながら尿酸降下薬を徐々に増量します。血清尿酸値を0mg/dL以下に維持することが望ましいとされています。
高尿酸血症の治療
- 高尿酸血症の治療では、高尿酸血症をきたしやすい生活習慣の改善が最も重要です。それは、これらの生活習慣が高尿酸血症だけでなく、予後に影響する種々の合併症、肥満、高血圧、糖・脂質代謝異常などの発症を増やすからです。
- 高尿酸血症・痛風に対する生活指導は、食事療法、飲酒制限、運動の推奨が中心となり、肥満の解消は血清尿酸値を低下させる効果が期待されています。
- 痛風関節炎または痛風結節を認める症例は薬物療法の適応です。
- 無症候性高尿酸血症への薬物療法の導入は、痛風発作の予防や腎障害の進行阻止などを目的として血清尿酸値≧0mg/dLを一応の目安としますが、適応は合併症の状態を考慮して慎重とすべきです。
- 血清尿酸値が0mg/dLを超えるとそれ以下の方に比べて将来の痛風関節炎の発症率が有意に高いため、薬物療法も検討します。
- 現在わが国で使用できる尿酸降下薬は尿酸排泄促進薬3種類および尿酸生成抑制薬3種類です。
- 腎機能障害例を除くといずれの薬物を使用しても満足できる治療効果が期待できます。
- 尿酸排泄の多い尿酸産生過剰型では、尿酸排泄促進薬により尿路結石を発症させやすくなるため、尿酸産生抑制薬を選択します。
- 中等度以上(Ccr,推定GFR<30mL/分/1.73㎡またはScr≧2mg/dL)の腎機能障害では尿酸排泄促進薬は使用できず、尿酸生成抑制薬を選択し、慎重に投与します。その場合、アロプリノールに関しては腎機能が低下すると代謝産物のオキシプリノールが蓄積するため、投与量の減量が必要になります。
- 尿酸排泄促進薬を使用する場合は尿路結石の発現に注意して尿アルカリ化薬を使用します。
高尿酸血症・痛風の管理
- 尿路管理
- 高尿酸血症・痛風患者では、尿路結石の合併率が高いと言われています。いわゆる酸性尿(pH6.0未満)の頻度が高いことがその理由とされています。尿pHは尿中の尿酸溶解度に大きく影響します。尿pHを適切に保つことは、尿酸結石や尿酸結晶が誘因となる他の結石の予防につながります。
- 早朝第一尿の0未満を確認し、尿のpH低下を判断します。その状態が持続する場合、尿アルカリ化が必要となります。それに対して、クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム配合剤が使用されることが多いです。
- 高尿酸血症患者では、血清尿酸値が0~8.0mg/dLの観察期間中であっても、持続的に尿pH6.0未満の場合は尿アルカリ化薬による治療を行います。pH5.5未満が持続する尿路結石患者や既往例では絶対適応となります。尿酸排泄促進薬を用いる際には、尿アルカリ化薬を併用します。
- 生活習慣に関して
- 高尿酸血症を生活習慣病として位置づけることは、心血管系の危険因子の観点からも重要です。生活習慣の管理は、薬剤による尿酸降下療法より優先します。生活習慣の欧米化に伴う肥満の増加や過食傾向は多くの生活習慣病の温床として注意が払われており、そこに食事療法、飲酒量の制限、適切な運動療法の意義があります。是正できることは是正し、肥満が生じないように、あるいは改善するように指導します。しかし、過度になれば社会生活の質を低下させる可能性もあるため、受容可能な指導を心がけています。明らかな生活習慣の偏りによらず高尿酸血症をきたす例では、薬物による尿酸降下療法を主体にします。
- 全身の健康管理に関して
- 高尿酸血症は他の生活習慣病を併せ持つことが多く、肥満(内臓脂肪肥満)、高脂血症、耐糖能異常、高血圧などとともに、マルチプルリスクファクター症候群の一翼を担うことを理解しなければなりません。尿酸を低下させる方法によっては、それ単独で心血管リスクが低下するかどうかも明らかではありません。生活習慣の是正によるマルチプルリスクファクター全般の改善のなかで、血清尿酸値も低下させるように心がけましょう。
- そのため、他の生活習慣病、特に心血管系の合併症に注意し、心電図、血糖値、血清脂質値検査を定期的に実施します。薬剤副作用のモニターのため、末梢血液像、肝機能、腎機能検査も定期的に行います。
合併症、併発症に対する治療
- 腎障害、尿路結石
- 高尿酸血症・痛風には、腎障害、尿路結石が高頻度に合併する。これらに対して、血清尿酸値のコントロールが有効であることが示されています。腎障害、尿路結石の主因は、尿中尿酸が過飽和に達し、析出するためと考えられ、それを防ぐには溶質である尿中尿酸量を低下させ、溶媒である尿量を増加させることです。腎障害合併例、尿路結石保有例、既往例に対しては、尿酸降下薬は尿酸生成抑制薬であるアロプリノールが中心となります。中等度までの腎障害例では、アロプリノール(50~100mg/日)とベンズブロマロン(25~50mg/日)の少量併用療法も有効である。腎機能低下例にアロプリノールを使用する際には、腎機能に応じてアロプリノールの用量を減らさなければなりません。尿路管理としての尿中尿酸排泄量の減少は、低プリン食による食事療法とアロプリノールにより行います。尿量は多ければ多いほど尿中尿酸溶解量は増しますが、患者様の日常生活を考慮し、1日2000mL以上の尿量を保つような飲水を指導しています。とくに就寝前や夜間の飲水は重要です。水分の補給には、アルコール飲料や糖分を含まない飲料を用いてください。尿中尿酸の溶解度は、尿が酸性に傾くと低下し、痛風患者の尿は酸性に傾きやすいと言われています。いわゆる酸性尿の是正は、食事療法と尿アルカリ化薬で行います。尿をアルカリ化する食品としては、ひじき、わかめ、昆布、干し椎茸、大豆、ほうれん草、ごぼう、さつまいも、ニンジン、バナナ、里芋、キャベツ、メロン、大根、かぶ、なす、じゃがいも、グレープフルーツなどが挙げられます。尿アルカリ化薬は重曹あるいはクエン酸製剤を用い、尿0~7.0に保つように、1~6g/日を1回から6回に分けて服用します。
- 高血圧、心血管障害
- 血清尿酸値は、一次予防、二次予防の面から、脳・心血管事故の危険因子となる可能性があります。高血圧患者では、血圧を適正にコントロールしたのちも、血清尿酸値は脳・心血管事故のリスクである可能性が高いです。高血圧を合併したこう尿酸血症患者で、心血管病のリスクを上昇させることが予測される高尿酸血症は、男性で5,g/dL、女性で6.2mg/dL以上です。
- 高尿酸血症のコントロール目標は、60最近は未満で140/90mmHg未満、60歳以上の高齢者収縮期高血圧患者では収縮期血圧を150~160mmHg未満です(日本高血圧学会ガイドライン参照)。降圧療法には血清尿酸値低下作用も兼ね備えた降圧薬、特にロサルタン、その他アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、カルシウム(Ca)拮抗薬、α₁遮断薬の選択が好ましいとされています。
- 高血圧患者では、尿酸排泄低下型が高尿酸血症の主因であり、主に尿酸排泄促進薬を使用しますが、尿酸産生抑制薬(アロプリノール)との少量併用療法も有効です。
- 腎障害の程度によるアロプリノールの使用量の減少、肝障害合併時のペンズブロマロンの使用注意などに留意し、治療薬の選択や投与量の決定をしていくことが重要です。
- 高脂血症
- 高尿酸血症患者の予後における動脈硬化疾患の重要性が増しています。そのため、その治療を行い、軽減を図ることも重要です。ただし、尿酸が動脈硬化性疾患の独立した危険因子である疑いは濃厚であるものの、現時点では明らかではありません。したがって現在のところ、血清尿酸値を考慮することなしに、日本動脈硬化学会の脂質治療ガイドラインに沿って高脂血症の治療をするのが望ましいとされています。高リポ蛋白(a)[Lp(a)]血症の合併例では、ニコチン酸製剤の投与が有効です。
- 高脂血症治療薬には血清尿酸値に影響を与える薬剤もあるので、影響を考慮する必要があります。そのうち、高トリグリセリド血症治療薬のフェノフィブラートは、尿酸排泄促進作用がきわめて強く、血清尿酸値低下作用が認められるため、特に尿酸排泄低下型高尿酸血症の合併に有効です。
- 高脂血症治療薬による副作用を早期に見つけるため、クレアチンホスホキナーゼ(CPK)などを含む肝機能検査、腎機能検査、末梢血検査を定期的に行います。
- 耐糖能異常と肥満
- 高尿酸血症の成因または増悪因子としての肥満は無視できません。昨今の過栄養や過食・偏食から、本邦でも肥満者が増加し、高血圧や高脂質血症、さらに耐糖能異常またはインスリン抵抗性などが同時に生じ、高尿酸血症も関与してマルチプルリスクファクターの集積状態を呈します。
- 軽度の肥満の段階からインスリン抵抗性が生じ、高インスリン血症を呈する時期には、血清尿酸値の上昇がみられることが知られています。耐糖能異常を診断するには、血漿インスリン値を同時に測定します。病型は血糖値の変化から日本糖尿病学会の診断基準で確定します。
- 空腹時インスリン値が10μU/mL未満、かつブドウ糖負荷試験値も100μU/mLを超えない場合は、強いインスリン抵抗性は合併しません。高インスリン血症を認めず、内臓脂肪蓄積も伴わない例が含まれます。こうした例では、血清尿酸値上昇の主たる原因となっておらず、栄養指導により糖尿病の食事療法を実施し耐糖能異常が是正されるようにします。高尿酸血症の治療は通常の方法で行います。
- 空腹時インスリン値が10μU/mLを超える、またはブドウ糖負荷後頂値で100μU/mLを超える場合は、インスリン抵抗性と診断します。多くは肥満を伴い、内臓脂肪の蓄積を確認することができます。こうした例では、食事療法によって減量を試み、運動療法も実施します。減量によって血清尿酸値も低下・正常化すれば尿酸降下療法は必要としません。尿酸排泄率が改善しない場合は尿酸排泄低下型、尿酸排泄率が正常化し、なお高尿酸血症が残存する場合は尿酸産生過剰型の原発性に存在します。それぞれ病型分類に従った尿酸降下療法を行います。
- 糖尿病の治療は、該当する診療ガイドラインを参照します。耐糖能異常が悪化し、尿糖陽性の糖尿病型になると、腎からの尿酸排泄が亢進し、血清尿酸値が低下してきます。その際、基礎に尿酸産生過剰型の高尿酸血症があれば、尿中尿酸濃度が過度に上昇するため、尿アルカリ化薬の単独使用も好ましいとされています。尿路結石がすでに合併しているならば、尿酸生成抑制薬を少量使用します。
- 高尿酸血症が耐糖能異常に続発するのか、原発性に高尿酸血症があって耐糖能異常により修飾されているのか、違いを見極めるのは困難です。そうした症例では、耐糖能異常を軽快させ、なお残る高尿酸血症を是正すべきで、尿酸降下療法だけを実施することは避けます。
- 肥満指数(BMI)の上昇とともに、高尿酸血症の合併が増加することが示されています。皮下脂肪型肥満、内蔵脂肪型肥満とも、高尿酸血症の頻度は約70%と高率ですが、皮下脂肪型では大部分が尿酸排泄型を示すのに対し、内臓脂肪型では31%が尿酸排泄低下型、56%が尿酸産生過剰型との報告があります。
- 耐糖能異常の場合と同様、高尿酸血症の成因として肥満がどのくらい関与するのかを評価してから治療にあたります。減量だけで高尿酸血症が是正された例もあります。肥満の治療は日本肥満学会のガイドラインに準拠し、正しく分類・診断したうえで、原因除去を基本に実施します。
- 急速な減量時には、尿酸産生過剰型の高尿酸血症を併発するため、すでにある高尿酸血症を悪化させ、痛風発作をきたす可能性があります。したがって、尿酸生成抑制薬の使用が必要です。
- 耐糖能異常に比べ、肥満の是正は困難な場合が多いです。特に高度肥満者では減量が非常に難しく、痛風発作や腎障害の対策として、尿酸降下療法を行いながら減量を実施せざるをえません。
二次性高尿酸血症とその治療
- 尿酸産生過剰型二次性高尿酸血症
- 二次性痛風は、全痛風症例中約5%を占めます。原発性と同様、尿酸産生過剰型、尿酸排泄低下型、混合型に大別されます。尿酸産生過剰型二次性高尿酸血症には遺伝性代謝性疾患である、レッシュ・ナイハン症候群[ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)欠損]、5-ホスホリボシル-1-ポロホスファターゼ(PRPPase)亢進症、先天性筋原性高尿酸血症や、細胞増殖の亢進が起こる急性白血病、悪性リンパ腫、慢性骨髄増殖症候群、骨髄異形成症候群、肉腫、ウィルムス腫瘍、小細胞肺癌、乳癌、精上皮腫、急性腫瘍融解症候群、尋常性感染、組織破壊の亢進が起こる溶血性貧血、甲状腺機能低下症、横紋筋融解症、肥満、運動負荷などがある。外因性として高プリン食や抗腫瘍薬、ミゾリビン、テオフィリン、フルクトース、キシリトールなどで起こる薬剤性の場合もある。
- 原因となる基礎疾患の治療や原因薬剤の中止・減量が最も重要である。高尿酸血症の診断に際しては、必ず二次性の可能性を検討し、問診、身体所見、一般検査所見などから基礎疾患の存在に気が付くことが大切です。
- 治療は尿酸産生抑制薬であるアロプリノールの使用が原則となります。血清尿酸値、尿量・尿pHいずれも、特に血清尿酸値がコントロールできるまでは、原発性の高尿酸血症・痛風に準じて十分に治療を行います。基礎疾患の消長に応じて、投与量の変更など、治療内容を調整する必要があります。基礎疾患の改善後も漫然とアロプリノール投与を継続しないようにします。
- アロプリノールと抗腫瘍薬を併用する場合は、薬物相互作用に注意します。骨髄抑制が増強される6-メルカプトプリン(1/3程度に減量)、シクロホスファミド(注意して使用)、そのほかペントスタチンとの併用による重症血管炎に気を付けます。
- 混合型二次性高尿酸血症
- 混合型二次性高尿酸血症には糖原病Ⅰ型、肥満、妊娠中毒症、飲酒などがある。尿酸産生過剰型、尿酸産生低下型両者の特徴に配慮しつつ、原発性に準じた治療を行います。
- 尿酸排泄低下型二次性高尿酸血症
- 尿酸排泄低下型二次性高尿酸血症をきたす疾患には一次性と二次性があります。一次性とは原因不明(特発性)、家族性若年性痛風腎症があり、二次性には慢性腎疾患(腎排泄低下型)、多発性嚢胞腎、妊娠中毒症、鉛腎症、高乳酸血症、ダウン症候群、サルコイドーシス、糖原病Ⅰ型(高乳酸血症による)、脱水、薬物(利尿剤(フロセミド、サイアザイド、D-マンニトール)、少量のサリチル酸、ピラジナミド、エタンブトール、ニコチン酸、エタノール(高乳酸血症を介する)、サイクロスポリンなど)が挙げられます。
- 腎不全に伴う二次性高尿酸血症では、痛風関節炎の発症頻度が低いと報告されています。また、腎不全時に認められる高尿酸血症が腎機能低下を促進するか否か、腎機能保持の点から高尿酸血症を是正した方がよいかについては、いまだ一定のコンセンサスが得られていません。そのため、現在のところ、腎不全患者への尿酸降下薬の適応は、尿酸産生過剰状態(ヌクレオチド合成酵素欠損など)、痛風および腎不全を伴う家族性腎疾患、痛風の病歴、血清尿酸値が9~10mg/dL以上が持続する状態と考えられています。
- 治療には原則として、尿酸排泄促進薬のプロペシドやベンズブロマロンを用います。プロベネシドは抗菌薬をはじめ、多くの薬物の代謝に影響を及ぼすことが知られており、尿酸排泄促進薬としては使いにくいのが実情です。したがって、日常臨床ではベンズブロマロンを用いることになります。
- 尿酸産生過剰型と尿酸排泄低下型の混合型に対しては、ベンズブロマロンに尿酸産生抑制薬のアルプリノールを併用すると有用性が高くなります。ただし、ベンズブロマロンは腎機能が低下すると作用が減弱し、クレアチニンクリアランス30mL/分以下の腎不全では無効となるとされています。そのため、腎機能低下例にはアロプリノールが適応となります。
- しかし、腎機能低下例にアロプリノールを使うと、血中半減期の長い活性代謝産物オキシブリノールの血中濃度が上昇するため、腎不全患者ではアロプリノールの重篤な副作用が多くみられます。そのため、腎機能に応じて、投与量を減らす必要があります。
生活指導
- 高尿酸血症・痛風が代表的な生活習慣病であることを認識するなら、生活習慣の是正を目的とした非薬物療法としての生活指導の役割は限りなく大きくなります。日頃の良好なコミュニケーションのもとで、高尿酸血症をきたす生活習慣の問題点と価値観を医師と患者様が共有し、長期に及ぶ慢性疾患に患者様自ら取り組む意欲を高める生活指導が望まれています。
- 具体的な生活指導としては、肥満の解消、食事療法、アルコール摂取制限、適度な運動、ストレスの解消が挙げられる。
- 食事療法
- 肥満傾向にある高尿酸血症患者に対しては、糖尿病治療に準じた摂取エネルギーの適正化が食事療法の目的として挙げられます。肥満の解消は内臓脂肪蓄積やインスリン抵抗性の改善につながり、患者の長期予後を改善します。
- 食品100g当たりプリン体を200mg以上含むものを高プリン食といい、動物の内臓、魚の干物、乾物などがあります。具体的には、鶏レバー、マイワシ干物、イサキ白子、あんこう肝酒蒸し、カツオブシ、煮干し、干し椎茸、豚レバー、牛レバー、カツオ、マイワシ、大正エビ、マアジ干物、サンマ干物などです。低プリン食にはコンビーフ、魚肉ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、さつま揚げ、数の子、すじこ、ウインナーソーセージ、豆腐、牛乳、チーズ、バター、鶏卵、トウモロコシ、じゃがいも、さつまいも、米飯、パン、うどん、そば、果物、キャベツ、トマト、にんじん、大根、白菜、ひじき、わかめ、こんぶなどがあります。
- 食事療法ではプリン体の過剰摂取制限も行います。ただし、入院患者を除けば、厳密な低プリン食を毎日摂ることは不可能に近いため、高プリン食を極力控えるという指導が望ましいと考えます。1日の摂取量がプリン体として400mgを超えないようにするのが実際的です。
- 尿路管理も重要です。高プリン食には尿の酸性度を高める傾向の強いものが多く、食事療法ではそうした食品の制限にも力点をおきます。また、尿中の尿酸濃度を低下させるため、1日2000mLの尿量を確保します。
- 飲酒制限
- アルコール飲料はプリン体をあまり含まなくても、その代謝に関係(内因性プリン体分解の亢進と腎における尿酸排泄低下)し、血清尿酸値を上昇させるため、種類を問わず過剰摂取は厳格に慎むべきです。
- ビールはプリン体を多く含むばかりでなく、エタノール等量で比較すれば他の酒類より高エネルギーのため、肥満も助長する点に注意します。
- 血清尿酸値への影響は、日本酒1合、またはビール500mL、またはウイスキー60mL程度より現れると考えられています。
- 運動の推奨
- 肥満例では特に運動療法の指導が必要ですが、事前に心機能の評価を実施します。過度な運動は避け、適正な体重(BMI 25kg/㎡未満)を目標として、食後1時間以降に毎日継続できるような軽い運動を行うことが好ましいとされています。
- 有酸素運動は血清尿酸値に影響せず、体脂肪の減少、軽症高血圧の改善、HDL-コレステロールの上昇、耐糖能の改善など、高尿酸血症に合併しやすい種々の病態を改善させます。
専門医との連携が必要なポイントは
- 腎障害が進行し、薬物選択が困難な場合
- 投与薬剤にて副作用が出現した場合
- 主として造血器腫瘍の急性期や治療開始初期に起こる急性尿酸性腎症や腫瘍溶解症候群
参考文献
1)日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改訂委員会.高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版.メディカルレビュー社;2010.
2)日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改訂委員会.高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版[2012年追補版].メディカルレビュー社;2012.