Ⅰ. 何故いま、「大人の発達障害」なのでしょうか?
「大人の発達障害」という言葉に、皆さまはどのようなことをイメージされるでしょうか?
しばしばみられるものとして、「大人になって、発達障害になった?」があります。
しかし実は、発達障害は先天的で、「大人になってから発達障害を発症する」ということはありません。
それでも、なぜここまで「大人の発達障害」という言葉が広まってきたか、それは以下のような理由があると思われます。
- ① 30年前頃までは、存在自体がまだ広く認識されていなかった。
- ② 診断のメインはASD(自閉症スペクトラム症)で、ADHD(注意欠如多動性障害)の存在に目を向けられることが少なかった。
- ③ 幼少期に、「重度ではない」場合に診断されず、高等教育(専門学校・短大・大学)を受けるときや社会人になってから、初めてつまづき、「生きづらさ」を覚える。
- ④ 社会構造や仕事の複雑化により、1つのことに特化した専門職でなく、何でもこなせるマルチタスク能力が求められるようになってきた。
ほかにも、今まで性差による症状の違いがあまり注目されず、女性の発達障害が見過ごされてきたと指摘する方もいます。
発達障害は、大きく3つあり、
1.自閉スペクトラム症(かつての自閉症やアスペルガー障害)
2.ADHD(注意欠如多動性障害)
3.局限性学習障害(LD)
この3つは、合併していることが多いと言われていますが、特に「スペクトラム」という概念が重要です。
これは、「連続体」という意味であり、どんな方であっても、どこかの場所(位置)には入っているという意味です。
ただし、それが、どのような濃度(程度)で、どの程度の重なり(合併)を持っているかにより、一人ひとりの状態は異なってきますし、置かれている環境(状況)によっては、その特性が「障害」とはならないこともあります。
そういった意味では、「大人の発達障害」の方々は、「幼少時に見逃されていた発達の特性が、大人になって置かれた環境と不適応を起こし、『障害』として現れるようになってしまった方々」と言い換えることもできるでしょう。
Ⅱ. 大人の発達障害外来でできることは…?
一言で表現するならば、「生きやすくなるためのお手伝いをさせて頂くこと」です。
ご希望があれば、心理検査(ウェクスラー式知能検査(WAIS))を実施し、ご自身特有の能力のパターンを分析し、実際にどのようなお困りが生じ得るのかを調べることができます。
そして、その結果を参考にして、必要に応じて、専門医による投薬治療や、臨床心理士、公認心理師によるカウンセリングを行い、少しでも「生きやすくなること」へのお手伝いをさせていただきます。
また、発達障害は、様々な二次障害(うつ病、適応障害、自律神経失調症、不眠症/睡眠障害、不安障害、強迫性障害、摂食障害、様々な依存症…等)を併発しやすいことが知られていますので、そちらの症状が大きく出ている場合は、その治療もあわせて行ってまいります。
皆さまが、ご自分の特性を「かけがえのない個性」と捉え、自信と自尊心、そして自律性を取り戻されていく上でのお手伝いをさせて頂くのが、私たち発達障害外来のチームです。
どうか一人で悩み、苦しみを抱え込まず、気軽に最初の一歩を踏み出してはみませんか?
当院では、初診を860円~から受けることが可能です(各種保険診療適用)。
皆さまのお話を聞かせてください。